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シンリギュラの扉  作者: さかたろ
序章
1/3

赤坂 司

久しぶりの投稿です。

序章はこれまでより短めにしました。


 ──俺は凡人である


 大学2年の春を迎えた赤坂 司は熱中しているFPSテレビゲームのリザルト画面を見て思う。

 スコアは勝利、司のチーム貢献度は5人中の3人目であり可もなく不可も無くの結果。


 平均より少し上のプレイはできるがどれだけ時間をかけてもゲーマーのような人々を熱中させるプレイングができない。


 ゲーム以外にも勉強面では赤点と言われる点数は取ったことはないが特出した科目があるというわけでもなく全て平均的な点数を取る。

 裁縫もスポーツも人付き合いもそうだ。


 肯定的にいえばなんでもできるオールラウンダーだ、しかし裏を返せば得意なことがない器用貧乏なのである。


「さて今は何時だ……」


 柱にかけられた時計に目をやると短針は1を指していた。


「もうこんな時間か、三限行かないとな…」


 まもなく大学の三限が開始する時間であった。

 司は隣に置かれた教科書が入ったバックを手に取ると気だるげに立ち上がりゆっくり玄関へ向かって歩き出す。


 去年のこの時期は一人暮らし、大学生活と新たな環境となりスタートダッシュを決めるために服装や髪型などを時間をかけしっかりセットしてきていたが今は環境にも慣れ時間ギリギリまで自堕落で過ごす方が優先となっていた。


「うわ」


 玄関の扉を開けると司が住むアパートの近くに咲いている桜の散った花びらが風に乗り司の部屋の中へと入ってゆく。

 春の終わりを感じさせる桜吹雪の中を約500メートル先の大学へ向け歩き出してゆく。住んでいるアパートは駅近ということもあり少し歩いただけで多くの人々が行き交う駅前通りへと出る。だが言ってしまえばこの駅前しか栄えてはいない。ここを越えれば住宅街や公園が立ち並ぶだけの閑静な場所となる。見慣れた光景を背に司は人の間をぬって進んで行く。


「今日はいつもより人が多いなぁ……」


 都会の駅前ほどの人混みではないが歩道の幅が狭いため横一列に三人が歩けば一杯となってしまう。


「うっ……」


 このように逆方面へと向かって歩く人と肩がぶつかってしまうなどよくあることだ。

 でも今日はここに更なる不幸が重なりぶつかった衝撃でバックの中にしまっていた鍵が外へ飛び出してしまった。


「ここで鍵落とすのはまずいって……」


 周りの人々にごめんなさいと心の中で謝りながらその場にしゃがみ落ちた鍵を拾い上げる。


「よかった……ってこれ……」


 司は拾い上げた鍵に違和感をおぼえる。玄関の鍵や実家の合鍵など失くすのが嫌でワイヤーキーリングでまとめていたのだがその中に見覚えのない()()()ディンプルキーが取り付けられていた。


「……!?」


 そのディンプルキーを目にした瞬間、姿形もない何かが額から脳内に入り込んでくる感覚に襲われる。しかしこれといった外見の変化はない。


「……」


 しかし確実に司の身体には異変が起きていた。鍵を拾い立ち上がると歩く人々を押し退け前へ前へ進んで行く。

 駅前を通り過ぎ、当初の目的地であった大学前も通過してゆく。それからも歩き続け最終的には住宅街の中にある年季の入った高架下の前で立ち止まった。


「……」


 遠目から高架下にある『ナニか』を見つけると。司は再びそのナニかへ向け歩きだす。

 全長50メートルほどの高架下の約半分くらいの場所にあるナニかの元へ辿り着くと立ち止まる。


「あった……」


 そのナニかとは偶然が重なりできたであろう壁面に浮かび上がった『人型のシミ』であった。

 司な誘われるようにそのシミへと向かってゆき、あと一歩で壁にぶつかりそうな距離まで迫っていった。


「行かないと……」


 そう意味深な言葉を呟くとそのシミへ向けゆっくりと手を伸ばす。

 そのシミに触れることで正気に戻り謎の力が──いいや、それを遥かに上回る事象が起きていた

 司の手はプロジェクションマッピングのように壁をすり抜けたのだ。

 すり抜けた先に身体を支える物体はなく司の全身を全て飲み込んでゆく。


「あぁ……」


 刹那──赤坂 司はこの世界から姿を消した。

 運が良いのか悪いのかこの現象を目撃し都市伝説として後世に語り継ぐ存在となる人物は現れなかった。


 全ての始まりにして終わりの始まり──シンリギュラへの扉が開く

最後まで読んでいただきありがとうございました!

これからすぐ一話も掲載予定です。

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