撤退!
「お前たちは逃げられん! あきらめて投降するなら罪が軽くなるぞ!」
マイクを握った署長の声は、すでに枯れかけていた。長々と投降を呼びかけているが、納屋からはうんでもなければすんでもなく、静まり返っているだけだ。
「署長、突入してはいかがです?」
部下のひとりが提案してきた。
うむ、と署長は生返事をした。じつはそろそろ強行突入もやむなしと考えはじめていたのだ。
片手をあげ、部下たちに突入を指示しようとしたその時、納屋の扉がめりめりと音をたて、内部からおそろしいちからで押されているかのようにたわみはじめていた。
声をあげようとした署長は、思わず息を止めた。
なんだ、なにがはじまる?
ばりばり、めきめきと音を立て、納屋の扉が押し破られていく。
その中からあらわれたものを見て、署長は目をみはっていた。
「なんと、あれはロボットじゃないか!」
パックのロボットが、キャリー一味に乗っ取られ、いま動き始めたのだった。
ロボットの頭部を見上げた署長は、そこにキャリーとふたりの手下が乗っているのを確認していた。おのれ……、と署長は歯噛みをしていた。
あはははは……!
キャリーの高笑いがしている。
ずしり、ずしりと重々しい足音をたて、ロボットは納屋を取り囲むパトカーの中へ突っ込んでいった。
わあ! と、警官たちは悲鳴をあげ、逃げ惑った。
ロボットは高々と片足をあげ、踏みおろした。ただそれだけで、一台のパトカーがぐしゃりとつぶれてしまった。
何人かがそれでも銃をとり、ロボットに狙いをつけた。
ぱん、ぱんと乾いた音を立て銃口が火を噴く。
ちん、ちいーん……と銃弾がロボットの表面に火花をちらした。まるで効果がない。
ロボットが両手をおろし、もう一台のパトカーをむんずと掴む。そのまま持ち上げ、ぶんとばかりに放り投げた。
ひゅう……、とパトカーは放物線を描いて地面に激突する。がしゃーん、と派手な音を立て破片が四方に飛び散った。
「撤退! みんな、逃げろ!」
署長はあわてて叫んだ。
ずしん、ずしんと音を立てロボットは逃げていく警官のまんなかをゆうゆうと歩き去っていく。畜生! と署長はさけび、地団太をふんだ。