憂い
ファムは身支度を整えていた。その姿をソルガは不思議そうに遠目で見ていたが、彼女が剣を鞘に納めて、部屋から出るのを確認すると、急いで彼女の前に立ち、道を塞いだ。
「ファムさん、何処に行かれるのです?」
「ソルガか。私は旅に出ようと思う」
「え?」
ファムの口から出た意外な言葉にソルガは唖然としていた。何を今更と言いたげな表情をしていた。それを察してか、ファムは少し照れ臭そうに笑った。
「ここで燻るのも飽きたんだ。やはり私は騎士には向いていない。トレジャーハンターのように世界を見たいんだ。最もマロには悪いがな」
ソルガは脇を抜けてすれ違おうとするファムの前に尚も立って、道を塞いだ。
「退いて欲しい」
「申し訳ありませんが、あなたを行かせる気はないです」
「何故?」
「マロさんが目覚めるまでは居て下さい。これじゃあ寂しすぎますよ。あなたは逃げようとしているんです。少し気を紛らわせて、帰って来た頃には、マロさんが起きていたら良いなって、誤魔化しているんですよ。落ち着かない自分の気持ちを」
「君には関係ない」
「あります」
ソルガはファムを壁に叩きつけると、彼女の顔の横に手を付けて逃げられないようにした。
「言うようになったなソルガ」
「仲間ですからね」
「分かったよ」
ファムは観念したようにソルガの腕を払い除けると、再び部屋に戻って行った。そして去り際にもう一度、彼の方を振り返ると、茶化すように言った。
「お前、女性を束縛するタイプだな。あまり強引だと女子に嫌われるぞ」
「なっ・・・・」
ソルガは赤面した。そしてやり場のない気持ちを、壁に頭をぶつけることで晴らした。それを遠くから掃除婦が、怪訝そうに見ていた事実を彼は知らない。
一つの闘いが終わった。しかし世界を暗雲に包む恐怖は、依然として残っており、それはまるで病のように、静かな潜伏期間を経て、確実に彼らの元に迫って来ていた。
三大国戦争編 完結




