価値観の温度差
「つまり姉上はその『保険』とやらを社会に根付かせたいと。その為に死亡率をへらして、統計とって『保険』というのを当たり前にしたいと」
「う、うん。怪我したり、働けなくなったりした時に生活保障できるような社会にしたくて…」
「姉上」
「は、はひ」
「はっきりいって無謀です。荒唐無稽です。国家事業レベルです」
「で、デスヨネーーー…わ、分かってるもん!!!」
「もんとか言わないでください。いい歳して」
まだ16歳だもん…と言いそうになって耐える。
距離感をつかみかねて、挙動が怪しくなる。どう言った言動までが許されて、許されないのか。
今までの関係性で、掴みかねる。
ソファに抑え込まれたあと、洗いざらいそれこそ吐かされた。過去の言動の理由から、今日の馬鹿げた投資話をもちかけた理由。
それに私の行動理由。
何故こんなにもお金稼ぎに奔走しているのか。
何を目的としているのか。
ー私が、本当にしたいことは何か。
かろうじて転生云々は言わずに済んだが、それ以外は文字通り全部吐かされた。
話し続けるというのは、体力と気力を使うモノで、終盤にはぐったりとしてしまった。が、弟は容赦がなかった。
途中手ずからお茶を入れてくれたものの、『じゃあまた後日』とはしてくれなかった。鬼。
「理由は分かりましたけど。でも無謀だと思います。僕には」
「そんな繰り返し言わなくても…」
「でも、僕に見えていないものが姉上には見えているのは分かりました」
「へ?」
「僕には思いもつきませんでした。その『保険』という制度も、必要性も。姉上にはそれが必要になる未来が見えている」
「…」
「これまでの投資話ひとつとってもそうです。大きな所でいえば、魔導石動力エンジン…僕は今の歳でも、目の前にそんなものがあったとして、どうアプローチしていいか分からない」
こればっかりは、前世知識でチートしてしまっている節があるので、居心地が悪い。
「た、たまたまっていうか…運が良かっただけっていうか…」
「そういう妙な謙遜いらないです。腹立たしいだけなんで」
「あ、あうううう…」
「姉上、もうひとつ、聞かせてください」
「もう何も出ないよ…好きにして…」
「じゃあ遠慮なく」
ふ、と空気が変わったのを感じた。
どんよりと下を向いていた顔を上げれば、じっとこちらを見つめる瑠璃色。
「な、なに?」
「…姉上は…」
そこで躊躇ったように目線を伏せ、息をつく。
「だ、大丈夫?」
「いえ…大丈夫です、僕の気持ちの問題なので…姉上は…」
「う、うん」
「…姉上は…」
どれだけ言いづらいことなのかと、こちらも自然緊張してくる。
ごくり。
「姉上は…我々貴族は、これから力を失うと、思いますか?」
「え、うん」
溜めて溜めて問われたことは、私にとっては当たり前のことだった。
なので即答したのだが。
目の前の弟は、一瞬目を見開いたあと、ふかい、ふかーーーーーい溜息をついたのだった。
え?え?だめ?だめ?
あげられるうちに。
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