表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/41

 パトカーが石畳のむこうに二台、停まっている。となりには警官が、緊張した表情で道路のを見つめていた。

 ロボットの進行方向に先回りして、なんとかその足取りを止めようというのだ。


「来るぞ……」

 警官のひとりがつぶやいた。


 立ち並んでいるふるい家々の向こうから、どすどすというロボットの足音が近づき、震動で屋根瓦がかちゃかちゃと音をたてている。さっと警官たちはパトカーのもの入れからバズーカ砲のようなものを取り出した。肩に担ぎ、狙いをつける。

 ぬっ、と屋根のむこうからロボットの頭部が顔を出した。ずしん、ずしんと地面をふるわせ、ロボットは狭い通りを無理やり進んでくる。肩先が家の軒にふれ、屋根瓦が数枚地面に落ちていく。バズーカ砲をかまえたふたりは、じっと待ち受けた。


 ロボットがひろい通りに姿をあらわした瞬間、ふたりの警官は引き金をひいた。


 ばすっ、と音がして、バズーカ砲の筒先からなにかの塊のようなものが飛び出す。塊は宙でひろがり、網目状になった。

 どさっ、と網はロボットの頭上から全身にかけて覆いかぶさった。同時に網のさきから鉄の槍がとびだし、地面につきささる。がくん、とロボットの足が止まった。

「やった!」

 警官は満面の笑みになった。


 網が全身にからまり、ロボットの動きはにぶくなっている。それを見て、ひとりがパトカーの無線のスイッチを入れ、マイクを口にあてがった。

「署長! 成功です! ロボットの動きはとまりました!」

 スピーカーから署長のはずんだ声が響く。

「そうか! 効果があったんだな?」

「ええ、良い考えでしたね。暴走車を止めるためのものでしたけど、ロボットにもきくとは思いませんでした」


 発射したのは暴走車を停止させるための強靭な網である。網をからませ、暴走する車を強制的に停止させるものだ。テレス署長は、この装備をふたりに使わせることにしたのだった。

 手足に網がからまったロボットは、動けなくなりむなしく唸り声のような音をたてている。ぎゅーん、ぎゅーんとモーターが空転して、全身が震えだした。


 そこへテレス署長の乗ったパトカーがやってきた。署長は窓から顔をつきだし、ロボットを見上げた。


「おお! うまくいったか!」

 そう言ってにんまりと笑った。

 後席からロボットを見上げたミリィは頭部の操縦席に目をとめ、あっと叫んだ。

「パック……」

 ん、と署長はミリィにふりかえった。

「パックとは、あの男の子かね? 大佐の家の近くに住んでいる親子か?」

 ミリィははっ、と口を押さえた。

 じろり、と署長は操縦席を見上げる。

 ひとりの少年がハンドルを握り、網からロボットを解き放とうと悪戦苦闘していた。

「ふむ、たしかにパックだな。いったい全体、あんなところでなにをしているんだ?」


 ミリィを見る。


 署長はやさしく尋ねた。

「ミリィ、お前さんなにか知っているんじゃないのかね?」

 ミリィはうつむいてしまった。

 パックがあのロボットを組み立てた、なんて言えるわけない。

 その時、地面から響いてくる震動にふたりは顔を上げた。


 なんだろう、とミリィは路地を見つめた。

 あっ、と驚きの声をあげる。

 戦車がやってきたのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ