トレーラー
あはははは……!
キャリーは赤い口を開け、会心の笑い声をあげていた。
「やったねえ! 追っかけてきたのはたぶん、テレス署長に違いないよ。あいつ、あたしの手に手錠をかけるって、大見得切っているって噂だから、これで思い知ったに違いない」
助手席でジェイクもうなずいた。
「へい、これで逃げ切れますね。ここから北へ向かえば国境だ。国境を越えれば、向こうは手が出ねえ、ってことで……」
ジェイクの言葉にキャリーはうん、と首をたてにした。
ハンドルを握るウッドは微笑をうかべている。
車窓には、景色が飛ぶように流れていく。
時速は百キロを越えているようだ。
道は山道に差しかかり、くねくねとした曲がり道が山肌をぬって登っていく。急カーブを、ウッドはたくみなハンドルさばきで進んでいった。ジェイクは手を伸ばし、ダッシュボードのラジオのスイッチを入れた。スピーカーからは軽快なポップスが流れてくる。うきうきとした気分で、三人は山道のツーリングを楽しんでいた。
日差しはさらに強まり、アスファルトの路面をしろく輝かせている。
と、ふいに曲がり角の向こうから巨大なトレーラーが姿を現した。長いタンクを引っ張っている。カーブを曲がるトレーラーの車体は、二車線の道路をほとんど占領していた。トレーラーからはクラクションの音が咆哮するように響いてくる。運転席のドライバーは恐怖の表情をうかべていた。
ウッドの表情が真剣なものになり、ハンドルをおおきく切った。トレーラーの鼻先をかすめ、道路ぎりぎりを突っ切るコースをとる。
ガードレールが車体をこすり、がりがりがりと火花がちった。きゃあ、とキャリーが悲鳴をあげた。
ウッドの口がぽかん、と開かれた。
前方の視界がふいに空になっていた。
カーブを曲がった先のガードレールが途切れていたのだ。
車は宙に飛んでいた。