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アニマル  作者: Aju


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42 一騎打ち

 剛田はゆっくりとドスを右手から左手に持ち替える。

 まだ抜かない。


 A66=リュウジもテーブルの上にあったダガーを手にとった。目がいつもにも増して鋭い。

 ゆったりした動きで鞘から抜いて構える。

 リュウジが最初から得物を取るのは珍しい。それだけ剛田のことを高く値踏みしたのだろう。


 剛田はドスの(つか)に右手をかけるが、まだ抜かない。

 ドスを鞘ごと水平に構えたままである。


 ぴい———ん。と空気が張りつめ、時間が止まったかのように何も動かない。


 先に動いたのはリュウジの方だった。

「ケェッ!」という怪鳥の叫びのような声と共に、一気に剛田との間合いを詰める。

 リュウジのナイフの切っ先が剛田の鼻をかすめる。

 目を狙ったようだが、5ミリ足りない。


 スウェーではない。

 剛田が足さばきで間合いを外したのである。

 次の瞬間、剛田のドスが鞘から抜かれざま上に跳ね上げられ、リュウジの手首を切り落とした。


 ように見えたが、リュウジは肘から先を曲げて剛田の居合いをかわしている。

 そのまま30センチも腕が伸びたかのように、リュウジのダガーが剛田の脳天に振り下ろされた。

 幼少期から武術を習ったリュウジの足さばきも素人のものではない。


 だがダガーが振り下ろされた時、剛田の頭どころか体もそこにはなかった。

 40センチも横にずれて、リュウジのダガーをかわしている。

 かわしざまに剛田は踏み込んで、ドスでリュウジの喉を突いた。


 リュウジが体をひねってそれをかわしながら、その回転を利用して剛田の顎に左アッパーを繰り出す。

 剛田はそれを鼻先をかすめさせただけでかろうじてかわした。


 速い。

 常人の目には速すぎて、何が起きているのかさえ見えない。


 入り口で銃を構えて半澤組の組員たちを押さえている龍神帮の2人は、膝から崩れ落ちそうになるのを(こら)えて脂汗を流していた。

 戦っている2人の殺気の圧力が凄まじいのである。


 その影響は龍神帮の2人だけでなく、半澤組の組員たちにまで及んでいた。

 良郎などは最後尾にいるにもかかわらず、立っているのがやっと‥‥という感じだった。

 ただ2人、恩田と阿久根だけが平然と玉座の間での戦いを眺めている。阿久根などは、面白いものでも観るように薄ら笑いさえ浮かべていた。


 「気」というものは、どういうものなのだろう?

 映像などでは伝わらない。

 命をやり取りする武人同士の戦いの場にいる者だけが感じとることのできる異様なエネルギーである。

 矢をつがえずに弓を射て()だけで飛ぶ鳥を落としたという武人の話も伝わっているが、どうも実際に在るものであるらしい。

 互いに相手を殺そうとして戦う男2人の放つ()の余波を受けて、耐えられる強さを持たない者たちは体調さえ崩してしまうようだった。


 ときどき(やいば)同士がぶつかる金属音が聞こえるが、リュウジの動きも剛田の動きも速すぎて常人には見えない。

 おそらく見えているのは阿久根と、かろうじて恩田の2人だけだろう。


 龍神帮のドアボーイ2人は半澤組の方を見ているからそもそもバケモノ2人の戦いは見えていないが、たとえ向きを逆さにして見ていたとしても技そのものは見えはしないだろう。


 恩田はそれをやや微笑ましく見ている。

 かわいいものだ。

 おそらく、たまたま当番で最上階のガードにいたのだろうが、恩田か阿久根が突っ込んでいったら阻止するだけの力はあるまい。


 ここではリュウジだけが突出している。

 他にもそこそこ使える者はいたかもしれないが、おそらく西田が()()を使って捕縛してしまったのだろう。

 龍神城には剛田や阿久根に敵するような者はリュウジしかいなかった。


 戦いは剛田がやや押されているように見える。

 あれほどの動きをしていながら、リュウジに疲労の色が見えない。


「阿久根。今入ったら剛田が怒るだろうが、本当に危なくなったら助っ人に入れ。あいつを死なせるわけにはいかん。」

 恩田がうずうずした表情で戦いを見ている阿久根の背後から言った。

「へい。承知しやした。」

 阿久根が嬉しそうに舌なめずりをする。


 その時だった。

「おい、なんだこりゃあ?」

 聞き慣れた男の声がして、階段室からバラバラと特殊部隊の隊員が現れ銃を構えてフロアに展開した。


「えれぇ殺気だな、おい。」

 西田がタバコを床に投げ捨て、ぎゅっと踏みつぶした。

 この男も修羅場を何度もくぐっているせいか、これほどの殺気にもあてられないらしい。

「おい! 銃を捨てろおまえら。SATは警告射撃はせんぞ?」


「あ〜。拾ったものをいつまでも持っていないで、捨てなさい。」

 恩田がしれっとした顔で言う。

 半澤組の組員たちはバラバラと銃を捨てた。少なくとも手に持っているものは。

 最初に示し合わせた行動である。

 阿久根もカラシニコフを床に放り投げた。ただし、腹巻きの中にはドスを隠し持っている。恩田も愛用の拳銃はちゃっかりポケットに入れている。


 そんな半澤組の行動を見て、龍神帮のドアボーイ2人が迷いの表情を浮かべた。

 捨てるべきか‥‥?


「銃を捨てるな!」

 玉座の間から激しい叱責の声が飛んだ。

 リュウジである。

 剛田と命懸けの戦いをしていながら、周囲の様子もちゃんと見ている。


 龍神帮の2人に、ビリッとした気合いが入った。これもリュウジが放った()の一種なのであろう。

 2人が別人のようにシャキッとして銃を構え直す。


 パパパッ!


 SATが発砲した。


「伏せろ!」

 恩田が叫んで、半澤組の組員たちが床に伏せる。


 パパパパッ!


 龍神帮の2人も反撃して銃撃戦になった。



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