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破滅フラグ回避しまくったら、冷徹チートで無双してました!  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第29話 聖域の罠

 吹雪がやみ、修道院の奥に口を開けた巨大な円孔。

 そこからは、青白い光と、祈りの声が絶えず溢れ出していた。

 氷を踏み割りながら進むアレンたちの視界に、それは現れた。


「……ここが、“祈りの階段”か」


 光の螺旋。

 地上から地下へと延びる階段は、まるで神の筆跡のように輝き、一段ごとに“聖歌”が鳴り響いた。


「音が、空間を……変えてる?」

リリィが眉をひそめた。

 彼女の魔力感知が、波紋のように揺れる。


「これは魔法じゃない。“祈祷言語”。

 祈りそのものが構造を上書きしてるのよ。」


「祈りで空間を書き換える……」

トレヴァーが呟く。


「信仰が物理法則に勝つなんて、神話の域ですね。」


「神話上等だ。」

アレンは短く言い、剣を抜いた。

 刃が青白い光を反射する。


「なら、俺たちの“祈り”で上書きする。――行くぞ。」


 五人は足を踏み出す。

 その瞬間、階段全体が低く鳴動した。

 最初の異変は、十段ほど降りたときだった。

 視界の端に、同じ彫刻が二度見えた。

 さらに三段進むと、また同じ。

――同じ光景が、繰り返されている。


「……これ、さっきも見たわね。」

リリィの声が鋭くなった。


「上っても下っても同じ場所に戻る……無限螺旋ね。」

カミラが冷静に言う。


「敵は“幻覚”じゃない。祈りで空間そのものを循環させてる。」


ガイアが舌打ちした。

「ちっ、面倒くせぇ。“現実”を殴れねぇのかよ!」


 その瞬間、空気がひずむ。

 祈りの声――いや、数百人分の聖歌が一斉に鳴り響いた。

 白い衣を纏った“巡礼者”たちが現れる。

 光を宿す人影――祈りの幻像、いや“信仰そのもの”が実体化している。


アレンが剣を構えた。

「――来るぞ!」


 光の槍が飛ぶ。

 アレンが受け止めた瞬間、刃が震える。

――重い。

 まるで“信念”そのものが圧し掛かってくるようだ。


「これが、“祈りの質量”か……!」


カミラが叫ぶ。

「聴覚を遮断して! 祈りの言葉が、意識を書き換える!」


 リリィが即座に反応し、音遮断の結界を張る。

 だがそれでも、胸の奥に“信じろ”という声が響いてくる。


トレヴァー:「祈りが命令になってる……“信仰の強制”か。」


アレン:「なら――断ち切る!」


 アレンは剣を地面に突き立てた。

 刃が光を放ち、空間に走る“構文線”を一閃で断つ。


「――【蒼天裂斬】!」


 空間が音を立てて裂け、幻像が霧散した。

 周囲の聖歌も途絶え、わずかに静寂が戻る。


「……はぁ……。やっぱ、現実の方が落ち着く。」

ガイアが肩を回す。


「気を抜くな。祈りは形を変えて、何度でも来る。」

アレンは微笑した。


 階段の下層へ降りると、空気の密度が変わった。

 白い霧が流れ、祈りの声が重層化する。


トレヴァー:「……感じる。これは、死者の祈りだ。」


 霧の中から現れたのは、百を超える“亡霊”。

 半透明の身体、口だけが動いている。

 彼らは一斉に聖句を唱えた。


「信じる者は救われる。疑う者は凍てつけ。」


アレン:「――来たな。」


 カミラが弓を構えた。

 矢が放たれ、霊体の一体を貫く。

 だが、光が再生する。

「……効かない?!」


リリィ:「この空間の“支配権”は彼らの祈りにある! 攻撃しても再生するのよ!」


アレン:「なら、支配を奪い返す!」


 リリィとアレンが背中合わせになる。

 アレンの剣が光を帯び、リリィが詠唱を始める。


「――聖なる言葉を、逆に――」

「――信仰の構文、上書きする!」


 二人の声が重なった瞬間、光が逆流する。


『【聖断詠唱セイクリッド・ブレイク】!』


 祈りが反転し、白い光が黒へと変わる。

 亡霊たちの聖句が悲鳴に変わり、次々と光粒子となって消えていった。


トレヴァーが静かに目を閉じる。

「まるで……祈りが、ようやく解放されたみたい。」


ガイア:「解放、ねぇ……。やっぱ祈りってのは、生半可じゃねぇな。」


カミラ:「これで二百体。……けど、下からまた来るわ。」


アレン:「なら、片っ端から救ってやる。祈りごと、な。」



 戦闘後、リリィが壁に刻まれた古代文字を調べていた。

 壁には、祈祷式の構文がびっしりと刻まれている。


「……これは、“聖堂技術”の原型ね。

 でも、構文の一部が――“クレイモア家”の闇祈式と一致してる?」


カミラ:「つまり、あいつらの“闇祈術”って……元はここから?」


トレヴァー:「聖と闇が同じ源だとしたら……“祈り”って何なんでしょう?」


 アレンは壁の文字をなぞりながら言った。

「信じることそのものが、呪いにも救いにもなる……そんなもんだろ。」


リリィが静かに首を振る。

「祈りが……人を縛るなんて、私は嫌。」


「でもな、リリィ。」

アレンが穏やかに笑う。


「祈りを信じるから、俺たちは戦えるんだ。

 ――祈りを奪われたまま、終われない。」


 彼の言葉に、リリィの瞳が揺れる。

 彼女は小さく息をつき、

「……そうね。なら、取り戻しましょう。私たちの“祈り”を。」


 その時、階段の下から“響き”が上がった。

 まるで誰かが呼んでいるような声。


「――あるじは……まだ……」


 最深部へ続く螺旋の中央に、巨大な光の紋章が浮かび上がった。

 それはまるで、聖印が生きているかのように回転している。


カミラが光を当てて確認する。

「……これ、ルシアンの指輪と同じ紋章よ。」


トレヴァー:「ルシアンが、この祈祷構造を知っていたの……?

 いや、クレイモア家が“転用”したのでしょう。」


リリィ:「“闇祈あんき”は……聖堂祈祷の裏返し。

 祈りを裏返せば、闇になる。……皮肉ね。」


 アレンが剣を構えた。

 刃先が紋章に触れると、階段の底が震え、青い光が吹き上がる。


「――開いたな。」


 吹き上がる光の柱。

 祈りの声が途絶え、階段が沈黙に包まれる。


カミラ:「……下が“儀式の間”ね。」


アレン:「ああ。“闇祈”の本体がある。」


リリィ:「……そして、エリアスも。」


アレンは頷き、静かに言った。

「行こう。――祈りの果てへ。」


 階段の下で、青い光が波のように揺れた。

 その中心に、人影が一瞬見えた気がした。


 風が止み、聖歌が静寂に変わる。

 祈りの階段は、その“声”を歓迎するように輝いた。

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