エピローグ
今回で終わりです。今まで見て頂いた方々、特に感想や評価を下さった方々も本当にありがとうございました。
「アリッサ様、お待ちください」
バルド城内では、アリッサと大臣が追いかけっこをしていた。最も、大臣からすれば、それは遊びではなかったのだが。
「良いじゃない。ドレスって堅くて嫌いなのよ」
今日は大事なパーティーがある。ファムやソルガ、アインなどが参加する、彼女にとっては特に重要なイベントだった。
「決めたわ。私は仮装するわ。サラマンダーの着ぐるみ着てね」
ソルガは兵士達と朝の鍛錬をしていた。もうすぐでパーティーが始まる。彼は兵士達を休ませると、汗を拭いながら、急いで更衣室に駆け込んだ。
ファムは、荒野を一人で歩いていた。今日はパーティーだというのに、着ているのはいつもの銀の甲冑だ。
「皆、元気で良いな」
ファムは青空を見ながら、フッと小さく笑った。マロという存在が消え、多くの人の記憶からも彼の存在は抹消されていた。アンジェリカを倒し、その後、目が覚めたらバルド城の前に皆倒れていた。全員とも、アンジェリカとの戦いの記憶を失っており、最悪なのは、マロのことまで忘れていたのだ。初めて、アリッサと会った時、ファムは薬草を盗まれた。それ自体は、彼女も覚えているのだが、マロのことだけはいくら言っても思い出さないのだった。
「こんなことなら、私もお前のことを忘れたいよ」
ファムは自嘲気味にまた笑った。空の雲が、マロの顔の形に変わった。
「マロ・・・・」
マロの形をした雲が、ファムを見下ろしてニコッと笑っていた。気付くと、彼女も微笑み返していた。