表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
ロストアイランド編
13/121

暗黒のウォーム

 ファムとギルガとの勝負は、ファムの方に軍配が上がった。そして今、次に闘うメンバーをそれぞれが決めていた。

「済まない、二人とも、私が全部倒すつもりだったが、流石に厳しいみたいだ」

 ファムは肩で息をしながら、土の上に座り込んだ。アリッサはまだ、先程の恐怖が消えないのか、アイルという金髪の少女をチラチラと見ていた。そして彼女と目が合うと、彼女はニコッと微笑みかけてきた。アリッサはすぐに目を伏せた。

「次は僕が出るよ」

 アリッサを気遣うマロだったが、彼女はそれを止めた。

「私が出るわ」

「大丈夫か?」

 ファムが心配そうにアリッサを見つめる。しかし彼女は、先程までの恐怖を微塵も感じさせないような、強気な表情で、前へと歩いて行った。それがやせ我慢であることに気が付かないほど、マロとファムは愚かではない。しかしここで彼女を止めることは、彼女のプライドを傷つけてしまうことも知っていたので、あえて黙っていたのだ。


「さあ、私の相手は誰?」

 アリッサは震えを押さえながら精一杯に意気込んだ。

「私よん」

 現れたのは、金髪の少女、アリッサが最も恐れているアイルだった。彼女はアリッサの青い顔を見ると、楽しそうにクスリと笑った。

「怖いの?」

「怖くないわ」

 アリッサの周りに炎の柱が舞った。中から真紅の肌をした巨大な蜥蜴、サラマンダーが現れた。

「さあ、行くわよ」


 アリッサの掛け声とともに、サラマンダーの炎の舌が伸びる、そしてアイルを雁字搦めにしようと、彼女の元に、一直線に向かって行く。

「ロードウォーム」

 アイルの言葉と共に、彼女の足元に黒い穴が出現した。そして吸い込まれるように彼女は、その穴の中に入って行った。

「ああ・・・・」

 それは先程の金髪男を殺した時のものと非常に似ていた。アイルが穴に入ると、穴が閉じられ、元の土に戻った。

「消えたわ」

 アリッサは周囲を見回した。すると彼女の頭上に突然、先程の黒い穴が出現した。そして中からあのグロテスクな、赤黒い肌をした巨大な芋虫、ロードウォームの頭部が、アリッサの目の前に現れた。そしてその大きな口からは、鋭利な歯がいくつも飛び出ている。


「アリッサ、避けろ」

 サラマンダーは舌をアリッサの腰に巻き付けて、自分の元に引き寄せた。ロードウォームは再び黒い穴の中に消えていった。

「はあ・・・・はあ・・・・何よあれ」

「気を付けろよファム。あの神獣はマジでヤバイ」

 しばしの静寂、アリッサとサラマンダーは互いの背中を突き合わせ、敵の奇襲に備えた。

「くそ、何処から来るんだ」

 サラマンダーは眼をグリグリと動かして、周囲を見張った。何も不審な様子は見られない。その時だった。サラマンダーの目の前に黒い穴が出現した。そして中から双眼を鋭く光らせたロードウォームの姿が見えた。


「アリッサ逃げろー」

 サラマンダーは叫ぶと、尻尾を振り上げて、アリッサの背中を思い切り突き飛ばした。

「あう・・・・」

 アリッサの体が宙を舞い、背中を強く地面に打ち付けた。そして口から酸素を吐きだして気を失った。サラマンダーは、舌を伸ばすと、その黒い穴に舌の先端で触れた。

「ぐあああ」

 サラマンダーの舌が穴に触れた瞬間、その真紅の舌が穴の中に引き摺られるように、触れた部分だけが綺麗に消滅した。

「あ・・・・あ・・・・」

 サラマンダーは急いで黒い穴から離れると、口を開けた。何と彼の自慢の舌が、影も形もなく、まるで始めから存在していなかったかのように、口内には白い歯だけが残っていた。


「どうよ。私の神獣は」

 ロードウォームの背にはアイルが乗っていた。彼女はクスクスと静かに笑うと、急に鋭い眼つきになった。

「さあ、まずはあの娘から消すわよ」

 アイルの言葉にロードウォームは金切り音のような声を上げると、サラマンダーを無視して、地面の上で気絶しているアリッサの元へ、地面を這いながら向かった。

「させるかー」

 幸いロードウォームは機動力に欠けている。サラマンダーは簡単に追いつくと、ロードウォームの目の前に立った。契約者のアリッサが気絶しているために、魔法を使うことはできない。つまり得意技のフレイムタンを撃つことができないのだ。

「くそ、済まねえ・・・・アリッサ」

 ロードウォームの巨大な口がサラマンダーを一息に呑みこんだ。そして倒れているアリッサも一緒に、自らの体内に取り込んでしまったのだ。


 アリッサの姿を見ていたマロは、思わず杖を片手に飛び出した。

「アリッサ」

 マロは杖を振り回し、アイルに跳びかかろうとするが、それをウンディーネに止められた。

「ダメですマロ」

「何でさ?」

「今はアイルとアリッサの戦いです」

「でもアリッサは・・・・」

 マロはアイルとロードウォームを見た。アリッサとサラマンダーは神獣によって丸呑みにされてしまった。だが、アリッサとサラマンダーは死んではいなかった。ウンディーネは気付いていた。アリッサの魔力がまだ尽きていないことを、サラマンダーの生命力がまだ残されていることを・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ