陸橋
ミリィのスクーターを駆って、パックは別方向からロボットを追跡している。視界にパトカーと戦車が飛び込んできた。
あの戦車は!
パックが大佐に頼まれ、組み上げたやつだ。
砲塔に大佐の顔を見つけ、パックは驚いた。
大佐はやる気だ……。
あの主砲をロボットに向けている。
あれが発射されたら……。
畜生、そんなことさせるものか。
パックはアクセルを全開にした。
見る見るロボットとの距離が縮まっていく。
と、パックは前方の道路がふたてにわかれていることに気づいた。
一方は坂道になっていて、陸橋に繋がっている。
よし、これだ!
パックは坂道の方向へハンドルをきった。
ぐうーん、とスクーターは坂道をのぼっていく。前方が急カーブになっていて、陸橋が見えてきた。その下の道路をロボットは驀進していた。陸橋に先回りすると、パックはスクーターを止め、待ち受けた。
「ねえ、どうして町へ進んでいるのよ! あたしら国境線へ行かなきゃならないんでしょう? ウッド、なにしているんだい?」
ロボットの操縦席でキャリーは悲鳴をあげていた。
ウッドは長い手足を運転席で必死に動かし、あちらのスイッチをひねり、レバーを動かし、大汗をかいていた。首をかしげ、ごそごそと上体をおりまげ、カバーをこじあけ配線を覗き込んだ。スーツの内ふところから修理器具をつぎからつぎへととりだしている。スパナ、ねじ回し、ペンチ……。
ジェイクはウッドの様子に絶望していた。
完全にかれは取り乱している。
もしかして、操縦できないでいるのか?
ジェイクはウッドに話しかけた。
「おい、ウッド。どうなってんだ? なんか、まずいことになっているのか?」
ジェイクの声にウッドは顔をあげた。
こめかみから顎にかけて、びっしりと汗をかいている。ウッドはこまかく顔を左右にふった。
「だめか?」
ジェイクの問いかけに、ウッドはうなずいた。
ぱくん、とジェイクの顎がたれさがった。
万事休す!
「あ、あれ……!」
後ろをふりむいたキャリーが指を上げた。
その方向を見てジェイクとウッドの顔色が青くなった。
戦車が接近してくる。
その戦車は、ロボットに向け主砲の狙いをつけていた。
ロボットが近づいてくる。
陸橋の手すりに身を乗り出し、パックは待ち受けた。
操縦席を見てパックは目を細めた。
だれか乗り込んでいる。
女一人に、男がふたり。男の一人は運転席に座っている。あいつがおれのロボットを勝手に動かしているのか。
くそっ!
ずしずしずし……と、ロボットの足音があたりを震わせている。近づくロボットを待ちうけ、パックは全身を緊張させた。
ぐっと身体の筋肉にちからをいれる。
もし失敗したら、真下の道路にまっさかさまだ……。
なにくそ、おれのロボットを乗り逃げされたんだ。取り返さないでどうする?