パックの馬鹿!
あはははは……!
キャリーは良い気分だった。
あっけにとられた署長の顔を思い出すたび楽しくなってくる。
「やったねえ! これなら、北の国境線まですぐだわね!」
「へい、まったくで!」
ジェイクは調子よく相槌をうった。
ウッドに向かい、声をかける。
「ウッド、それじゃこいつを国境まで運んでくれや」
だがウッドはハンドルにしがみつくようにしてまっすぐ前を見たままである。ジェイクはたずねた。
「どうしたウッド?」
ウッドはジェイクに顔をねじまげた。
額からびっしりと汗が噴き出している。その表情には焦りがうかんでいた。
ジェイクは不安にかられた。
「おい、どうしたってんだ?」
声が高まった。
ウッドはいやいやをするように顔をふった。
「どうしたの?」
キャリーが身を乗り出した。ふたりに見つめられ、ウッドの顔はあおざめていた。
「おれのロボット!」
納屋を見ていたパックは悲鳴をあげていた。
スクーターのハンドルを握るミリィを、パックはちからまかせに押しのけた。
「なにすんのよ!」
かっとなって叫んだミリィに、パックは喚いた。
「ミリィ、スクーター借りるぜ!」
え、とミリィはぽかんと口をあけた。
「おれのロボット、まだ未完成なんだ。あのまま動かしたらなにがおきるかわからない。だから、なんとしてもおれが止めてやる! そのために、こいつを借りる!」
一気にそう言うと、パックはスクーターのエンジンをふかして町の方向へ戻りはじめた。ぼうぜんとしてそれを見送ったミリィは、はっとなって叫び返した。
「馬鹿! パックの馬鹿! なによう、ロボット、ロボットって、そんなに大事なの?」
パックは見る見る小さくなっていく。
がくり、とミリィは両手をおろした。
どうしよう?
とりあえずお爺ちゃんに会って相談しなくては……。
その考えがうかび、ミリィは大佐の家へむかって走り出した。