無線
だーん!
銃声に大佐は眉をあげた。
「銃声じゃな。はて、どこからじゃ?」
ぐい、と顎をあげる。視線のさきには町を壊しながら驀進するロボットの背中が見えている。
「きまっとる! あのロボットを動かしておるやつらじゃ! おのれ、あやつら銃も持っているのか。いよいよわがステットンの町が危うい!」
ぶつぶつつぶやく大佐の目は狂気をおびている。
戦車の砲塔がぐるりと動いた。
砲身がロボットに狙いをさだめる。
引き金に大佐の指がかかった。
今度こそ……。
かちり!
大佐の顔が真赤に染まった。
かち、かち、かち!
なんども引き金をひく。
しかし弾は飛び出してこない。
しまった……。
弾切れである。
署長を先頭に、三台のパトカーはロボットと併走していた。パトカーは路地をぬうように走っているが、ロボットは家があろうがなにがあろうがお構いなしに直進している。そのたびに住民が逃げ出し、町は大騒ぎだ。
「ねえ、署長さん。どうしたらいいの? こうして走っているだけじゃ、あのロボット止めることはできないわよ」
ミリィに尋ねられ、署長はうめいた。
まったく彼女の言うとおりだ。こうしていても埒が明かない。
あのネットで捕獲するというアイディアは大成功だった。大佐が邪魔しなければの話しだったが……。くれぐれもあの一件が悔やまれる。あれでもう、次の手はうてなくなっている。
どうしよう……。
どうしたらいい?
署長には最後の一手が残されている。
しかしそれを使うのにはためらいがあった。
だがもうどうしようもない。
しかたない。こうなったら……。
署長は無線のマイクを掴み、警察本部へと連絡を取った。