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ミクロの攻撃

 その日、王室にファムとソルガが呼ばれていた。アリッサは二人の姿を見ると、いくらか安心したような表情を見せたが、すぐに真剣な顔付きに戻り、状況を説明した。

「それで、その蚊は何処に?」

「さあね、町中に飛んでいるわ。私も最初は蚊が原因と思ったのだけれど、刺されている人が全て、熱病に罹っているわけではないわ」

 アリッサは言いながら、額の汗を拭った。

「にしても暑いわね。こんな気温だから蚊が出るのよ」

 アリッサの愚痴に、ソルガの眉が僅かに動いた。

「暑いですかね。今日は昨日よりも寒く感じますが」


 ソルガは言いながら、窓から外を見上げた。外は曇天で今にも雨が降りそうな天気だった。また気温も昨日より低く、寧ろ過ごしやすいぐらいだった。

「とにかく、蚊を駆除しなければならないことに変わりはなさそうね」

「ああ、私とソルガも尽力しよう。しかしアリッサ、顔色が悪いぞ」

 ファムはアリッサの苦しそうな息遣いを聞きながら、心配そうに見ていた。そしてその不安が今、的中した。

「少し休むわね」

 アリッサは立ち上がると、千鳥足でグラッと体勢を崩すした。そして床に倒れそうになるも、それをファムとソルガに両脇から支えられ、何とか持ち直した。しかし体は火を噴くように熱を帯びており、首筋にも玉の汗をかいていた。


「誰か、彼女をベッドに」

 ファムは大臣にアリッサを預けると、ソルガとともに王室の外に出た。

「ソルガ、これは一体・・・・」

「分かりませんが、やはり蚊を探す以外に方法はなさそうですね」

 ソルガは廊下の真ん中で干乾びている赤い体色の蚊の死骸を見つけた。そしてその蚊の体内が少しずつ膨れていることにも気が付いた。

「ファムさん、あの蚊の腹が変ですよ」

 ソルガが言葉を発した瞬間である。蚊の腹が風船のように破裂した。そして中から白く光る何かが飛び出したのが見えた。

 ソルガはミストを召喚して、すかさずその光を眼で追わせた。何と光の正体は、蚊よりもさらに小さい白い体を発光させながら飛んでいる、背中に羽を生やした羽虫とでも呼ぶべき生物だった。


「逃がすか」

 ファムとソルガは羽虫を追いかけた。しかし羽虫は、廊下の柱に留まっている赤い蚊を見つけると、その蚊の口の中から体内に入っていってしまった。

「分かったぞ。熱病の正体が。あの羽虫は、特定の蚊の体内に潜み、蚊が血を吸うと同時に病気を媒介していたんだ。だから同じ蚊に刺されても、病気なった人とならなかった人がいたんだ」

「ソルガ。蚊が逃げてしまうぞ」

「ここは私に任せて下さい。ミストが羽虫を捕まえたいみたいです」

 ソルガはミストを前に出すと、蚊に向かってストレートを喰らわせた。

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