その日まで…
シメネスとアンジェリカは、小さな小屋に到着すると、ファムとアリッサが遠くにいることを確認して、中に入った。
「マザー、ここで後3日も過ごすのですか?」
シメネスは埃に噎せながら訪ねた。アンジェリカは、部屋の真ん中に開いた大きな穴を指で示した。
「クレトスは既に来ていたのね」
「え、クレトスが?」
「ええ、あの穴はクレトスの神獣によるもの、梯子が付いているでしょ。彼が下にいるんだわ。私達も行きましょう」
二人は梯子を下り、穴の中に降りて行った。そこはまるで、洞窟のようになっていて、周囲が岩盤によってできていた。少なくとも、ここが小屋の中とは思えない広さであった。
「クレトス、来ていたのね」
アンジェリカは、洞窟の奥で、岩場に腰掛けているクレトスを発見した。彼は薄ら笑いを浮かべながら、手を振ってきた。
「二人だけかい?」
クレトスは金髪と黒髪の入り交じった髪をしていた。そして、女性なら誰もが、振り返るであろう、甘いマスクの持ち主だった。
「タレスとサゴラスは死んだわ」
シメネスは悔しげに言った。しかしクレトスは、そんなことはどうでも良いとばかりに、話題を変えた。
「ところで、この穴は、世界一安全なシェルターだよ。どうする?」
「決まってる。私の能力が完成する3日後まで、ここで待つことにするわ」
「へえ、退屈な話だね。こんな暗くて、ジメジメした穴蔵に3日もいるのかい。ここじゃ朝も夜も分からないよ」
「私の能力が目覚めれば出られるわ。それよりも、穴は塞いだでしょうね」
「もちろん。これで誰も僕らを攻撃できないよ」
シメネスは二人が話している間、洞窟内を探索していた。洞窟には小部屋がいくつかあって、フルーツや肉類の食料が貯蔵されていた。恐らくクレトスが用意したものだろう。
「さて、これからどうしようか?」
「じっとしてるより他ないわね」
洞窟内では時間の経過は分かりにくいが、既に1日が過ぎており、ファムとアリッサは、アンジェリカ達の入って行った小屋に辿り着いた。
「今までの苦労が嘘みたいに早く着いたわ」
「アリッサ、おかしい。何故こんなにもあっさりしているんだ」
「中に入れば分かるわ」
アリッサは小屋の戸を開け放った。
「何もないわね」
「本当にただの小さな部屋だ」
二人の眼前には、埃まみれの部屋があるだけで、他はもぬけの殻であった。




