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「確かに私は病弱な幼馴染ですが、貴女そんなに勉強サボってて、本当に侯爵夫人になれるとでも?」

作者: 井上さん
掲載日:2026/08/15

名前を借りました


フィクションです

 婚約者ジーメンスとのデートの日、ジーメンスの病弱な幼馴染ラジアンから『熱が出たから見舞いに来てほしい』と、使いの者が呼びに来た。


 これはよくある、病弱と偽り婚約者を狙ってしょっちゅう呼び出すやつでは!?


 私ファラドの婚約者を狙う不届き者め!撃退してやるわ!




 私は、お茶会に行ったり、友人と遊びに行ったりが忙しくて、学園の成績は下の方。


 でも、私は侯爵家子息ジーメンスの婚約者。夫人にさえなってしまえば、どうにでもなるわ。



幼馴染の分際で、私の婚約者を呼び出すなんて…思い知らせてやるんだから!







 私は、ジーメンスの家のキルヒホッフ家の夜会に、婚約者として招待された。


そこには、憎き病弱な幼馴染がいた。



「貴女!いつも私の婚約者を病弱だからと嘘ついて呼び出して!許さないわ!」


 私は先制攻撃を開始した。


「確かに私は病弱な幼馴染ですが、貴女そんなに勉強サボってて、本当に侯爵夫人になれるとでも?」


 病弱な幼馴染が言った。


「え?」


 何を言っているの?


「私はジーメンス様に治癒してもらっていました。普通に患者なんですが、貴女は、私に治癒を受けずに死ねと仰るのですか?」


 病弱な幼馴染がまた言った。


「え?」


 何の事?


「ジーメンス様が治癒師なのをご存知無い?」


「え?」


 戸惑っていると、横から声がした。


「貴女、学園の成績も悪いし、遊んでばかりだけど、ジーメンスの婚約者ならきちんと侯爵家に来て勉強なさいよ」


 見知らぬ女性がいた。


「貴女誰よ!」


「ジーメンスの姉ジュールだけど」


「え?」


 確か婚約者の姉は、嫁に行ったとかで、婚約の挨拶の時には会っていない。


「貴女が遊んでばかりだから、代わりにラジアンを教育していたわ。貴女との婚約は破棄よ」


 ジュールが言った。


「は?」


「その成績で侯爵夫人は無理よ。ラジアンは、ベッドの上で勉強していたわよ。貴女は健康で学園にも通っているのに、成績が悪いってどういう事かしらね。侯爵家に嫁に来る意味を分かっているのかしら?」


 ジュールから呆れたように言われた。


「そんな…今からやれば…」


 意味って何だろう?


「あと半年で、その空っぽの頭に詰め込んでも、基礎ができてないから無理よねぇ…」


「ジーメンス様は優秀だから…」


 私は、夫人だし…


「ジーメンスが優秀でも、侯爵夫人の仕事はできないわね」


「今から間に合わせます!」


 侯爵夫人の仕事って何だろう…?

貴族の夫人は、沢山の豪華なドレスや宝石に囲まれて、お茶会や夜会を楽しむだけでしょ?簡単よ。


「性格はすぐには変わらないわ。嫁に来ても、遊びほうけていたら困るから、貴女はお断りよ」


「そんな!ジーメンス様!」


 私はジーメンスに助けを求めた。

婚約者なんだから私を守りなさいよ!


「お茶会のたびに、私が『病弱と嘘ついた幼馴染の見舞いに行く偽善者』だと周りに言っていたのだろう?」


 それまで黙っていたジーメンスが言った。


「どうして!?」


 何で知ってるの!?


「病弱は本当だし、私は治癒していた、と噂を聞いた全ての人に説明して回ったからね」


「え?」


「嘘の噂を流すなんて最悪だ。嫁に来るはずの侯爵家を貶めるなんて、頭がおかしいのかな?」


「そ…そんなつもりは…」


 本当の事を言っただけだもん。


「婚約破棄したかったから、そんな嘘の噂を流したんだろう?これで願いが叶ったね」


「違います!」


「侯爵家に無礼を働いたんだ…既に婚約破棄の書類は提出したよ」


「なぜ!?私は何も聞いてないわ!」


 私は驚いた。婚約破棄!?


「当主のサインさえあれば、手続きは完了だからね」


「そんな…!」


 私は愕然とした。私は悪くないのに、婚約破棄?


「これ以上醜態を晒すな!」


 両親にドナドナされて、私は去るしかなかった。




 私は、両親から叱られ、領地の邸で暮らし、一生領地から出る事が出来なくなった。

大好きなお茶会に行けないなんて最悪よ!!




 ジーメンスは、病弱な幼馴染と結婚したらしい。


 病弱な幼馴染に、婚約者を奪われた!

やっぱりそれが狙いだったんじゃない!!!


復讐したかったが、領地から出られない。



一生恨んでやる!!!!!






 全く反省していないどころか、何も悪くないと思っている元婚約者は、私ジーメンスと幼馴染のラジアンを恨んでいるらしい。


 何故知っているかというと、我が家からも監視をつけているからだ。


…現在の婚約者であるラジアンを傷付けられたら嫌だから。



 元婚約者の事は大切にしていたつもりだ。


手紙や贈り物も送ったし、エスコートもした。


 私が治癒師なのを知っていると思っていたから、患者の治癒に行く、と必ず言ったのに、ただの見舞いだと思われていたなんて…


人の話を聞いてくれよ…


 普通に考えて、婚約者より幼馴染を優先する訳が無いのだ。

家同士の契約なのだから。


 自分を、小説の主人公だとでも思っていたのだろう。


 元婚約者が行ったお茶会で毎回『病弱と嘘ついた幼馴染の見舞いに行く偽善者』と私を侮辱していたと友人から言われた時は、本当に驚いた。


 元婚約者の両親にも、私が治癒師なのと、嘘の噂を流している事を報告したが、一向に改善されなかった。



 婚約破棄は、当然の帰結だろう。


よく、侮辱した私の嫁に来れるな。



 侯爵家に来て夫人教育を受けろと何度も手紙を送ったが、一度も来なかった。


嫁に来る気が無いのだと思われても仕方ない。



 それに、学園の成績も悪いし、しょっちゅう遊び回って、ドレスや宝石を買い漁っていた。


金遣いが荒い女に、侯爵夫人は務まらない。


 領民の税なのだ。経済は回さないといけないが、ドレスや宝石だけ買えば良いというものでもない。


それが分からないなら、侯爵夫人は無理だ。



 私も、両親もそう判断し、婚約破棄をした。



元婚約者の家から慰謝料ももらった。


 嘘の噂を流したのに、娘に何の対処もしなかったからだ。

きちんと教育しなかったから、いけないのだ。




 我がキルヒホッフ家から睨まれて、元婚約者の家も肩身の狭い思いをしているらしい。


娘の教育に失敗したのだから、当然だ。






 それに引き換え…


ラジアンは、ちょうど出たばかりの治療薬が効いて、体調が良くなっていった。


それからラジアンは子爵家なので、身分の釣り合いが取れるからと婚約した。


 姉上が、見舞いがてらマナー教育や夫人教育をしてくれていたようで、落ちた体力を戻しがてら、我が邸に勉強に来ている。


 学園には通っていないが、学園卒業程度の学力になるように、ずっと勉強していた。


 治癒が終わった後に「分からない所を教えて」と言われて「寝なさい」と注意したほどだ。



今、元婚約者の時とは違って、穏やかな日々を送っている。



 噂を訂正するのも大変だったのだ。


侯爵家に嫁入りする意味が分からない者に、妻は務まらない。



 ラジアンは、きちんと妻の務めと責任を果たせるように、と努力している。

頑張り過ぎて体調を崩さないか心配なくらいだ。



「ラジアンが婚約者になってくれて良かったよ」


「ラジアンが治癒してくれていたお陰よ。ありがとう」


 可愛い事を言うラジアンを、私はしっかりと抱きしめた。



読んでいただきありがとうございます

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