発射音
「射ちおった! 大佐め、なんということだ……」
戦車の主砲の発射音に、署長は思わず首をすくめたが、すぐ怒りの表情になっていた。 主砲からは白い煙がたなびいている。
がこーん、と砲塔がまたあさっての方向を向く。
どかーん!
盛大な砲声がして、主砲がふたたび火を噴いた。
砲弾は町の建物の壁に命中した。
砲撃で大穴があき、どうやら食事中であったらしい一家が、ぼうぜんとした顔で外を見つめている。
砲塔の大佐にしがみついているもうひとりの少女の姿を認め、署長はあっけにとられていた。
「あっ、あれはミリィじゃないか!」
ミリィと大佐は戦車の砲塔でもみあっている。大佐はミリィの手をふりはなそうと、ちからをこめた。と、ついにミリィが振り落とされてしまった。
あっ、と署長は声をあげた。
ミリィは地面に落ち、ころころところがっていく。しまった、という大佐の表情。
「おいっ、車をとめろっ!」
署長の命令でパトカーはとまった。
同時に戦車も停車した。
さっとミリィは立ち上がった。よかった、怪我はないようだ。それを見て、大佐はふたたび戦車を走らせる。遠ざかる戦車をミリィは悔しそうに見送っている。
立ち上がったミリィは署長のパトカーに走りより、叫んだ。
「署長、乗せて!」
彼女の血相に、署長はおもわずうなずいていた。ミリィはパトカーの後部座席にころげこむように乗り込んだ。
「なにしてんの? さっさとお祖父ちゃんのあとを追うのよ!」
「わ、わかっとる!」
おいっ、と部下に命令する。
パトカーはもうぜんと走り出した。
「まったく、なにを考えているのかしら。お祖父ちゃんったら……」
ミリィの言葉に署長はうなずいた。
「まったくだ。いくらなんでも戦車を持ち出すとはなあ……」
「署長さん、どうするつもりなの?」
「どうする、とはどういうことだね?」
「もう……、あのロボットよ! あのロボットが動いている限り、町をまもるんだと言ってお祖父ちゃんは戦車を使うつもりよ」
う、ううむ……と署長はうなった。
確かにそうだ。あれが暴れまわっているかぎり、問題は解決しない。
「あのロボット、だれが動かしているの?」
「ブロンド・キャリーの一味だ。指名手配の、銀行強盗さ」
「銀行強盗! そんな凶悪犯がロボットを動かしているの!」
ミリィは目を丸くした。