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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
ブラスト家当主継承編
22/121

激闘の第二回戦へ・・・・

 第三試合、出戻り騎士ファムとメイドのメイメイとの試合だった。ファムは鞘から銀色に光る剣を抜いた。メイメイも懐から、ナイフを取り出し戦闘体勢に入った。

 試合が始まると、メイメイが大きく跳躍した。そしてナイフをファムの顔目掛けて投げた。

「当たるか」

 ファムは背後に跳んで避けた。メイメイは空中で何かを掴むような動作をした。すると地面に刺さっていたナイフが、再び彼女の手元に返って行った。

「あれは糸だな・・・・」

「ご名答」

 メイメイは再びナイフをファムに向かって投げた。

「随分とレベルの低い相手だな」

 ファムは溜息交じりに、やれやれと左右に首を振った。それを見てメイメイの顔が怒りで赤くなった。

「よくも、侮辱したな」


「悪いが、あんたには負ける気がしない」

 ファムは剣に糸を絡ませると、自分の方に引っ張った。するとメイメイの体がそのまま地面に急降下、顔から地面に激突した。

「あ、ヤバイ・・・・」

 ファムは申し訳なさそうに、後ろ髪を掻いていた。そしてそのまま試合が終了した。


 試合後、ファムは次の試合の様子を食い入るように見ていた。

 最後のブロックは、盲目の闘士クルトと怪力の男ゴメスの対決だ。

「よろしく頼むぜ」

 ゴメスは巨大な斧を振り上げた。それじたいは刃こぼれしていて、斬れ味自体は大したことないものの、問題はその重量である。一発でもまともに受けたら、きっと骨が砕けてしまうだろう。

「よろしく・・・・」

 クルトはゴメスとは対照的に、武器は片刃の剣、カタナと呼ばれるものだった。名前自体はファムも聞いたことがあるものの、実際に見たのはこれが初めてだった。この武器は鋭い斬れ味を誇り、刀身は氷のように冷たく、そして輝いている。


「へへへ、眼が見えないからって手加減はしないぜ」

 ゴメスは斧を横に振った。それだけで砂が巻き上がり、小さな砂嵐が起こった。

 ファムは冷静にクルトの姿を観察していた。彼は鞘の長い刀を肩に掛けたまま、その場に膝を立てて座っている。挑発のつもりだろうか。いや違う。これは恐らく居合抜きだ。剣を抜くと同時に相手を斬る。一撃必殺の剣技だ。

「ぐははは。悪いなあんたには死んでもらうぜ」

 ゴメスは高笑いをしながら、クルトの元にゆっくりと歩いて行った。


 クルトが口元を歪めて笑った。それは声のない乾いた笑いだった。その様子が癇に触れたのか、ゴメスの顔が怒りに打ち震えていた。

「何がおかしいんだよ」

「フフ、済まない。今、君のいる位置から一歩でも、前に出たらきっと、君は死ぬことになる。それが憐れで、どうしてだか面白くなってしまったんだ」

 ゴメスは歯軋りをした。それも歯を削ってしまうのではないかと心配になるほどに、激しく歯を擦り合わせていた。

「上等だクソ野郎」

 ゴメスは地面に唾しながら斧を振り上げて走った。それが彼の最後の言葉となった。

 それはあまりにも速く、そして冷たい一撃だった。ゴメスが一歩踏み込んだ瞬間、彼の首が胴体から離れることとなった。クルトが鞘からカタナを出した瞬間、眼にも止まらぬスピードで彼の首を斬った。それだけのことだというのに、とても恐ろしく、観客は震えていた。


「試合終了だな・・・・」

 クルトは涼やかな声で言った。ファムはその様子を見て、あることに気が付いた。

「なるほど、視覚がない代わりに、聴覚や臭覚が優れているのだろう。奴は男の匂いと、斧の空を切る音、そして足音から、奴の位置を判断したのだ。そうに違いない」

 ファムは自分なりに納得すると、静かに笑った。彼女は勝利を確信したのだ。二回戦は必ずクルトに勝てる。彼女はある秘策を思いついた。

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