ウッド
ぐおおおん……!
戦車のエンジンが咆哮した。
突き飛ばされるかのように、戦車は前傾姿勢になって動き出す。
どすどすどす……!
リズミカルな動きで、ロボットは無心に歩いている。腕を振り、両足をいそがしく交錯させ前方になにがあろうと、ただまっすぐ前へと進んでいく。
ぐあらぐあら……!
二階建ての民家がロボットの突進により、真ん中から真っ二つにへし折れ、屋根瓦がなだれをうって落下していく。住民たちが悲鳴を上げ蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
操縦席からキャリー一味はそれを恐怖の表情で見守っていた。
「いったいなんだって、こいつは暴れつづけるんだい?」
ぽつりとキャリーがつぶやいた。
「当たり前さ! まだこいつは未完成なんだ。コントロールするための回路が組み込んでいない。エンジンが動いたら、あとは勝手に突き進むだけだ。まったくもう……あんたらのせいで、えらい迷惑さ」
パックが修理中のコンソール・ボックスから顔を突き出し一気に喚いた。かれの剣幕に、キャリーたちは顔を見合わせ、口をつぐんだ。
キャリーはパックの機嫌をそこねまいと、作り笑いになって話しかけた。
「そ、そうだね……まったくあたしらヘマをしたもんだよ。それで、こいつはいつになったら止まるんだね?」
「燃料がきれたら止まるよ」
パックはぶっきらぼうに答えた。
キャリーの口もとがぴくぴくと引きつった。
やばい……!
それを見たジェイクははらはらしていた。
姐御はこんな対応になれていない。いまは我慢しているが、いずれ爆発することは目に見えている。
「そう──燃料が切れたら──ね」
キャリーの口調がわざとらしくゆっくりになっていった。唇がへの字に折れ曲がった。
「それで──いつ、切れるのかい?」
わかんねえ、とパックはそっぽを向いた。
きりきりきり、とキャリーは歯噛みをしていた。ぶるぶると指先がふるえ、さっと胸元にのびた。
次の瞬間には、拳銃を手にしていた!
ちゃきっ! と、キャリーは拳銃をかまえ、銃口をパックの額に擬した。
パックはぼうぜんと目を丸くして見つめるだけだ。
「いますぐ止めるんだ! この、やくざなロボット野郎の息の根をとめな! そうしないと、引き金をひくよ!」
「姐御!」
ジェイクが叫んだ。
キャリーはジェイクを見ずに喋り続けた。
「構うもんか! こいつで、この操縦パネルを撃ってやる! 回路がなんだい。壊せば動きが止まるに決まってる」
ジェイクの顔に汗がふきだした。
駄目だ……キャリーの姐御は完全にじぶんを見失っている。パネルを撃ってますますロボットがひどく暴れないとはかぎらない。それより、このパックという少年にまかせたほうが利口だとは思わないのだろうか?
そのとき、ジェイクは相棒のウッドがそろそろと動き出しているのに気づいた。
唇を舌でなめ、ウッドはキャリーの手に握られている拳銃を見つめている。
やめろ! ウッド! おめえはそんな柄じゃねえぞ……。
ジェイクは祈るような気持ちでウッドの動作を見守っていた。
ウッドの全身に緊張がみなぎった。
ジェイクはいちかばちか、と口を開いた。
「姐御! うしろ!」
かれの叫びに、キャリーは一瞬虚を突かれたようだった。彼女の視線がパックから離れた。つぎの瞬間、ウッドの全身がばねに弾かれたようにキャリーに突進していた。
ウッドの腕がのび、キャリーの手首を掴んだ。
「なにすんだい!」
キャリーが叫ぶ。