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prologue

「異世界《デファルド》の夢と希望にあふれた諸君たちよ。隣国に打ち勝ち、栄光を掴め!」

「アウグスト」

「ルナ王国の新しい未来のために!」

「アウグスト」

「今、飛び立て!」

「アウグスト!」




どうして、私なんかが徴収されんのよ――


リイはそう思いながら「アウグスト」と呟く。

目の先にいる20代ぐらいの男は教えを説くように、壇上で手を広げている。その下には何万人もの兵隊が声を揃えている。



「リイ様、ちゃんと式には臨んで下さいっ」

リイが呆れているのがわかったのだろう。女官のひとりであるカトリーヌがリイに忠告する。リイはカトリーヌを少し睨むと、

「キャットは黙ってて。あんたただの女官でしょ?」

と悪態をついた。キャットとはカトリーヌのあだ名。カトリーヌを英語にするとCatherineになる。これの最初の三文字でキャットと呼んでいる。猫のように、にゃあにゃあ五月蝿い女官という意味も含んでいるのはリイだけの秘密だ。

「そうですけど…。アウグスト様に怒られますよ?」

壇上の男に目を向ける。この男がルナ王国の若き指導者。通称・アウグスト様だ。アウグスト、というのこのルナ王国で指導者の称号で、男の実名がロワというわけではない。ちなみに実名はクロード・ギュスト。

「大丈夫よ、クロードは。それよりレオは?」

「レオン様ならエントランスでお待ちですよ。向かわれますか?」

「そうするわ。平和式典なんてつまんないし」

「だからリイ様っ…」

カトリーヌの注意も虚しく、リイは椅子から立ち上がるとドアに向かって歩き出した。そしてドアを大事そうに締めるとひとりだけの世界になった。



平和式典、なんて名称だけど実際そんなものじゃないわよ。どうせ庶民の兵隊を使わせるだけ…。それがデファルドのやり方じゃない。平和なんかじゃない…――


リイはドアに背を預けると、そのままずるずるとしゃがりこんだ。




その時、誰かの声が聞こえた気がしてリイはあたりを見渡した。

しかし人間なんて見当たらない。

「どこ…?どこに居るのよ…?」

そう呟いても、自分の声が返ってくるだけだ。それでもリイはあの声を忘れらない。絶対に聞いたのだ。リイを呼ぶ声を。


「挑戦状なら…私が受けて立つわ…!地球界の水樹中学校。そこに行けばいいんでしょ?」

リイは力強く立ちあがると拳を握りしめた。

すると前のほうから男性が歩いてきた。長身で足の長く顔もなかなかのイケメンだろう。

「レオっっ!」

リイが叫ぶと男性は急ぎ足でこちらに向かってきた。

「私ね、決めたの!地球界に行く。レオも来てくれるでしょ?」

「はぁ?リイ、正気ですか!?」

「決まってんでしょ。それに、今地球のこと調べてるって聞いたけど?地球界に行く理由は十分あるわよね?」

そう尋ねるとレオンは「仕方ないですね…」と呟いた。いつもリイは強引だ。やると決めたらやり遂げる精神は王家の血を継いでいるだけあるなぁ、とレオンは少し感心した。

「じゃあ、行きましょう。地球界に」

「ええ」



リイが頷いたと共にふたりの体が宙を舞った。

レオンの手とリイの手が繋がり、不思議な重力によってガラスが割れるような音と共に、煙がふたりをつつんだ。





そして、煙が消える頃にはふたりの姿は無かった。







その時、誰かの声が聞こえた気がしてリイはあたりを見渡した。

しかし人間なんて見当たらない。

「どこ…?どこに居るのよ…?」

そう呟いても、自分の声が返ってくるだけだ。それでもリイはあの声を忘れらない。絶対に聞いたのだ。リイを呼ぶ声を。


「挑戦状なら…私が受けて立つわ…!地球界の水樹中学校。そこに行けばいいんでしょ?」

リイは力強く立ちあがると拳を握りしめた。

すると前のほうから男性が歩いてきた。長身で足の長く顔もなかなかのイケメンだろう。

「レオっっ!」

リイが叫ぶと男性は急ぎ足でこちらに向かってきた。

「私ね、決めたの!地球界に行く。レオも来てくれるでしょ?」

「はぁ?リイ、正気ですか!?」

「決まってんでしょ。それに、今地球のこと調べてるって聞いたけど?地球界に行く理由は十分あるわよね?」

そう尋ねるとレオンは「仕方ないですね…」と呟いた。いつもリイは強引だ。やると決めたらやり遂げる精神は王家の血を継いでいるだけあるなぁ、とレオンは少し感心した。

「じゃあ、行きましょう。地球界に」

「ええ」



リイが頷いたと共にふたりの体が宙を舞った。

レオンの手とリイの手が繋がり、不思議な重力によってガラスが割れるような音と共に、煙がふたりをつつんだ。





そして、煙が消える頃にはふたりの姿は無かった。






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