魔導石の可能性
思いもよらぬ話の切り出しに、少し渋面となる。
「…これ以上の話は場所を改めましょう。誰に聞かれるかわかったものじゃない。ジョゼットらしくないわ、こんな話をここで切り出すなんて」
「ご心配かたじけのうゴザいます。ですが少しの間でしたラ、心配はご無用でス」
そういって、目の前の麗人は、ちらりと髪をかきあげてみせる。一瞬きらりと何かが光る。
「盗聴防止用のイヤリングでス。魔導石を使用していマス。私を直径ニ半径3m程ですが、効果がありまス」
「魔導石でそんな事が出来るのですか?!」
「驚いた…フランテ王国が軍事転用しているのは知っていたけれど、そこまでの実践レベルになっていたの」
「イエ、課題は多いでスし、流通はしてまセん。うちの商会経由で、『研究目的』とシて手に入れました」
「魔導石は動力源としてしか使えないと思っていました…」
「魔導石は高エネルギー物質で、使用方法に関してはまだまだ研究されている、という噂は聞いていたけれど…」
「恐らく、イグラシアも同程度か、これよリ研究は進んでいるト思いまス。公にはされていないのデショウ」
「…なるほど…本筋には関係ないけれど、ぜひ機能概要を後で説明してちょうだい。興味があるわ」
「承知しましタ」
「とはいえ、長く保たないのであれば、ここで話を続ける理由はないわ。そうね、4日後、商談を装って本店に行くことにする。その時に続きを話しましょう」
「承知しましタ、こちらも体裁は整えておキましょう」
「それからジョゼット」
「何カ?」
「貴女はやっぱり凄いわね。私、もう貴女から話を聞ききたいって気持ちになってるわよ」
そういって微笑めば、にっこりと、商売人らしい笑顔で相手は笑った。
「…嵐のような時間でした…」
ぐったりと宿の部屋で、弟はくず折れている。
お疲れ様です、対応ありがとうございます美少年様。
ちなみにここは私の部屋は隣室になる。
これでもわりと金持ちなのでね!泊まる場所にはお金を使うよ、安全のため。
「騒がしい訳じゃないけれど、濃いわよねー」
「……姉上がいいます?」
「私は変わってるだけよ」
「変わってる自覚はあるのか…」
「いずれにしろ、予定は決まったわ」
す、と姿勢を正す。
「元からそのつもりではあったけど。まずはここから南にあるボルスンに行くわ。どんな所か分かる?」
「う……申し訳ありません、不勉強で……」
「いいわ。ボルスンは王国の有名な穀倉地帯。温暖な気候で菜種や砂糖の原料を作ってる。あとはブドウなんかもね」
ふう、と息をつく。
「一二を競う穀倉地帯といえば、別の場所だけれど。ジョゼットとの約束もあるし、それに…」
「それに?」
「現状を把握するには、きっとその辺が丁度いいわ。穀倉地帯を視察した上で、商会とやり取りする。体面は整うわね」
「……姉上は、先程の話、受けるつもりなのですか?」
「まだ決めてはないわ。でも…そうね、聞くつもりはある」
「……リスクが高過ぎませんか?あのような物を持っている商会や人間と近づくのは…最悪…」
「そこまで」
口火を切りそうな弟を止める。
「アルの懸念は解っているつもりよ。でもその話をここではしない。耳はどこにでもあるのだから」
そう言うと意図を察し、口を閉ざした。
そうそれが正解。
私も理解っている。
魔導石のあのような使い方は、少なくとも我が国では公にされていない。
下手な絡み方をすれば、スパイ容疑で全員が拘束される恐れがある。
だが魔導石のあのような使用方法は魅力的だ。とても魅力的だ。
本来エネルギー源としてしか、使い道がないと思っていたものの、新たな可能性。
火中の栗ではあるが。
でも、とひとりごちる。
火中の栗を拾いたいのなら、何か道具を使えばいい。
まだその道具は決めかねているけれど。
「……ふふふふ……」
それを考えるだけでも、少女はわくわくとし。
それを察したのか、少年はげんなりとして見せた。
間が開きすぎて申し訳ございません。
エタらない予定ですので、のんびりお付き合い下さい。
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