煉獄へ・・・・
アインは童心に戻って、フカフカのベッドの上で、まるでトランポリンに乗っているかのように、ピョンピョンと楽しそうに跳ねていた。
「こんなに快適な牢獄なら、後10年はいられるぜ」
「無期懲役よ。私達・・・・」
アンジェリカは椅子に座り読書をしながら、アインにとって、いや寧ろ二人にとって耳痛い言葉を投げかけた。するとアインの顔が見る見るうちに不機嫌になっていった。
「分かってんだよ。しかもよ、何で植物の出た部屋なんだよ。別のもっと豪華な部屋をよこせよな」
アイン達が新たに入った部屋は、確かに約束通りのフカフカベッドと、椅子、そして見晴らしの良い窓が付いていたが、床には穴が開いているし、植物の葉が床に散らばっており、気味が悪かった。
「ところでファムは?」
「・・・・」
アンジェリカはアインを無視して、読書を再開すると、本を上からアインに奪われた。
「ねえ、返してよ」
「ダメだ。俺の質問に答えろ」
「あそこ・・・・」
アンジェリカはテーブルに置かれている、一枚の紙を指した。アインはそれを慌てて取ると、書かれている文字を見て驚いた。
「おい、マジかよ・・・・」
「うん、朝起きたら既にいなかった。それで手紙だけ一枚ここに」
「煉獄に行って来るので、遅くなりますってな。遅くなるどころか、永遠に帰って来れないんじゃないか」
「でも、今頃はもう到着してるよ」
「そうだな。だけどよ、何か気になるよな。俺らも行くか?」
煉獄行きを猛反対していたアインらしくない発言に、アンジェリカは猫のように、瞳を三日月の形にして、意地悪く笑った。
「行っても見殺しにする気満々だったくせに。ひょっとして、ファムのことが好きなのかな?」
「馬鹿か。違うし」
アインの真っ赤な顔を見て、アンジェリカは納得した。自分の推測は当たると得意になったのだ。
「で、どうする?」
「少し怖いけど、ファムは仲間だしね。私も行っちゃうよ」
「決まりだな」
二人はそそくさと部屋を出ると、別館を出て監獄へと向かった。
二人が別館から出た頃、ファムはようやく煉獄の扉に手をかけていたところだった。
(わざわざ無実でここに来たんだ。もう覚悟はできている)
ファムは鉄の扉を後ろに引いて、サッと部屋の中に入った。
「監獄・・・・」
ファムは目の前にある看板を読んだ。どうやらここが監獄で正解らしい。屋根の近くには、無数の鉄パイプが繋がっており、部屋内には蒸気のようなものが吹き荒れていて、とにかく蒸し暑かった。まるで何処かの工場のように、石炭の燃えている音やら、カンカンと鉄を打ちつける音で、耳がおかしくなりそうだった。
「待っててね。マロ、そしてマロのお父さん」
ファムは煉獄の奥へと足を踏み入れた。




