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過去からの挑戦

 トックル村、世界の最南端に位置している小さな村、大国の支配が届かぬ辺境の地は、独自の文化を築き上げていた。その村から30分ほど歩いた先に、一つの遺跡が建立していた。そこには村の神を祀っている人型の像があり、月に一度、選ばれた何人かの人間達で、そこに神聖な水を供えるという風習があった。

「おい、ジャック、すっとろいぜ」

 村の人間達は上半身裸で、体や顔には果実を潰した赤い液体を、体中に塗りたくり、腹や頬に奇妙な線を描いたりしていた。

「ジャック」

 ジャックと呼ばれた青年も、その中の一人だった。彼は見るからにとろそうな外見をしており、いつも眠そうにしていた。しかし優しい性格だったので、小さな子供から好かれ、大人達からも、どんくさい奴だと、半ば呆れ気味に、それでも仕方がないと、寧ろ、彼の愛嬌となっていた。


「どうしただ?」

 ジャックは草で作った輪っかを額に結び、首には骸骨のネックレスを着けていた。そんな彼は、水の入った桶を手に、遺跡の中を、他の若い連中と歩いていた。

「速く水を像にぶっかけて帰ろうぜ」

 村の若者の一人がジャックから水を引ったくり、人型の石像に近付いて行った。最も、結論から言えば、それが彼の最後の言葉となった。


「な、何だ?」

 村の若者達が一斉に動揺し始めた。のんびり屋のジャックにしても同様だった。何と上半身が裸の石像の体が、石の灰色から、人間のような土気色の肌に変化していたのである。そして眼をクワッと開くと、真っ先に目の前で桶を持っていた、若い青年の首をを両手で掴み、その頭部を鋭い牙で噛み切ってしまった。

「うあああああ」

 青年の首から下の体が地面の上に無造作に転がっていた。土気色の化け物は立ち上がると、自分の手足を見て、静かに笑みを浮かべた。

「なるほど、周期が来たのだな。私の時代が来たのだな。だが、まずは腹ごしらえだな」

 化け物は青年達を見ると、ニヤリと歯を見せて笑った。


 その後、トックル村の人間達は全滅した。ただ一人ジャックという青年を除いて。


 トックル村での大惨事と平行して、バルド共和国にも危機が訪れていた。それは平和な午後のひとときに起こった。

「た、大変です。空から亀の甲羅が降って来ました」

「は、はあ?」

 アリッサは紅茶のティーカップを片手に、不思議そうな顔をしていた。しかし地面に何かが衝突し、轟音が城内に響き渡ると、すぐに兵士を連れて城の外、何かが落ちたと思われる庭に向かった。

 同様にして、ファムとソルガも城の庭に駆けつけていた。

「何だあれは・・・・」

 庭の中央に、青い甲羅に身を包んだ二足歩行の亀が立っていた。そして甲羅の中にすっぽりと閉じこもると、そのまま地面の上をスピンして、アリッサに向かって突進した。


「サラマンダー」

「おうよ」

 サラマンダーが口から火球を、亀に向かって発射した。

 火球は甲羅に弾かれて消えてしまった。そしてそのまま亀の甲羅が、アリッサに激突、彼女の華奢な体は、兵士達の元に弾き飛ばされた。

「王女・・・・」

 兵士達がアリッサを受け止めたので、重症は免れたが、あまりの衝撃に、彼女は気を失っていた。

「ライディーン」

 ファムの体が銀白色の鎧に包まれた。そして青い光の剣を抜くと、それを亀に向けた。

「次の相手は私だ。来い亀」

「うぬぬ、亀ではないトータスだ。覚悟しろ小娘が」

 かくして古代神獣との闘いが幕を開けた。

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