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新たなる挑戦②

「ぶっちゃけて言います。この研究機関の悪評は本物です」


「ほお」


「予算際限なく使って赤字状態だし、周辺住民にろくに説明しないで実験したり、研究所に自前の酒を持ち込んでます」


「……ほお」


「あと婚約者(上司の娘)からの結納金を、夜の店の借金返済に充てて、(くに)を追い出されたバカもいます」


「凄いですね?!今のところ全く持ってお金出そうって気になりませんが?!」


「ですよねぇ、私も普通だったらお金出したくないです」


「……というと?」


 そう、普通だったらビタ1文出したくない。

 のはずなのだが……


「間違いなく、彼らの研究は数年後の未来に必要です」




 さぁ、ここから口説き落とさねば。




「オーリー様。オーリー様自身は、この社会が今後どう動かれていくと思います?」


「今後の社会ですか?」


「ええ」


 少し考える素振りをしてから答えられる。


「この間の貴女の話も踏まえて…人の移動は増えてますね。それに対して、公衆衛生や雇用対策は今まさに打ち出しています…環境整備に関しては、正直まだまだ頭出しも十分ではないかと」


「ええ、人と物の流通は今勢いを増しています。移動手段が大型船や蒸気機関車だけでなく、個人所有の車…はまだまだ庶民にとっては高いとはいえ時間の問題。バスはすでに運行をし、個人レベルでの物の移動、人の移動は加速するばかり」


 少し冷めてしまったお茶を飲む。


「個人間でのお金の動きも早くなり、経済格差がこれまで以上に生じる。となると次の問題と課題は…」


「都市部への人口の集中。治安の悪化、公衆衛生の悪化。地方の人手不足。および人の移動と…海外との行き来による新たな病気の蔓延」


「私もそう思います。人や物が移動すれはするほど…予想もしなかった物が運ばれてくる」


 例えば病気、例えば外来種。

 それらの殆どは無意識に、或いは全く悪気なく運ばれてくるものだ。

 そしてその到達先では、抵抗力がなく、人も動物も、植物も食い潰されていく。


 それらを止めることは出来ないだろう。来るだろうということは分かっても、何が来るか、それが何時なのかを知ることは出来ないから。


 ただし危険性を把握して準備をすることは出来る。


「だからこそ、この研究グループなのです。こちらは幾つかの専門性に分かれて研究がなされています。特に病理学については、他の追随を許さないほど先進的です…まぁ最新の顕微鏡とか研究資材ドカドカ買ってるのも、赤字の原因のひとつなんですが」


「原因の一つ…他にも要因があるということですね?」


「はい、この人たちは完全に金勘定が出来ません。研究の成果を発表して終わり。評判が悪すぎて研究発表もろくな評価がされず、成果にスポンサーもつかず、広まることも無く、製品化などもされずに終了というわけです。」


 才能はあるが、いわば才能にステータス極振り。他の人として必要な分が抜けてしまっている人種。

 前世からそういった人種はいたが、この研究がグループは…そういった人種が、集団になってしまっていることが問題だ。

 通常こういった研究グループには天才肌が1名いるかいないか、他は秀才で多少なりとも世情を理解できる人間で構成されているものだが…調べさせてもらった限り、天才肌の人間が複数名、本当の愚か者も数名いるように思える。もともといたであろう秀才の殆どは、嫌気がさしていなくなってしまったようだ。

 ちなみに私は秀才を否定しない。好ましいと思う。

 努力を続けられるというのは、それだけで貴重な才能なのだ。地味な地道な基礎研究がどれだけ私たちの生活を支えてくれていることか。

 ……それにこの集団の問題は、まさにその秀才が多く抜けてしまったことなのだ。



「彼らの社会性や、経済面を管理する人間…部署が必要です。それを投資条件に加え、共同で投資いただけないでしょうか?」


 テコ入れである。

 抜けてしまった秀才分を…同じ分野ではなく、部署を変えて増やすことで組織として立て直さなければならない。


「…そこまでする価値がありますか?この集団に。いくら現在先進的な研究を行っていると言っても、こんな何も考えていない…考える気もない経営状況ではすぐに頓挫するでしょう。幾らでも他にもっとマシな研究機関があるのでは?」


 そりゃそうだ。投資は回収出来なければ意味が無い。

 ボランティアは偉大だが、私だって資産回収の目処がなければ投資なんてしない。というか……




 ……私の最終目標、保険制度の安定導入には彼らの研究が必要なんですよ!



 だからお願い!お金と…人出して!


 …と、ストレートに言えればどんなにいいか。とほほ。

久々投稿で申し訳ありません。

少しずつでも投稿できるよう頑張ります!

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