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新たなる挑戦①

体調と難産で時間かかりました。ううむ。。

「あー…アル…どうしたもんかなぁ…」


 弟が冷たい。


 冷たいと言うより心の距離がすごい。


 私がシェン国から帰ってきて早一週間。

 帰って早々に『恥ずかしい』と釘を刺され、お土産を渡すことすら出来ていない。

 何度かトライを試みるのだが、最近は顔を見るとあからさまに避けられる始末。

 うう、前は嫌味を言うでもなんでもちょっとは話してくれたのに…!

 そして兄上は何か訳知り顔だし…


『あの子も色々考えているのさ、少し待ってあげてやっておくれ』


 なんてにこっとお色気スマイルで言われた日にゃあ…

 いや、どうもしませんけど?

 実の兄ですし?ちょっと対応甘くなるくらいですけど!


 …でも姉ちゃんつらいの…


 やる気なさげに定期購読している経済誌やらをめくる。

 はぁー…

 …ん…?

 ………ほぉ……

 …………

 よし。


「ラリサ!来てくれる?急いでお願いしたいことがあるのだけど!」





 その翌日。


「嬉しいですね、オリヴィアからお誘いいただけるなんて」


 キラキラしく胡散臭い笑みを浮かべてらっしゃるのは…この国の重鎮…のはずの、オーランド・ヴェルディナント侯爵。

 とても気になる研究が雑誌にあり、これはと思って『良ければお話を』とお誘いした訳だが。



「いやぁ…まさか私も先触れ出したその翌日にこうやってお話出来るとは思わなかったんですけど…?」


 まさか翌日に我が家に来るなんて誰が思うか。


「貴女からのお誘いであれば時間を作るに決まっているでしょう」


 にこり。きらり。

 お茶を嗜まれながら微笑まれる。


 アーッ!眩しい!眩しすぎる!直視が辛い!

 あと若干サブイボが辛い!

 …それが侯爵の発言の嘘臭さのせいなのか、私がこういったシチュエーションが苦手なせいなのかは黙秘である。


「…やっぱり信じてないですね?」


「はい、まぁ」


 目に見えて肩を落とされる若侯爵。

 なんとなし流し目がじとりと恨めしげ。おお。

 イケメンとはジト目をしてもイケメンなのか。

 アイスブルーの目が大変お美しい。ジト目だけど。宝石のようです。ジト目だけど。


「…私的な感情を抜きにしても、貴女と会話出来る機会は優先度が高いですよ…事業の相談は勿論ですが、議会に参加している身としては貴女の提言は得がたい」


 お、そういう評価は嬉しいね!

 まぁ私自身が開発したり考え出した事でないにしても、改善できると思ったことはどんどん言わないとと思ってるし。

 言って、頭のいい人がそれを纏めてくれて、結果世の中がよくなりゃいいじゃないですか、うんうん。


「ありがとうございます!そう言っていただけるのはとても嬉しいです!」


 にこっと素直に笑っていえば、明らかに動作が一瞬固まられた。

 え、何そんな私の笑顔不気味?


「…はああ…貴女本当に…」


「え、なんですか?何か問題でも?」


「情緒とか情操とかとにかく何処に落としてきたんですか。早く回収に行ってくださいよ今すぐに」


「は?ちょ!オーリー様人格(キャラ)変わってますよ?!」


「誰のせいだと…はぁ…もういいです。」


 今度はムスッとした顔をされる。

 これは…大変珍しい。


「…オーリー様でもそんな顔するんですねぇ。ちょっと親近感湧きましたよ」


 人間だったんだなぁこのひとも。


「…何で本当にその反応になるのか理解に苦しむんですがね…」


「共通点ないと思ってた方と、共通点見出すと嬉しくなりませんか?まぁ私はなるんです」


「なんですかそれ…大体これまでだって共通点のひとつやふたつあったでしょうに」


「…私とオーリー様の共通点…?」


「…共通点、です…」


 ふ、と目をそらされるオーリー様。


「…おかね、だいすき…とか…」


「…私は別にお金が好きなわけじゃありません…必要だから稼いでるだけです…」


「…に、人間ですね…」


「…その理屈だと世界中みな友達で平和ですね…」


 心底呆れたような視線を向けられる。

 うう。ていうかやっぱり性格変わってない?

 そもそも共通点ある、て言い出したのオーリー様のくせに…


「あ!」


「なんですか?」


「ありました!私たちの共通点!」


「ほう?…ああ、私も思いつきました」


「本当ですか?じゃあ言ってみます?一緒に」


「いいですよ、ちょっと自信あります」


 ちょっと楽しげに笑う顔を見て、少し驚く。

 …おかしーな…こんな風に笑う人じゃなかった気がするんだけど。


「じゃあ言ってみましょう!せーの!」





「新規事業好き!」「人材育成好き」





 ……


 …………





「ええ…オーリー様…人材育成好きとか…」


「いやいや嘘じゃないですよ、いいじゃないですか人材育成。育てて使えばより効率的に過ごせて能率あがるんですよ?最高じゃないですか?」


「うわぁ…うわぁ…人を使うことが当たり前の人だァ…」


「貴族なんだから当たり前でしょう!」


 いやまぁそう言われるとそうなんですけど。


「というより私は別に人材育成好きでもないし、やってもないですよ?」


「貴女の場合は…ああ、周りが背中を見て勝手に育ってる感じですね。確かに」


 その割には優秀な人材揃ってて羨ましいですよ、と言うが…誰のことだろうか。エイベル?は他家だしなぁ。


「まぁ、貴女の周りが優秀だという話です…そしてそんな人材の引きがいい貴女の次の対象(ターゲット)がこの研究者という訳だ」


 先程手渡した資料を見ながら、呟く。


 す、と目線が合う。

 先程とはまるで違う表情。

 にこやかだけど、瞳はさえざえとして鋭い。

 この視線の前では、いつだって私は挑戦者だ。

 …ほんの少しワクワクする。





「聞かせてもらいましょうか。この世評の悪い研究グループに投資したい理由を」


お読みいただき、ありがとうございます。

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