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5話-②
「ナイス。柊月」
犬っころの音と気配が独特だったため、位置が掴みづらかったが....なるほど。ギリ射程範囲内。
『傷』が使えそうだ。
懐から手探りで、他のナイフと比べて小ぶりの刃に触れて、取り出す。
こいつは、私の持つ斬撃の中で一番速くて斬れ味の悪い刃。皮膚一枚斬れる程度。
「死狂凶器No.零零・『傷』」
──けれど、これは一撃に限った話。何撃にも重ねて撃ち込めば、また話は違ってくる。
例えば、小雨のように降り注げば、アスファルトも粉々に粉砕できるだろう──
「“傷殺の雨”」
──百撃。それが私の図った目安──
ズギゥウ。ズギゥウ。ズギゥウ。
百撃が、音を立てる。
百撃が、降る。
感じる。世界のこの今いる空間が、少しずつ揺らぐのを、感じる。
手先に感覚を集中させる。
下から上へ。上から下へ。
最小限の動作で、一撃一撃を放つ。
殺さないように、力を加減しながら。
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ちょっとルビ振りすぎました....( °∇^)