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「どうやらここから車は崖下に転落したというわけですね。スピードを上げすぎていたんです」

 たんたんと部下は署長に報告した。


 テレス署長はすっぱい顔になって崖下をのぞきこむ。急斜面の崖が眼下にひろがっている。どうもこういう場面は苦手だ。

 テレス署長は高所恐怖症なのである。


 赤いスポーツカーの車体が、崖下の森の梢に引っかかっている。そのまわりに、無数の紙片が撒き散らされていた。それらを警官たちが回収している。ひとりが紙片を手に、崖をよじ登ってきた。


「全部、証券とか、小切手ばかりです。やつら、現金だけ持ち去ったらしいです」


 わかった、と署長はうなずいた。

 山道でトレーラーの運転手が赤いスポーツカーとすれ違ったと報告してきた。ようやくパンクを修理した署長たちは、おっとりがたなで山道へ急行したのである。

 そこで崖下に転落した車を発見したのだ。

 車にはだれも乗っていない。まわりには袋から取り出した証券類が散乱していた。ブロンド・キャリーの一味は、現金だけよりわけて荷物を軽くして逃走したのだろう。


 ふと署長は視線をあげた。


 遠く、はるかかなたに緑の平原がひろがり、山ふところにいだかれるように、ちまちまとした家が密集している町が見える。

 人口千人ほどの、中規模の田舎町だ。


 ステットンの町……。


 署長はこのあたり全体を管轄していたから、当然この町も所轄にあたりよく知っている。住民の顔、ひとりひとりに顔なじみでもある。いや、知っているどころか署長にとってこの町はある意味鬼門であった。

 なぜならあの町には「大佐」がいるからであった。

 署長にとって、ステットンの町は「大佐の町」であった。

 もしブロンド・キャリーの一味がステットンの町に向かったとしたら……。


 署長はにわかな不安を覚えていた。


 問題は大佐である。大佐が町を愛していないということではない。というより、かれが町を愛しすぎるのが問題なのだ。

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