危険な者達
ファムは煉獄の中に入ると、壁に背を付けて、周りに目を配りながら、少しずつ煉獄の奥へと足を踏み入れて行った。しばらく進むと、細長い廊下に出た。正面には、監獄には似つかわしくない、緑色の髪をした少女が立っていた。
「どうしたのよオリジン・・・・」
「しっ、静かに」
緑色の髪の少女オリジンの背後にいる、青髪の少女は、突然立ち止まったオリジンを心配そうに見つめていた。
「君は、こんな牢獄で何をしているんだ?」
ファムは剣を収めると、何の警戒心も抱かずに、オリジンの元に近付いた。対するオリジンは、青髪の少女を、さらに自分の背後へと押し込めると、そのままファムを見たまま、後ろに歩いた。
「おい、何処に行く?」
「面会よ。ただの・・・・」
オリジンは額に汗一つ掻いていなかった。しかし明らかに焦燥を抱いていた。
(ここで、ファムに遭遇するとはな。今、彼女を始末できるほどの余裕は無い。しかし待て。今の彼女は油断している。一撃で仕留められる可能性もあるか・・・・)
オリジンが拳に力を込めると、それを察したのか、青髪の少女が、その拳を小さな手で握った。そして彼女に耳打ちした。
「どうやら、ファムと遭遇したみたいね。ここは引くわよ」
「しかし、これはチャンスでもある・・・・」
「静かに。聞こえちゃうわ。こんな時のために、敢えて結晶化しないでおいた神獣と、神獣使いがいるのよ。それをさっき、煉獄内に放ったわ。彼女の始末には、連中に任せましょう」
オリジンはそれでも納得しなかったので、少女はさらに付け加えて説明した。
「本来なら、少しでも多くの神獣を結晶にして、そこから魔力を抽出したいのよ。これからの大仕事のためには、少しでも多くの魔力が欲しい。でも、その命の次に大切な魔力をみすみす逃してまで、私はその神獣を結晶化しなかったの。つまり、それだけ強い神獣なのよ」
少女の説得にオリジンはついに折れた。そして、そのままファムと向かい合いになったまま、突き当たりを曲がって、彼女の前から姿を消した。
「何だ、今のは・・・・?」
ファムは決まり悪そうに髪を掻くと、自身も廊下の突き当たりを曲がった。すると、今度は広間に出た。そこは先程までの場所とは違って、天井はガラス張りで、外の青空が良く見えた。そして床も壁も全て白一色で、ここが監獄であることを忘れさせるほどに、清潔感のある空間であった。
広間の中央には、そんな清潔感のある場所には相応しくない、焦げ茶色の泥が巻かれていた。まるで水たまりのように、円形の泥は、ブクブクと泡立っていた。
「何だ?」
沼の中央には、髭面の中年の男が立っていた。そしてファムの方を見ると、ニヤリと笑った。その口には前歯が無かった。




