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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
三大国戦争編
40/121

ソルガとバレンタイン

 アリッサ達はエルムイに侵攻すると、次々と敵を破り、ついに決戦の時を迎えようとしていた。同時にファム達も塔の最上階の近くに到達していた。この二つの大きな戦いは、世界の歴史を変えるだろうと、無知な民達の間でも会話の中心となっていた。彼らは知らない。世界の方向を決定付けるほどの戦いが、まだ世界を知らない若者達の手に委ねられているということを。


 空はすっかりと陽が落ちて、橙色からコバルト色に、空の色が目まぐるしく変化していた。塔の最上階に続く最後の階段が、三人の目の前にあった。今までの螺旋階段とは違って、正面に真っ直ぐと伸びた、いわゆる万人のイメージする階段だった。

 重苦しい音とともに、階段の先にある大きく赤い扉が開かれた。そして甲冑に身を包んだ騎士達が、各々の武器を構えて、戦闘態勢に入っていた。もちろん、三人とも神獣を出して、それを迎え撃った。

「行くぞ」

 初めに先陣を切ったのはファムだった。後ろの二人もそれに続いて切り込んで行く。ファムが剣を振るい、マロのウンディーネが氷の塊をぶつけたり、凍らせたりしながら敵を倒して行く。


「二人ともごめんなさい」

 ソルガは突然謝ると、兵士達の脇をすり抜けて一足先に扉を開けて行ってしまった。

「待て、ソルガ。単独行動は危険・・・・」

 ファムが言うよりも早く、ソルガの姿は消えていた。彼は何をそこまで焦っているのだろうか。彼女にはそれが解せなかった。


 ソルガは最後の階段を上り、さらにいくつかの小部屋を抜けて、ついに塔の最上階、屋上に辿りついた。

(マロさん、ファムさんすいません。僕がバレンタインを倒します。それが僕の宿命だからです)

 ソルガには兄がいた。名をギルガと言い、彼にとっては憧れの存在であった。そんな彼がファムに殺されたと聞いた時は、彼女のことを強く恨んだ。しかし時間が経つにつれて、それは興味へと変わって行った。兄を倒した人間をこの目で見てみたいと思ったのである。

 ソルガは最早、ファムを恨んでいない。そして彼女と会い、新しい目標ができた。それは彼女に自分を認めさせることだ。兄から褒められた経験は一度たりともなかったが、今度は必ず認めさせてみせると、いつの間にか、ファムとギルガを重ね合わせていたのだ。


(少しぐらい格好付けさせてもらいますよ)

 ソルガは正面にいる赤髪の男と対峙した。間違いなく彼こそがバレンタインであると彼は実感した。 

「貴様一人か?」

「後から来るさ。最もあんたは僕に殺されてしまうがね」

 ソルガの隣にミストが現れた。同時にバレンタインの隣にも、彼の神獣ジャバウォックが姿を見せていた。その緑色の苔のような体色と、異様に離れた眼球からは、果たしてどんな攻撃が繰り出されるのだろうか。彼はいきなりミストを前に出した。

「行くぞ」

「ふん、来い」


 ミストがジャバウォックの元に駆けた。同じようにジャバウォックも走り、両者は互いに拳を突き出した。

「フシュウウウ」

 奇妙な呼吸音とともにミストの拳がジャバウォックに向かって放たれた。

「ウオォォォ」

 咆哮とともに、両手を十字にクロスさせ、ミストのパンチを受け止めると、今度はジャバウォックの方が拳を放った。

 ミストは直前で避けると、自らの足元を拳で殴り付けた。同時にジャバウォックが背後に跳んで避けた。

「危なかったぞ。自分の拳を破壊して、ウイルスを散布しようとするとはな。中々に慣れている闘い方だ」


 バレンタインが口元を僅かに歪めた。同時にジャバウォックの両目がキラリと光った。

「まずい・・・・ミスト」

 何かを察したのかソルガがミストの方を見た。ミストは口から息を大きく吸い込むと、口から紫色の息を吐き出した。

「ポイズンブレス」

「タイムリープ」

 二つの魔法が同時にぶつかり合った。


 

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