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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
ブラスト家当主継承編
27/121

決着と旅立ち

 カイザーは戸惑っていた。これほどまでに強大な敵に巡り合ったのは久しぶりだった。目の前に立ちはだかる少女は、白銀の鎧に包まれて、その凛とした、可憐さと豪胆さを併せ持ったその表情からは、意思の強さが感じられた。

「ライディーン、力を貸して」

 ファムは心の中でライディーンに祈りをささげた。彼は形こそ失ったものの、今も彼女の中で確かに生きていた。そしてこれからは彼女の装備として活躍していくだろう。

「カイザー、無駄だと思うけど忠告しておく。今すぐ試合を降参した方が身のためだ。可能な限り手加減はするが、下手をすれば、君を殺してしまうかもしれない」


 カイザーはファムの発言に、少し表情を硬くしたが、すぐに自嘲気味に笑った。確かに彼女の言うことは正しいと思ったのである。

 強者だからこそ分かることがある。それは相手が自分より強いかどうかの判断である。弱い者は自身の強さと、相手の強さを比較できない。そのため、勝てない相手にも全力で突っ込んで行き、結果痛手を負うのだ。最も、今回の場合は、痛手覚悟で挑んでみる価値のある相手だ。カイザーからすれば、騎士ライディーンと剣を交える機会など、早々ない。死を課してでも闘ってみたい相手だった。


「ファム選手よ。ご忠告ありがたいが、貴殿ほどの騎士に殺されることは、同じ騎士として恥ずべきことではない。よって手合せ願おう」

 カイザーは剣を握ると勢いよく大地を蹴った。

「来い」

 カイザーの叫び声が会場中を包み込んだ。ファムは剣を構えると、それを大きく薙ぎ払った。

「真・鎌鼬」

 鎌鼬と言うよりも竜巻に近い力が、ファムの剣から放たれた。そして轟音と共にカイザーの体を上空へと突き上げた。


 カイザーはそのまま会場席に落下した。周りの見物客が避けたため、彼の体は石造りの椅子に激突したが、ファムが手加減したことと、カイザーの強さの甲斐あって彼は生きていた。

 試合が終了した。ファムは大会を制覇したのである。同時に彼女の元にマルクとアルアが駆け付けた。彼女の父も、部下の兵士達も一緒だった。最も彼女の優勝を心から祝っていたのは、マルクとアルアの二人だけで、後の人々は、どちらかと言うと安心したという気持ちの方が大きいように見えた。


「ファムよ、バルムンクを返すぞ」

 父はファムに紫色の水晶の欠片を渡した。それを右手で掴むと、それは輝きを放ちながら彼女の体の中に戻った。

「父上、お話が・・・・」

 ファムが何かを切り出そうと真剣な顔になると、父はそれを笑った。

「分かっておる。娘の考えなど。旅が恋しいのだろう。もう止めんよ。好きにして来い。そして旅に飽きたら家に戻って、その時は当主としての責務を果たしてもらうからの」

「はい、必ず」

 ファムは父に対して静かに頭を下げた。次にマルクとアルアが口を開いた。

「お嬢様、随分と立派に成長されましたね。これからのご活躍にも期待しております」

「姉ちゃん。オラも頑張るからな」


 ファムは二人に笑顔で手を振った。普段はクールであまり笑顔を見せない彼女だが、今回ばかりは、無垢な少女のようにえくぼを作って笑った。

「じゃあな・・・・」

 ファムは城門を潜り故郷を後にした。そして城門の外で待っている馬車の姿を発見すると、顔を引き締めて乗り込んだ。

「行こう。バルド共和国に・・・・・」


 ブラスト家当主継承編完結

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