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神獣王動く

 ジャックがゴーレムと契約を結んでいた頃、ガロは砂漠の上を当てもなく歩いていた。彼の目の前に、緑色の毛並みの、狐のような姿をした神獣フェンリルが現れたのは、それから間もなくのことであった。

「フェンリルか・・・・」

 ガロは目の前を塞ぐように現れた、緑色の毛を持つ二足歩行の生物を呼んだ。

「久しいなガロよ。お前と神獣王が道を違ってから会わなかったからな、私のことを忘れているのではないかと心配だったぞ」

「フェンリル。お前は災いの象徴、お前が姿を見せたということは、この世界に何やら不吉なことが起こっているという証拠だな」

「知っているのだろう。古代神獣の復活だ。これより神獣王の神殿に向かい、そのことについて相談しに行く途中だ。奇遇にもお前を見かけたのでな、昔のよしみで、一緒に来てくれないだろうか?」


 ガロはフェンリルに背を向けると、トボトボと歩き始めた。まるでそんなことはどうでも良いと言っているような態度であったが、次のフェンリルの言葉に、彼の態度は一変する。

「息子が心配ではないのか?」

「なんだと?」

 ガロはフェンリルの方を向くと、眼を血走らせ、怒りを露わにしていた。

「古代神獣が蘇れば、多かれ少なかれ、人類にとっては危機であろう。お前の息子が被害に遭う可能性は、十分にあり得るな。いや、寧ろ既にこの世には・・・・」

 言いかけたところで、ガロは背中の剣を抜いて、それをフェンリルの顎に突き付けた。今にも首を斬り落とさんとする勢いに、フェンリルの額から汗が滲み出た。しかしその口調に一切の動揺は見られなかった。彼がそんなことをするような人間でないことは知っているからだ。


「心配して言ってやったというのに」

「ふん、俺が怒っているのは、息子のことを話題に出したからじゃない。そうやって、俺を脅そうとしたからだ。息子を、俺を従わせるための出しに使ったのが許せんと言ったのだ」

「そこまで息子が大事ならば、私の背中に乗れ、これから人類存亡を賭けた戦いが始まる」

「もう、関わりたくないのだが、これで最後だぞ」

 ガロはフェンリルの背に跨った。するとフェンリルは助走を付けて、大きく飛び上がった。彼の両足が地上から離れ、上空をフワッと歩くようにして飛んだ。


 フェンリルが神獣王の住む神殿に到着したのは、それから1時間を過ぎた頃だった。早速降ろされたガロは、フェンリルとともに、石柱にまで苔の生えている崩れかけの神殿の中に入って行った。

 そこは玉座まで一直線の通路になっていて、辺りの石壁にはひびが入っていた。今にも崩れ落ちそうではあるが、不思議と建物としての体裁は守れているようだった。そして玉座の前に到着すると。見る者を威圧するかのような、黒く大きな体に、同じく大きな黒い羽を持った竜がそこに座っていた。


「フェンリルにガロか。お互い考えていることは同じらしいな」

「ほう、神獣王も同じことを・・・・」

 フェンリルは言いながら、ガロの背中を口先で突いた。

「おっと・・・・」

 後ろから押されて仕方なしに前に出るガロ。そして神獣王ことドラグーンと向かい合う形で、決まり悪そうに頬を手で掻いていた。

「久しぶりだなドラグーン」

「ふん、ロストアイランドの時に会っただろう。久しぶりではない」

「かつて俺とともに、世界を回ったのは覚えてるだろ?」

「ああ、抹消したい思い出の一つだ」


 ドラグーンは軽く息を吐いた。巨大な体から吐かれる息は、突風と呼べるほどに激しく、ガロの体が少し後ろに下がった。

「ガロよ。お前は許されざる罪を犯した。その罪を今ここで言ってみろ」

「ほう、中々に悪趣味だな」

 ガロは口元を歪めて笑った。その表情はどこか皮肉めいていた。そして彼は、言われるがまま、己が犯した罪について語り始めるのだった。

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