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女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
新世界創造編
113/121

神になる者

 小さな小屋の2階には二人の女性がいた。一人は緑色の長い髪を腰のあたりにまで伸ばした。流麗な美女で、もう一人は、金髪のツインテールに、口には大きな、金色のリングの形をしたピアスが、口から顎にかけて貫通している、不気味な印象の少女だった。

「シメネス。この小屋から逃げろ。後は私が引き受ける。お前の神獣は戦闘向きではない」

「しかし、マザーがいないこの状況で、何処に逃げろと言うの?」

「マザーが好きな場所ぐらい知っているだろう。あの草原だ。町外れにあるから、行って来るんだ。恐らく、神に転生したアンジェリカは、まず最初にそこに向かうはず」

「分かったわ」

 シメネスが小屋から出たのを確認すると、オリジンは窓に足を掛けて、外に飛び出した。

「わざわざ、私が出る羽目になるとは。面倒なことだ」


 アインはソルガを抱えて、ファムとアリッサの待っている、町の外にまで戻って来ると、ソルガをそこに寝かせた。

「俺の神獣は、足りない部分を他の部分で代用することはできるが、傷を治癒させるような力はないんだ。こいつ、死にかけだぜ」

 アインは珍しくシリアスな顔付きをしていた。それが伝染したのか、ファムもアリッサも、神妙な面持ちで、意識の戻らないソルガの姿を見守っていた。そこに、長く美しい緑の髪を靡かせながら、オリジンが姿を現した。あまりの速さに、三人がそれに気付くのには、僅かな遅延が生じていた。そしてそれこそが、アインの命取りとなった。

「三人か。私一人で十分だな」

 オリジンはボソッとそれだけ言うと、白く長い右手で、アインの体を背後から貫いた。


「ごふ・・・・」

 アインは何が起こったのか理解できなかった。あまりに速い一撃に、彼はただ、恐怖でも怒りでもない、全くの無感情のまま、血塗れになり、ソルガに覆いかぶさるように倒れた。

「新たな神、アンジェリカの誕生するまで時間がまだあるな。アンジェリカに降りかかる障壁は、塵一つとして残すわけには行かない」

「く、アリッサ下がっていろ」

 ファムはライディーンの鎧を身に纏い、オリジンに向かって剣を振り下ろした。

「ふん・・・・」

 オリジンは鼻で笑うと、右足を上げて、ファムの剣を根元から真っ二つに折ってしまった。

「な・・・・に・・・・?」

「死ね」


 オリジンの指が、ファムの額を貫こうと狙いを定めていた。すると、突然、タリスマンがファムの肩の上に出現し、オリジンの指に噛みついた。

「ぐ・・・・」

 オリジンは思わずバランスを崩し、地面に膝を突いた。するとタリスマンが、彼女のスカートのポケットに手を突っ込んで、六角形の結晶を取り出すと、それをファムに向かって投げた。

「何だ?」

 ファムは結晶を受け取ると、その中で眠っている小さなマロの姿を見つけた。

「これは、マロだ。そうか、貴様がマロを・・・・」

 ファムはオリジンを睨み付けた。しかし彼女もそれで怯むような器ではない。


「それがどうした?」

 オリジンは地面にうつ伏せに倒れているアインの首を踏みつけて、そのままへし折った。そして彼の首に手刀を繰り出すと、マロのように、アインの体が小さくなり、結晶の中に閉じ込められた。しかし、マロの時とは違って、結晶の内部にはひびが入っており、すぐに砕け散ってしまった。

「私の能力は、あらゆる生物を結晶化して、さらにそこから魔力を奪うことができる。アンジェリカのために、私は世界各地の神獣使い達を結晶にし、彼女の計画のために必要な莫大な魔力を集めた。しかし、途中で死亡した生命体は、結晶にしても、このように、砕けてしまう」

「貴様・・・・」

「これは良い知らせだぞ。アインとやらはこの通り、既に死亡しているが。マロは結晶の状態を維持している。生きているということだ。彼の魔力を期待して、結晶化したのだが、使う前に、既定量の魔力が既にあったらしい」


 ファムはマロの入った結晶を力強く握りしめると、金色の輝きとともに、結晶が砕け、マロがファムの前に出現した。しかし、眠っているのか、ピクリとも動きはしなかった。

「アリッサ・・・・」

 ファムはアリッサの方を向くと、急に穏やかな顔付きになっていた。

「どうしたのよ?」

「今までありがとう。私の人生は、マロとアリッサのおかげで輝いていた。マロの心臓は動いている。きっと彼は生きている。だから私は満足だ」

「何を言っているの・・・・」

「私が闘う。時間を稼ぐんだ。だから、マロを連れてなるべく遠いところまで逃げて・・・・」

「馬鹿。そんなこと・・・・」

「行ってくれ」


 ファムの悲痛な表情に、アリッサは彼女の決意を知った。そして、無垢な寝顔のマロを背中に背負うと、彼女の言葉通りに、町の反対方向へと走って行った。

 

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