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私的な夜  作者: 那須茄子
蠢く蝕死
2/9

1話

 寝ても覚めても、瞳は光を浴びることはない。

 私はいつも真っ暗なままだ。

 

 故に、私はよく分からなくなる。自分がどう生きているのか、見失う。


「..柊月(ひづき)..居る?」

「はい」


 凛とした声色。メイドの柊月の声で、少なからず不安めいたものが消えた。

 ずっと私の側に居てくれたようだが。時の経過が正確には掴めないが、きっとあれから長いこと経ったのだ。


「柊月疲れてない? 座ったら? ずっと立ってるんでしょ?」

「いえ、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」

「でも」

「大丈夫です」


 頑なに譲らない柊月。それ以上、勧めるのも躊躇らわれた。

 私は柊月に問うた。

 

「柊月、私寝てたみたいだけど、いつ起きた?」

「いえ。寝てないですよ、琴巴様。わたくしが本を読み聞かせていても、琴巴様はずっと起きておりました」

「そうなんだ..」


 まさか、そんな盛大な勘違いをするとは。自分という存在が、疑わしく思われる。


 あれほど、夢心地だったはずなのに、私はずっと起きていたのだ。まるで巧妙な叙述トリックに、まんまと引っかかった心持ちがする。


「琴巴様。余り気になさらないで下さい」

「..えぇ、そうよね」


 別に、今に始まったことじゃない。これが私という、程式琴巴の在り方なのだ。何も気にする必要などない。


 ボーン。

 

 下の階で、報せの鐘が鳴る。

 今の私には、その鐘がとても有り難かった。

 虚しい私の心に、やるべき事で埋め合わせ出来るから。


「じゃあ、柊月。()()()()に出掛けようか」







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