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計画

 操縦席でパックは機械と格闘していた。

 ウッドがこじあけたパネルからは、スパゲッティのように配線がからまり、内部の装置がむきだしになっている。


「なんでこんなに滅茶苦茶にしちゃったんだよ! これじゃ修理に手間取ってしかたない……」

 ふうっ、とパックは天を仰いだ。

 こうなったのがじぶんのせいと知って、ウッドはしょっぱい顔になっている。

「そんなことより、あんた直せるの?」

 口を挟んだキャリーに向けて、パックはものすごい形相になった。

「あったりまえだろう! おれが作ったロボットだぞ。だいたい、なんでこんなことになったんだい? あんたら、何のためにおれのロボットを奪ったんだ」

 三人は顔を見合わせた。


 パックはキャリーの座席の隣に積まれた現金の袋に目をとめた。

「なんだい、その袋は?」

 あわててキャリーは尻を動かしてパックの目から袋を隠そうとしたが、あいにく山と積まれているので無駄なことだ。

「な、なんだっていいだろう……。とにかく、あたしらは町の中なんか行きたくなかったんだ。車がこわれて、それでこれを使って国境に向かうつもりだったんだよ……」

 ふうん、とパックは鼻をならした。

 とにかくロボット以外はあまり興味がない。それより修理だ!

 パックはパネルに頭をつっこんだ。




 

「くそ、動き回るんで、狙いがつかんわい!」

 砲塔で大佐は歯噛みした。

 ステットンの町は丘の斜面に発展し、坂道がおおいのと、道がまがりくねっているため迷路のようになっている。その中をロボットはあっちにうろうろ、こっちへふらふらとさ迷うように進んでいた。ときおり通り抜けそうもないところにくると、両側の家の壁をどかどかと壊して無理やり道をつくって通っていく。その後ろを大佐の戦車は必死になって追跡していった。


「大佐! その戦車を止めなさい! 道路交通法違反になりますぞ!」

 背後から署長のパトカーが追いすがり、スピーカーでわめいている。

 ふん、と大佐は肩をすくめた。

 そのとき、ぱちりと大佐は指を鳴らした。

「そうじゃ、先回りしてやれば!」

 つぶやくとにやりと笑う。

 身を乗り出し、運転席のヘロヘロに声をかけた。

「おい、ヘロヘロ! この先、左に曲がれ!」

 ヘロヘロは大佐をふりかえった。

「しかし大佐殿。この戦車が通れる曲がり道なんか、ねえですだよ」

「いいから曲がれ! わしの命令がきけんのか?」


 へーい、とつぶやいてヘロヘロは戦車を左の家がたちならんでいる細い路地へつっこませた。がりがりがり! と、戦車の両側が壁にあたってものすごい音を立てる。




 

「まったく無茶をする……」

 戦車が路地に消えていくのを目にして署長はぼうぜんとつぶやいた。パトカーは停車していた。後席でミリィは署長に話しかけた。

「ねえ、署長さん。こんなところで止まってる場合じゃないでしょ? はやく追いかけましょうよ!」

「どっちだね? 大佐か、それともロボットか?」

「それは……」

 ミリィはつまった。そうだ、どっちを追いかけるべきか?


「大佐のあとを追いかけたら、わしらもこの町の人間に迷惑をかけかねん。それよりロボットをとめるのが先決だ」

 ミリィは思わずうなずいた。

「そうよ、その通りよ。でも、どうやって?」

 署長はミラー越しにミリィににやりと笑いかけた。

「部下を先回りさせたのを知らんのかね? ちゃあん、と考えておるよ!」

 署長はマイクを取り上げ、無線のスイッチを入れた。


「二号車、三号車応答せよ!」

「こちら二号車!」

「こちら三号車!」

「テレスだ。ロボットを待ち伏せすることはできたか?」

「はい、準備はできております!」

「よろしい……それでは計画通り、ロボットの進行を阻止せよ!」

「了解!」


 マイクを戻し、署長は相好を崩した。

「これでよし……ほっほ、これでキャリーに手錠をかけることができるぞ! おい、ロボットのあとを追え!」

 部下はうなずいてパトカーを発進させた。


 ミリィは署長に尋ねた。

「署長さん、どうやるつもりなの?」

 ふふん、と署長はふくみわらいをする。

「まあ、見ててくれ。細工は流々、仕上げをご覧あれだ!」

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