哄笑
その時、迫撃砲を構えていた兵士が上昇を続けている操縦席に狙いをつけていた。
無意識に兵士は引き金を引き絞っていた。
ずばっ!
迫撃砲からミサイルが宙に飛んだ。
ひょろひょろとした航跡を残し、ミサイルは空に浮かぶ操縦席に吸い込まれていく。
「あっ、馬鹿者!」
それを見た司令官が叫んでいたが、もう遅かった。
ミサイルが操縦席に命中する。
どかあーん……!
空中で操縦席は白煙につつまれていた。
わあーっ、とパックは悲鳴をあげていた。
その時、落下する操縦席からパラシュートが開いていた。
地面からは数メートルしかなかったが、それでもパラシュートは青空をバックに、白い大輪の花を咲かせていた。
ごつ、と音を立て操縦席は地面に落ちていた。しかしパラシュートが開いていたため、なんとか衝撃は吸収されている。
ばさりとパラシュートは操縦席におおいかぶさった。
そのパラシュートをかいくぐり、パックはなんとか顔を外へと突き出した。
ふーっ、とため息が出る。
「パック!」
ミリィが駆けてきた。
「ミリィ……」
一瞬、ふたりは見詰め合う。
と、いきなりミリィはパックの頬を打っていた。
ぱしんっ!
パックの頬でミリィの平手が乾いた音をたてる。ミリィは爆発した。
「馬鹿っ! なんだってあんなもの、作ったのよっ! 人に心配ばかりかけて……」
怒鳴り声は最後に涙声に変わっていた。ミリィの顔がくしゃくしゃにゆがみ、やがて大声で泣いていた。
あーん、あーん!
泣きじゃくっているミリィに、パックは困った顔をしていた。こんなミリィを見るのははじめてである。
地面にひろがったパラシュートが持ち上がり、ごそごそと三人の男女が顔を出した。
キャリー一味だ。
三人はあたりを見回し、じぶんたちが地面に這いつくばっているのを確認して喜びの表情をあらわした。
「姐御! あっしら、助かったんですぜ!」
「本当? 本当かい?」
「間違いねえ! ほら、あっしらちゃんと地面に立っているでしょう?」
そう言うとジェイクは地面を踏みしめ、タップを踊っていた。
ウッドもそのながい顔をほころばせている。
キャリーはおそるおそる立ち上がった。
「ああ、本当だ。あたしら、助かったんだ」
がちゃり、とキャリーの手首で金属の音がした。
目を落とすと、彼女の手首に手錠がかけられていた。
目を上げると署長の目と合った。
「やあ、ブロンド・キャリーだな?」
署長は目じりにしわを見せ、にたりと笑っていた。
「もう、年貢の納め時だな」
そう言うと、手早くジェイク、ウッドの手首にも手錠をかけ、その端を鎖でつなぎ、手に持った。
がくり、と三人はうなだれていた。
「さあ、来るんだ!」
ぐい、と鎖を引っ張り、署長はじぶんのパトカーへ三人を連行していた。
そのパトカーを人型のロボットがのぞきこんでいる。あれは、大佐が召し使いとして使用しているヘロヘロというロボットだ。
なにをしているのだろう?
署長は眉をひそめていると、いきなりヘロヘロは助手席に顔をつっこみ、プラスチック・ケースを手にしていた。
あっ、と署長は声をあげていた。
ヘロヘロはケースをひねくっていると、それを開き中のタバコを指に挟んでいた。
ぼうぜんとしている署長の目の前で、ヘロヘロはタバコの先に火をつけていた。一服吸い付けると、頭のてっぺんから煙を吐き出した。
ヘロヘロは首をかしげていた。
見つめている署長と目があった。
「人間がこれを吸うのを見て、うまいのかどうか知りたかったんでやす。あんまり、うめえもんじゃねえだすな!」
そう言うとヘロヘロは肩をすくめた。
それを見た署長の肩が震えている。
くすくすと笑いがもれていた。
署長はわははは……と、哄笑していた。
キャリーはあっけにとられていた。署長は笑い続けている。