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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
ロストアイランド編
17/121

瞳の輝き

 ファムとアリッサは涙した。そして激しい怒りに打ち震え、クロウの元に走った。

「うおおお」

 ファムは大きく跳躍すると、クロウの右腕に剣撃を喰らわせた。彼の腕から僅かに出血するも、すぐに傍らのディアボロスの拳が、ファムに向かって飛んだ。今度はそれをライディーンが両方の槍で受ける。その合間を縫って、今度はサラマンダーが火を吐いた。

「面倒だ」

 ディアボロスは地面を殴り付けた。同時にファムとアリッサ、そしてライディーンやサラマンダーまでもが、吸い寄せられるように地面にうつ伏せに倒れた。先程と同じ、重い物を背中にずっしりと乗せられたような気分だった。


「はあ・・・・はあ・・・・」

 ファムは顔に泥を浴びながらも立ち上がった。そしてクロウの魔法の秘密が徐々に分かってきた。そして剣を再び構える。

「引力・・・・」

 ファムは悔しげに一言、そして唾を地面に吐き捨てた。

「ほう、ディアボロスの魔法を見抜いたか、褒めてやるぞ」

 クロウはわざとらしく両手を打った。そしてディアボロスを前方に置くと、不敵な笑みを浮かべた。

「だが、知ったから何だ、それで私を倒せるのか?」

 クロウの言葉に、ファムは悔しげに俯いた。そこに見覚えのある影が映る。よく見ると、そこにはウンディーネが倒れていた。それも下半身は既に消失し、腰から上だけが辛うじて、存在している状態だった。


「ウンディーネ・・・・」

 ファムはウンディーネに駆け寄った。そして彼女の手を掴んだ。ウンディーネは口を開けて、小声で喋り始めた。

「ファム、マロは生きています。私がここに存在できているというのがその証明。お願いです。魔力を少しでも良いので、マロに分けて下さい。それで彼は助かる」

「分かった」

 ファムはアリッサの顔をチラッと見た。そして目で合図した。「今の話を聞いていたな」という意味だ。アリッサは頷くと、ファムの耳に口を近付けた。

「ねえ、魔力を送るのはできるけど、時間が掛かるわ。もし途中であいつに邪魔されたら。きっとダメになる」

「安心しろ。私が時を稼ぐ」


 ファムはライディーンと共に、クロウの前に立ちふさがるように剣を構えた。

「ファムよ、時間稼ぎなどできるのか?」

「やるしかない。それにアレを使えば。少しは持ちこたえられる」

 ファムのアレという言葉に、ライディーンは首を傾げたが、すぐにそれが何であるかを気付き、彼女の腕を掴んだ。

「待て、お前まさか・・・・」

「そのまさかよ。バルムンクを使うわ」

 バルムンクとは、ファムの属する、騎士の名門ブラスト家の妖剣である。家督を継ぐ者のみが継承できる由緒正しき剣は、使用者に大きな力を与えてくれるが、その代わりに、5割の確率で、妖剣のエネルギーによって死ぬ可能性がある。ファムは賭けに出たのだ。


「ダメだ。それは、それだけは・・・・」

 ライディーンの言葉を無視して、ファムの周囲に紫色の光が現れた。そして彼女を包むと、その手に赤く、血のような刀身を持つ剣が出現した。

「行くぞ」

 ファムはバルムンクを右手に握りしめ、ディアボロスに向かって跳んだ。その瞳は赤く、まるで獣のようだった。そして文字通り、餌に噛みつくかのように、バルムンクを振り上げると、ディアボロスの右肩目掛けて、薙ぎ払った。

「当たるか」

 ディアボロスとクロウは後ろに下がって、それを避けた。しかしファムは既に、ディアボロスの肩の上に立っていた。


「まずい、こいつ・・・・」

 言い切る前に、ファムはディアボロスの右肩に、地面に剣を指すように真っ直ぐ下に突き刺した。

「ぐああああ」

 クロウは右肩を押さえて地面の上に膝を突いた。ディアボロスも肩を押さえ、全く同じ姿勢を取ると、苦しそうに呻いていた。ファムはバルムンクを解除すると、その瞬間に、拳の一撃を顔に受けて倒れた。

「はあ・・・・はあ・・・・時間は稼いだ」

 ファムは苦しそうに地面の上を仰向けに倒れていると、満足げに笑った。そしてその上に黒い影が現れる。

「くそ、小娘が。よくも・・・・」

 ディアボロスの大足がファムを踏み潰そうと狙う。アリッサは魔力の供給が終わり、マロの様子を観察していたが、一向に目を開けてはくれなかった。まさに万事休すかと思われたその時に、奇跡が起こった。

「死ね・・・・」


 ディアボロスの足が、ファムを踏み潰そうと下された時だった。彼女の前に見覚えのある、サラサラとした短い髪と、綺麗な襟足が彼女の前に現れた。

「ウンディーネ」

 同時にディアボロスが大きく仰け反った。そこに氷柱の刃が大量に降り注いだ。そして手足に突き刺さり、クロウは血塗れで、その場に倒れた。

「大丈夫かい?」

 マロは振り向いた。いつもの愛嬌のある顔で、こんなに危険な状況だというのに、彼は普段の彼だった。

「マロ・・・・」

「ここは任せて」

 マロが杖を構えると、ウンディーネがマロの前に出る。クロウは近くの瓦礫を支えに立ち上がると、特に重傷を負った。右肩を押さえていた。


「がは・・・・よくもやってくれたなあ」

 クロウは前に出ようとするも、あまりの痛みとダメージに地面の上に倒れてしまった。そしてマロを敵意の眼で睨み付けた。

「このクロウに、よくも屈辱を味わわせたな。見せてやるぞ。引力を操ることの恐ろしさを」

 クロウはそう言うと、ディアボロスの背に乗って、そのまま何処かに飛んで行ってしまった。

「ファムとアリッサ、ここから離れていて」

 マロは澄んだ声でそう言うと、眼をゆっくりと閉じた。クロウは何かを企んでいる。それは明らかだった。そしてその瞬間はあっという間に訪れた。


 空から小さな石の欠片がマロの頭にぶつかった。上を見ると、信じられない物が、こちら目掛けて降って来ていた。

「あれは・・・・隕石だ・・・・」

 最初に気が付いたのはファムだった。クロウは空から巨大な隕石の上に乗って、マロ目掛けて落ちて来たのだ。

「フハハハハ、どうだマロよ。引力を魔法を最大まで使い、宇宙を回る隕石の一部の軌道を変えてやったのだ。覚悟するが良い」

 巨大な炎に包まれた隕石が、マロに向かって降りて来た。だがマロの瞳は恐怖に慄いてはいなかった。いつも通りの態度で、瞳は輝いていた。

「ウンディーネ」

 マロが叫ぶと、ウンディーネが空から降ってくる巨大な隕石に両手を向けて、手から超低温の風を吹きつけた。


「死ね、愚か者がああああ」

「凍れええええええ」

 二人の声が島中に響き渡った。ウンディーネの氷が隕石を凍らせて行く。しかしたとえ凍らせても、隕石は重い巨大な石として、マロとウンディーネを潰してしまうだろう。しかし彼らを取り巻く運命は、彼らを護る方についたらしい。凍った隕石は表面にひびが入り、その場で砕けてしまった。

「何・・・・」

 氷の破片は鋭利な刃となって、クロウとディアボロスの肉を削いだ。そして一番大きな氷柱が、クロウの心臓を貫通した。

「ぐほおお」

 クロウは血を吐きながら背後に倒れた。マロが勝利した瞬間だった。


 マロ達はクロウの元に駆け寄った。

「フ、俺を倒せて満足したか?」

「君はパパと同じパーティーだったのかい?」

「ああ、そうだったな。話してやるよ」

 クロウは静かに語り始めた。

 クロウとマロの父ガロ、そして海賊シャーロックと、謎の男バレンタインの四人はパーティーを組んでいた。全員が全員とも強く、この世の宝は全て自分達のためにあるのだとさえ思った。彼らは希望に溢れ、見知らぬ世界を冒険して回った。そんな彼らの元にある日、一人の少女が訪ねてきた。


 少女は緑色の長い髪を背中まで垂らしており、神々しいほどに美しかった。それは性的な意味での綺麗とは異なる。芸術品を見た際に漏らす美しいという感想に似ていた。

「私と勝負して頂きたい」

 少女は言った。四人は流石に戸惑ったが、少女の強さを本能で感じ、闘いを挑んだ。

 結果は惨敗だった。闘いと呼べるものではない。一方的にやられただけで、誰も彼女に触れることすら叶わなかった。そのあまりに強い少女は、敗者の命を要求した。当然、ガロを初めとする他の三人は覚悟した。しかしクロウだけは違っていた。


 気付いた時、彼は土下座していた。助かりたくて、土を舐めてでも助かりたい。彼の姿を見た、パーティーのメンバーはさぞ、彼を軽蔑したことだろう。それはクロウが最も感じていた。そして少女は、あまりの哀れさに興を削がれたのか、そのまま誰も殺さずに、消えて行った。

 その後、周りからの視線に耐えられなくなったクロウは、パーティーを抜けた。そしてそれをきっかけに、バレンタインが抜け、シャーロックとガロは結婚し、平凡な家庭を築いた。クロウは弟と共に、盗賊団ボイドを結成し、弱者に盗みや暴力で力を示した。そうしなければやっていられなかった。クロウは自ら井の中の蛙を演じ続けることにした。


「どうだ滑稽だろ。年端も行かぬ少女に命乞いする男は」 

 クロウはそれだけ言い残すと、眼を閉じて動かなくなった。マロやファム、アリッサは金貨を100枚手に入れると、遺跡の奥に向かった。このゲームのエンディングを見るべく。


 遺跡の中は簡素な造りで、奥の方に玉座があるだけだった。しかしその玉座には巨大な翼をもった銀色のドラゴンが座っていた。

「うわあ。おっきい」

 マロは思わず見上げた。まるで巨大な山を見るように、それは大きかった。

「わが名はドラグーン。神獣王なり。勝者よ良く来たな。さあ、約束だお前の願いを叶えよう」

 ドラグーンの声は重く野太かった。ファムとアリッサは手持ちの金貨をマロに渡した。初めからそうするつもりだった。


「さあ、マロよ。父と母に会おう」

「そうよ。いよいよね」

「うん、二人ともありがとう」

 マロはドラグーンに向かって叫んだ。

「パパとママに会いたい」

 その声は少年らしい力強さを放っていた。ドラグーンは赤い目を僅かに瞬きさせた。

「小さな勇者を良かろう。だが、残念ながら母親の方は既にこの世にいないようだ」

「えっ?」

 マロはあまりの衝撃に、顔面を殴られたような気分だった。フラッと後ろに下がると、涙を浮かべながら言った。

「じゃあパパは?」

「待っていろ」

 ドラグーンは眼を閉じて静かに何かを呟いた。そしてしばらくして、眼を開けると、残念そうに言った。


「すまん。マロの父親に拒否された」

「そんな・・・・」

 落胆するマロの姿を見て、ファムが剣を抜いた。

「おい、このドラゴン。貴様は願いなど叶える気がないな。古来より、ドラゴンは欲深く人間の敵だ。かくなるうえは勝負だ」

 ドラグーンは足元で叫ぶファムを無視して、さらに話を続けた。

「マロよ。他の願いを言うのだ」

「パパは僕と会いたくないんだね。拒否するんだもんね。じゃあさ、ママのお墓のあるところに連れてってよ」

「ふむ、それで良ければ、お安い御用だ。私の背中に乗るが良い」

「うん」


 マロはドラグーンの大きな背中に乗ると、ファムとアリッサの方を見て微笑んだ。

「ファム、アリッサありがとう」

「こちらこそ」

「私の国にも来なさいよ」

 ドラグーンはマロを乗せて、大空へと消えて行った。ファムとアリッサは二人で、ロストアイランドの船着き場に戻った。そして長かったサバイバルが終わったのだ。



 マロが母の墓に降ろした後、ドラグーンはロストアイランドの遺跡に戻っていた。

「おい、そこにいるのは分かっているぞ」

「バレてたか」

 柱の影から、頭にバンダナを巻き、手には木の杖を持った、無精髭を生やした中年の男が現れた。その瞳は若者のように輝いている。

「久しぶりだなドラゴン」

「何故さっき、私の応答を拒否した?」

「だって、今更息子に会って何を話せと言うんだ。俺はなあ。マロには、何の悩みもない平凡で、でも命の危険もない生活を送って欲しかったんだ。それが、俺と同じような道を歩むなんて信じられない」

「かつて私とお前が契約していた時、お前は強かったぞ」

「やめてくれ、クロウの奴を死なせてしまった。俺はあの時、クロウに感謝していたんだ。あいつがプライドを捨てて、命乞いしてくれなければ、俺は死んでいた。それなのに、俺は英雄を悪党にしちまった」


 ガロは泣いた。手に大粒の涙が落ちて濡れる。そしてクロウの亡骸を探しに出かけた。


 ロングアイランド編完結

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