表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女騎士は美少年を愛してる  作者: よっちゃん
新世界創造編
112/121

タリスマンの逆襲

「終わりだな。現時点で貴様を始末できたのは、ラッキーであったな」

 タレスはアポカリプスをソルガに向けようとした。彼は自らの死を悟ったのか、眼をゆっくりと閉じると、最後の一撃を待った。

「辞世の句はあるか?」

「早く殺せ。今更、お前のようなゴリラ男の前で、何を言えと言うんだ」

「それが最後の言葉か」

 タレスは、階段を降りると、ソルガを跨いで、彼を高みから見下ろした。そして止めを刺すべく、アポカリプスを持つ手に、力を加えたその時だった。赤いレンガのブロックが、タレスのこめかみにぶつかると、そのまま砕け散った。彼は僅かによろめくと、小屋の入り口に立っている、一人の男を睨み付けた。


「貴様は何者だ?」

「よお、ソルガとかいう名前だったよな」

 現れたのはアインだった。彼はタレスを無視して、倒れているソルガの元に駆け寄ると、床に膝を突き、彼の傷口にそっと触れた。そしてすぐに、立ち上がると、今度はタレスの方を真っ直ぐに向いた。

「お前か。俺の仲間をこんなにしたのは・・・・」

「ふん、貴様は今、何かしたな?」

「ああ、これか」

 ソルガの右肩の傷はいつの間にか治癒していた。アインの神獣、タリスマンの力である。ソルガの体にある、余分な脂肪を削り取り、それを消失した右肩の皮膚に代用したらしい。

「き、気を付けろ。そいつより低い場所にいると危険・・・・」

 ソルガが言い終わるよりも早く、タレスの大足が、彼の体を蹴り飛ばした。

「ごふ・・・・」

 吐血しながら、ソルガは壁に背中を強く血付けた。あまりの衝撃のせいか、彼の呼吸が一瞬止まったが、失神しているだけで、心臓は動いていた。


「低い場所か・・・・」

 アインはタリスマンを肩に乗せると、顎に手を乗せて何か考え込んでいた。

(くそ、階段を降りるべきではなかったか。おかげで、アポカリプスが使えない。しかし、この階段を一歩でも上がれば、奴の位置は私よりも低くなる)

 タレスは左足を後方に出して、階段の一段に上ろうとした。

「動くんじゃねえ」

 アインは叫ぶと、タリスマンを右拳の甲に乗せて、タレスの顔面を思い切り殴り付けた。

「ぐはああああ」

 タレスは唾液を吐きながら、そのまま背後の階段に後頭部を強打した。そしてその階段には、彼の血液がたっぷりと付着したのだった。


「どうした。お前、大したことないようだな」

「貴様、私を愚弄したな」

 タレスは床に唾を吐き捨てると、倒れたまま状態から、跳躍して、一気に階段のてっぺんにまで上った。そしてアポカリプスを出現させ、それで空を切った。

「はあ・・・・はあ・・・・」

 タレスは頭部から流れる血を気にしながら、アインに向かって、アポカリプスの剣先を向けた。その瞬間、アインはその場で、真上に向かって大きく跳ねた。

「何だ?」

 タレスはポカンと不思議そうに口を開けていたが、すぐにアインの真意に気付いた。実は、この小屋には服を掛けるためのフックがいくつか設置してあり、その中には、タレスのいる位置と、全く同じ高さにあるフックも存在していたのだ。


 アインは小屋の中で一番高い位置にあるフックに捕まると、手の平に突起物、例えるならば、大きな指にできるタコのような物を作って、それをフックに引っ掛けたのだった。

「貴様、そんな付け焼刃の策で、この私を倒せるとでも思っているのか」

「悪いけど、もう勝負は決しているんだぜ。さっき、あんたの顔面を殴った時点でな」

 アインは得意気に笑うと、そのまま床に着地した。

「馬鹿な。自ら攻撃を受けに来るとは」

「じゃあ、撃ってみなよ」

「何だと・・・・?」

 タレスはアポカリプスをアインに向けようとした。しかし何故だか体が動かない。タレスはそのまま白目を剝くと、背中から後ろに倒れてしまった。


「殴ったついでに、タリスマンで、お前の脳内に血液の塊を造って置いた。血液の流れが止まって、ようやく効いてきたらしいな」

 アインは、倒れているソルガを抱えて、ボロい小屋から脱出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ