024 埋めていく互いの認識
認識を改めよう。
私的に、今の社会情勢から、貴族制度の完全崩壊、までいかずとも、貴族が力を失うことはもう既定路線だ。
ただそれは、私からみた路線であって。
まだ13歳の、学校社会が、生活や価値観の大半を占める弟にとっては、それはアレだ。
そう!ノストラダムスの大予言!
あればりに信じ難いし、衝撃的なんだろう。
私の価値観で、他に言い換えればなんだろうか…うーん…
あ。
アレか。
勤めてた会社が「資金焦げ付いちゃって回収できないから、再就職先見つけといてね!あ、給与今月支払い待ってね!」と言ってくるようなもんか…!!!
ぞわぁあ!!っと足から、背筋から、怖気に襲われる。
忌まわしい前世の記憶。
最初に勤めていた会社が、まさかの不渡りを出して、世間の荒波に投げ出された記憶。
世は大不況で、面接しても、面接しても「お祈り」が続いた、あの、あの足元を失うような…
すり減る精神、削り取られていくだけの、預金残高をみる恐怖…
うわあああああ!!!
私は何という、デリカシーのない言い方を!!
未だに絶望に呻きながら「5年…5年…」と呻く弟。
「アル!!!」
その俯く肩をがし!と掴む。
「ちゃんと、希望ある展望含めて話すから!」
「姉上…」
「大丈夫!絶望だけじゃないから!ちゃんと希望もあるから!」
「姉上…!」
よく分からないノリになったが、とりあえず弟は絶望の淵から蘇った。うん、まぁよし!!
「おほん。まず昨今、いわゆる新興貴族の方々の力が強くなってるのは分かるよね?」
「それくらいは分かります。ジェンダ男爵は勿論、グルガン伯爵、トゥーロッド男爵など、辣腕家と言われる方々ですよね」
「一方で、その方々は古参貴族の方々からは、『成り上がり』などと揶揄されていることが多いわ、学園でもそうなのではないかしら?」
ふっと不自然に、さ迷う眼差し。
返されない問は肯定だ。
「ちなみに我が家は、歴史こそ古いけれど、力を強めているのはお父様の代から…完全な新興貴族とは言えないけれど、古参のお歴々からすれば同じように言われているわね」
「……」
「…………勿論、私の悪名は私の身から出た錆。それで色々と辛い思いをさせてしまったことは、心から謝る。本当にごめん」
「……」
沈黙。これは肯定ではない。アルはまだ許してはいない。
自分の行いは、自分で挽回するしかない。
「話を戻すわね。新興貴族の力が強くなっている。これは何故?」
「何故って…資金力が違います。新興貴族の方々は投資や経営、固有の商会などを持っている…一部の伝統貴族の方々を上回るほど」
「その通り。市場において、経済社会においてハッキリ言えば古参…伝統貴族が蔑ろに出来ないほどの力を持っているわ。でも」
「でも?」
「アルから見てどう?伝統貴族は勢力として新興貴族に劣る?」
「…いえ、そうは思いません」
そう言うと、アルは真っ直ぐに見つめ返してきた。
「結局国の方針、方向性を決定するのは王族の方々、ならびに貴族議会の方々です。そして」
「「貴族議会は伝統貴族で成り立っている」」
「…そうです。だから分からない。結局、新興貴族も伝統貴族もどちらも、貴族だ。そう、貴族であることに変わりありません。そして国の行く末を握っているのは、伝統貴族。ならばどこに貴族が力を失う要素があるんです?今は、新しい貴族が新たな力を手にした。それだけのことではないのですか?」
「それは貴族視点での話でしかないわ。アル」
弟は優秀だ。13歳と話しているとは思えない。
だからこれは経験の差。
実際の経済社会に触れているか、いないかの差。
「新興貴族が力を強くしているということは、貴族でない平民層もまた、力を持ち始めているということよ」
お読みいただきありがとうございます!
もしよければ、ブクマ、☆評価、いいねなどお願い致します!
連載ペース、少しでも元に戻していきたいと思っています。




