ジャバウォックの謎
「死ね・・・・」
ジンはジャバウォックの右腕を振るった。ファムはそれを後方に跳んで避けると、すぐに剣を構えてジンに飛び掛かった。
「くう・・・・」
ジンも背後に跳んでそれを避けるが、そのまま足を滑らせて床に転倒した。
「何だ?」
ファムはジンの姿を見て不自然なものを感じていた。間違いなく彼は歴戦の強者である。間合いの取り方を見てもそれは分かる。しかし怯えている。要するにへっぴり腰になっているので、満足に動くことすらできていない状態なのだ。
「ジンよ。何故逃げようとするのだ。余のために闘え」
「しかし・・・・」
その先の言葉が出てこなかった。もしここで逃げ帰るようなことがあれば、恐らくバレンタインは許してくれないだろう。ジンは自らの首を差し出さねばならなくなる。それは十分に理解していたつもりだ。しかし母親の姿を思い出すと、本能的な恐怖から体が竦んでしまう。
「キルショットを使え。余の魔法を活用しろ」
「はい・・・・」
ジンが腕を掲げると手首の大きな目玉がクワッと開かれた。するとファムの肩に赤く丸い光が浮かび上がった。
「キルショットは生物の弱い部分、古傷や現在痛めている場所を教えてくれる。どんな屈強な者でも、弱点はあるものだ。良いか、肩を狙え、貴様ならできる」
「はい・・・・」
ジンは右腕を振り上げてファムに襲い掛かった。
「当たるか」
ファムは攻撃を避けると、右足でジンの胸を蹴った。そしてそのまま間合いを詰めると、剣を振り上げた。
「おおう・・・・」
ジンは右腕でファムの剣を薙ぎ払おうとした。しかしそれよりも速く、剣から真空波が発生し、ジンの右腕ごとジャバウォックを切断した。
ファムは剣を鞘に戻すと、着ていた鎧が光と共に消えて、元の鉄製の鎧に戻った。そして倒れているジンを横目でチラッと見ると、マロとソルガと共に頂上目指して歩き始めた。
「ジンよ。やってくれたな。だがまだチャンスはある。このジャバウォックの右腕に残っている魔力で、奴らの内、一人は脱落させられるだろう。どうせこの右腕は破壊されても、それはジン、貴様の右腕で、実際の右腕はジャバウォックの元に戻って来るのだ」
ジャバウォックの右腕が動き始めた。そして階段を上っている三人の後を追って、階段を這い擦って上り始めた。
「ファムさん。流石ですね」
ソルガは瞳を輝かせて手を打った。ファムは満更でもなさそうに後ろ髪を手で掻いていた。
「いやあ、全然・・・・」
「でも、あれがライディーンなの?」
以前のライディーンを知っているマロは疑問が解けないようで、何やら考え込んでいた。
三人の中で一番下にいるソルガは右足に妙な違和感を感じていた。足が疲れているのか、特に右足を上げるのが辛かった。何と彼の右足首には、緑色の腕がくっ付いていたのだ。




