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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
ロストアイランド編
14/121

ウンディーネVSガネーシャー

 アリッサはロードウォームの体内に呑みこまれた。辺りは沈黙に包まれた。勝負は決したように思われた。だがアリッサは死んではいない。彼女は生きていた。

「ウンディーネ、どうしたの?」

「マロ、アリッサは勝ちますよ。いえ、もう勝っています」

 ウンディーネが説明し終わらないうちに、ロードウォームの体が熱を帯び始めた。アイルはその変化にまだ気づいていないようだった。そして勝利を確信したアイルは言った。

「さあ、次の相手は誰かしらん?」

「マロ、出ますよ。アイルとか言う小娘は、もう死んでいますから・・・・」


 ウンディーネらしからぬ暴言、しかしその予言は的中する。次の瞬間、ロードウォームが突然苦しみ始めた。全身をブルブルと揺らし、口から炎を吐いた。同時に内部からサラマンダーの上に跨ったアリッサが飛び出してきたのだ。

「外がダメなら、中から破壊するまでよ」

 アリッサは会心の笑みを浮かべた。ロードウォームは火を噴きながら後ろに倒れた。

「終わったのね」

 アリッサは地面に膝を突くと、ふと、アイルの方向を見た。彼女は黒こげになったまま、最早、顔も性別も分からないほどに潰れている。


「この勝負も我々の勝ちだな」

 ファムはアリッサの元へ駆け寄ると、彼女に肩を貸して、近くの岩に座らせた。そしてマロの方を強く見つめた。次の戦いはマロと、あの青髪の女との一騎打ちである。

「アイル負けたのか・・・・」

 女は腰まで伸びた青い髪を靡かせながら、倒れているアイルの姿を見た。

「仇は討つ。このシズクが命に代えても」

 青い髪の女シズクは、手に持っている白い布を。アイルの顔に被せると、マロの顔を睨み付けた。

「いよいよ、私の勝負する番。絶対負けない」

「僕だって・・・・」

 二人の間に緊張が走る。マロが負ければ、次はファムが闘う。冷静に考えて、こちらの方が圧倒的に有利であったが、ファムやマロの表情は強張っていた。


「ウンディーネ」

「ガネーシャー」

 二人の傍らに神獣がそれぞれ出現した。シズクの神獣はガネーシャーという。見た目で言うならば、まさに擬人化した象という表現がふさわしい。長い鼻がクルクルと、近くのゴツゴツした岩に巻き付き、それを打ち砕いた。見た目以上にパワーのある神獣だ。

「パオパオパオー」

 ガネーシャーがその長い鼻を、ウンディーネに巻き付けようと伸ばした。しかしそれを上手く避けるウンディーネ。そして両手に氷を作ると、それをガネーシャーに向かって飛ばした。

「ダイヤモンドロック」

 氷塊がガネーシャーの鼻にぶつかった。しかし砕けたのは氷だけで、ガネーシャーはまるでダメージを受けていなかった。

「マロ、どうしますか?」

「ウンディーネ、ダイヤモンドサーベル」

 ウンディーネの右手から氷の刃が一直線に伸びると、ガネーシャーに向かって伸びた。

「ガネーシャー、チャンス」

 シズクが言うと、ガネーシャーは氷の刃をジャンプして避けた。ウンディーネ-の必殺の一撃は、地面にぶつかり、折れてしまった。そして宙にいるガネーシャーは、そのまま鼻で、マロとウンディーネを捕まえると、地面に両足を付け、鼻をグルグルと振り回し、空に向かって二人を放り投げた。


「大寒波」

 シズクの言葉と共に、ガネーシャーは空を見た。そして空から降ってくる二人に目掛けて、鼻の先から、低温の空気を放出した。

「危ない二人とも」

 ファムが叫んだ。しかしそれも空しく、二人の体は低温の空気に晒されると、一瞬にして二人揃って氷漬けになった。それをガネーシャーは鼻を巻き付けてキャッチすると、適当な所に放り投げた。

「ガネーシャー上出来」

 シズクはガネーシャーの頭を撫でた。

「さあ、次は誰?」

 シズクはガネーシャーと共にファムをじっと見つめた。

「待て、勝負は決してはいない。二人は生きている」

「いや、死んでる」

 シズクはあっさり言うと、ゆっくりと口を開いた。

「ガネーシャーは最強の神獣。極寒の前では、いかなる生物も、さっきのウイルスも生育できない。まさに無敵・・・・」


 シズクの言葉にファムはニヤリと笑った。そしてマロとウンディーネ-の氷を見た。

「じゃあ、確かめてよ。本当に二人が死んだのかね」

「ガネーシャー」

 シズクが命じると、ガネーシャーは180センチほどの大きな体を揺さぶって、マロとウンディーネの氷に鼻を巻き付けた。そして軽く持ち上げた。するとウンディーネの顔に笑みが浮かんだ。それに気が付いたガネーシャーが鳴き声をあげようとした、その時だった。

 マロの口がゆっくりと何かを呟いている。それは魔法の詠唱であった。

「ダ・イ・ヤ・モ・ン・ド・サー・べ・ル」

 瞬間、ウンディーネの右手の爪先から、氷を貫いて、同じく氷の刃が飛び出し、ガネーシャーの額を真っ直ぐに貫いた。


「パオパオー」

 シズクとガネーシャーは額から血を流しながら、その場で蹲った。そしてダラダラと絶え間なく流れる血液を手で必死に拭った。

「くっ、私は・・・・」

 シズクが立ち上がろうとした次の瞬間、背後から、黒く長い髪を目元まで垂らした男が彼女の肩を叩いた。それはマロとアリッサの宿敵クロウだった。

「クロウ様・・・・」

「帰りが遅いと思ったら、こんなことになっていたとはな。シズクよ。本気を出せ」

 クロウの言葉にシズクの顔付きが変わった。

「そうだ、クロウ様の前で無様な姿、見せられない」

 シズクが瞳をクワッと見開いた。同時にガネーシャーの体が赤く変色し始めた。体から白く高温の湯気が出ている。何かが始まろうとしていた。

「私のガネーシャー、怒らすと止まらない」

 ガネーシャーは真っ赤になった体を震わせると、マロとウンディーネに向かって走った。

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