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カオスギャグ小説【地球滅亡まで童貞の俺はキスをする】

作者: 虫松
掲載日:2026/05/07

地球滅亡まで、あと5分。


スマホの通知が鳴り止まない。

「隕石衝突確定」

「人類終了」

「祈れ」

うるせえ。


俺はただ一つの事実に気づく。

一度も異性とキス、してねえ。


56年、いや何年でもいい。

とにかく一度も、唇と唇を重ねたことがない。


終わるのに?

このまま?

何も知らずに?

ふざけんな。


ドアを蹴破るように飛び出す。


外。


挿絵(By みてみん)


世界は壊れていた。

泣き崩れる女。

神に縋る男。

札束を空にばら撒く狂人。

キスしてるカップル。

キス。キス。キス。

視界が「キス」で埋まる。

あと4分。

走る。

探す。

焦る。

いない。



女が、いない。

まともな女は外に出ていない。

賢いやつほど、もう諦めてる。


クソが。


あと3分。

思考が壊れる。

倫理?常識?

そんなもん、隕石が全部ぶっ壊す。

俺は一軒の戸建てに目をつける。


ドンッ!!


蹴破る。

玄関に靴のまま上がる。

「キスさせろォ!!」


自分でも何を言ってるかわからない。

だが止まらない。

廊下、暗い。

静かすぎる。

死んだみたいだ。

寝室のドアを開ける。

ギィィ…

いた。

布団の上。

影。

「キスさせろーーー!!」

飛び込む。

ブチュ。

――冷たい。

――柔らかい。

――違和感。


「……ん?」


口の中で何かが外れる。

コトッ。

舌の上。

固い。

――歯。

入れ歯。

「……は?」

顔を見る。

深い皺。

開いたままの口。

焦点の合っていない目。

もう、死んでいる。

「……ババア……」

遅い。

気づくのが、全部遅い。


「……ば、ババア?」


臭い。


歯臭と薬と死の匂い。

「おええええええええええええ!!」

あと10秒。

空が白くなる。

光。

全てが焼ける。


あと5秒。


世界が白く塗りつぶされる。

痛みも、屈辱も、全部消える。

最後に残ったのは、

柔らかくも温かくもなかった、

あのシワシワ感触。

――これが、キスかよ。

ピカッ

ドォォォォォォン


巨大な隕石が落ちてきて巨大な津波に呑まれ

人類はほぼ滅んだ。





かつて地球と呼ばれたそれは、

もはや人類のものではない。

支配者は、巨大なイカ

最初は、誰も信じなかった。

「イカが陸に上がる?」

「歩く?」

「人間を捕食?」


だが、事実はいつもヌルヌルしている。


ぬめり。

吸盤。

知性。


イカは“考えていた”。

海の底で。

ずっと。

そして地面うぃ歩いた。


 ぬちょ

 ぬちょ

足を“脚”として使い、


地面に張り付き、

都市へ。


「い、イカん……」

遅い。

ビルの壁に張り付く黒い影。


窓から侵入。

人間を、包む。

「イカすー」

意味不明の発声。

だが、知性を感じる。


「やらなイカ?」

それは、問いかけだったのか。


命乞いだったのか。

それとも――

捕食の前の、儀式か。


人類は、抵抗した。

銃。

爆弾。

核。


だがイカは学習した。

避ける。

隠れる。

増える。


そして、食う。


空は、墨で染まった。

海は、静かになった。

街は、ぬめった。


――人類、終了。

だが。

滅亡の直前。

人間は何をしていたのか。


戦っていたか?

祈っていたか?

違う。

記録が残っている。

焼け焦げた石板。


そこに刻まれていたのは

「キスさせろ」

「キス」

「キス」

「キス」

無数の“キス”という文字。


焦げ付き、歪み、

だが確かに残っている。


誰かが、必死に刻んだのだ。

滅びの直前に。

はそれを読む。

理解する。

学習する。


「……イカ?」

やがて。


イカたちは、その石板を

【愛の石】と名付けた。

そして今日も。

たちは、人間の真似をする。

唇はない。

だが、吸盤を重ねる。

ぬちょ。

ぬちょ。

それを――

「キス」と呼びながら。


(人類は、もう誰もいない)


END

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