神様でもいいから彼女が欲しいと願ったら、女神様が本当に降臨した。
愛があれば、神様と人でも恋愛は成立する!
読んでいただきありがとうございます。
「お願いします。神様でもなんでもいいので可愛い彼女をください」
誰もいない境内。
風に揺られている木々の音だけがする寂しい神社。
そんな中で俺は祈っていた。
可愛い彼女が欲しいと。
そして今日はクリスマス。
信じていた親友たちも「彼女と過ごすから」と俺を裏切り、今頃恋人と楽しんでいるのだろう。
チっ!
結局、こんな夢のような願い事が叶うわけもなく、俺は神社の階段に座り込む。
こうしている今も雪はシンシンと降り続けている。
思えば。
俺は女運がなかったのかもしれない。
幼稚園から高校二年の今日まで、通算97回フラれてきた。
フラれる時のセリフもいつも決まっていて、『なんか違う』だった。
なんか違うってなんだよ。
こんなにフラれている男は全国にもいるかどうか・・・
「はぁ。もしも女神様が出てきたら一生幸せにするのになぁ」
俺はため息とともに、そんな言葉を呟いた。
しかしその呟きは冬の風にさらわれていく。
俺は立ち上がる。
クリスマスなのに神社にいるとか悲しすぎるという結論に至ったからだ。
さぁ。家に帰ってゲームでもしようかな。
そんなことを思った時だった―――
「その言葉。本当ですか?」
どこからか女の声が聞こえたような気がした。
俺はすぐに周囲を見回すがどこにも人はいない。
「気のせいか?」
再び歩き出そうとすると次は空から絶叫が聞こえてきた。
見ると白く輝く何かが落ちてきている。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「!」
ドォン!
さっきまでいた境内の方に落ちたみたいだった。
俺は急いで向かう。
境内に戻った瞬間。俺は息を吸うのを思わず忘れてしまった。
そこにいたのは一人の少女。
髪の色は艶のある金色。
瞳の色はどこまでも深く見えるブルー。
肌はそれを一層強調する白磁の肌。
しかし、何よりも目を引くのはうっすらと頭の上に見える光の輪。
俺と同い年に見えるのにどこか大人な雰囲気のある少女だった。
そして少女と目が合う。
覗き見をしていたみたいで少し居心地が悪い。
「あなたが私を呼んだの?」
「は?」
それは突然の質問だった。
沈黙をぶち破る少女の問い。
俺は突然のことで返答に詰まってしまう。
「だからぁ。あなたが神様でもいいから彼女が欲しいって言ったんでしょ?」
「あっ、ああ」
今だに目の前で起こっていることが理解できない。
今、この娘は『私を呼んだの?』と聞いてきた。
もう答えは一つしかない。
「君は神様なの?」
「だからさっきからそう言ってるじゃない。といっても、元だけどね」
「元?」
「うん。人間の嫁になるってパパに言ったら天界から追放されちゃった」
「ちなみにパパの名前は?」
「(ピー)だよ」
「・・・・・・・」
某有名神様の名前が出たが、皆さんのご想像にお任せします。
でもどうしてそんな有名神様の娘が俺なんかに?
ていうかさっき嫁って言った?
「あの・・・嫁っていうのは?」
「一生幸せにするって言ったのはあなたでしょ?」
「そうでしたね・・・」
まいった。完全にやってしまった。
まさか本当に神様が来るなんて。
しかも嫁として。
「実を言うとね・・・・・・・」
俺があんまりにも困惑しているせいか、少女は語り始めた。
その顔は慈愛で満ち溢れていた。
「私が担当している使命は『運命』なの。神様は一人一人、使命という仕事が課せられている。そして私が『運命』を司る神として最初に担当した人間があなたなの」
「それで。君がここに来たのとどう関係があるんだ?」
「あなた、今まで97回フラれてきたでしょ。それ私のミス。マジでごめん」
「え?」
俺がフラれてきたのは神様のミス?
「その~、初めての仕事だったからちょっとだけ『運命』の調整をミスちゃって・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから心配で心配であなたのことをずっと見守ってたの。そしたら今日、神様でもいいから彼女が欲しいって言ったし。責任を取ろうと思って」
少女の顔を見ると頬が赤く染まっている。
本当は憎むべき相手のはずなのに、どうしてかさっきから胸の音がうるさい。
「あ!でっ、でも誤解しないで。私があなたの嫁になるって言ったのは決して責任からだけではない。私はあなたのさっき言葉に惚れたからここに来たの」
「さっきの言葉?」
「そう。さっきの言葉。人間なんて嘘にまみれた生物だと思っていたけどあなたのさっきの言葉は違ったの。『一生幸せにする』に嘘の欠片もなかった」
もう十分だった。
彼女の言葉の温かみと、顔を見ていれば嘘じゃないことなんてすぐにわかる。
俺の心はもう決まった。
「名前はなんていうの?」
「えっ?アイリスよ」
俺は名前を聞くと、彼女の手を取り片膝を地面についた。
そして彼女のブルーの瞳を見て言う。
「君を一生幸せにさせてくれないか?」
アイリスが息をのんだのがわかる。
俺は思わず目をつぶってしまった。
しかし、すぐに手は握り返される。
「はい。喜んで!」
気づくと、彼女の頭の輪は消えていた。
これでもうアイリスは正真正銘神様ではなくなったのかもしれない。
だけど、そんなのは些細なことだ。
この笑顔を見ればそう思える。
だって―――。
今、俺の目の前にいるのは世界一可愛いお嫁さんなんだから。
完
どうも、読者の方はもう知ってるかもしれませんが、型月とモンストを愛する作家・昊シロウです。この度はこの作品を読んでいただきありがとうございます。この作品は意外と綺麗にまとめることができたかなと思います。
今後の参考のためにも評価とブクマの方お願いします。
それではまた。次の物語で。