再会
ファムは馬車から降りると、ボイドの手によって荒廃していたバルド共和国が見事に復興していることに驚いた。捨ててあった糞などは消え、壊れた建物も綺麗に建て直されていた。
「どうぞこちらへ」
兵士の一人に城の中に案内されたファムは、早速王室に連れて行かれた。そこには玉座が二つあり、左にはアリッサが、右には彼女の母が座っていた。
アリッサは金色の王冠を付けており、心なしか王女らしい威厳というものが感じられた。彼女の褐色肌は、より日に焼けて黒くなっており、ずっと外に出ていたことが分かった。
「久しぶりね」
「ああ・・・・」
ファムはアリッサの絢爛たる姿にしばらく見惚れていたが、声を聴くと、やはり前の彼女だと安心した。その後、しばらく二人で談笑していると、王室にまた一人新たな来客があった。それは茶色のサラサラとした短い髪に、木製の杖を持った中性的な顔立ちの少年、マロだった。
「マ、マロ」
ファムは無意識に飛び出すと、マロを抱きしめていた。小さな彼の体はファムに包まれて埋まってしまった。
「ぐるじい・・・・」
「すまん」
ファムは焦ってマロから離れた。危うく旧友を殺すところであった。
「ファム久しぶりだね」
マロはニコッと屈託のない笑顔をファムに向けた。しかしその姿はどこか寂しげで悲壮感が漂っていた。一皮剝けたというべきか、彼は彼なりに、この数日間、色々あったのだろうと嫌でも納得してしまうような雰囲気を纏っていた。
「二人とも、今回は私の国のためにありがとう。実は今、私の国はすごく困ったことになっているの」
アリッサはマロとファムを交互に見ながら、ゆっくりと話し始めた。
バルド共和国は、三大国と呼ばれる、この世界で最も大きな勢力を持つ国の一つである。東には、最近起こった政変により、国王が変わったファン王国が、反対側の西には、邪教の力によって成り立っている、宗教国家エルムイがあった。バルド共和国は二つの国に挟まれている形となる。
今まではそれぞれが互いに境界線を張り、協力するところは協力し、上手に付き合っていたのだが、政変後に王となった、バレンタインは、それぞれの国の良さを理解せずに、無理矢理一つに統一しようとしていた。そして今や、バルドとファンの国境を侵すまでになってしまったという。ちなみにエルムイも、この機に乗じて、本性を現したのか、西方面からバルドとの国境を侵し始めた。
「私達はどうすれば良いのだ?」
「これからパーティーを三つの小隊に分けるわ。私とバルドの兵士の何人かはエルムイへ攻めるわ。そしてファムとマロ、そして残りの兵達はファン王国の東にある転生の塔に向かってちょうだい」
「転生の塔?」
マロが聞き慣れない言葉に首を傾げた。
「転生の塔は、100年に一度、神獣フェニックスが降臨する聖なる場所よ。バレンタインはその塔で何かをするつもりみたい。一昨日から、部下を引き連れて塔の中に籠っているわ」
「そこを制圧すれば良いのだな」
ファムはニヤッと得意げな笑みを浮かべた。マロに成長した姿を見せるチャンスである。
かくして、二方面の侵攻作戦が始まった。




