表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

形見の人形

作者: ツヨシ

従兄弟が死んだ。

小学校卒業を目の前に。

病気になってから亡くなるまであっという間だったそうだ。

葬式の後、死んだ従兄弟のお気に入りだった人型の怪獣の人形を、仲の良かった別の従兄弟が形見分けとして受けとることになった。

ところが一週間もたたないうちに人形をもらった従兄弟が「この人形、呪われてる!」と騒ぎ出した。

それからいろいろあったらしくて、どういう経過でそうなったのかはわからないが、その人形を僕がもらい受けることになった。

欲しいなんて一言も言ってないのに。

その結果、人形は僕の部屋の隅にある棚の上に置かれた。

数日は何もなかった。

ところがある日、自分の部屋に入ろうとしてドアノブに手をかけたところ、かさかさかさと小さく素早い音が聞こえてきた。

一瞬動きが止まったが、それでも戸を開けて中を見た。

しかしなにもなかった。

どう見てもいつもの自分の部屋だ。

次の日、自分の部屋の前を通り過ぎようとしたところ、またかさかさかさと小さく素早い音が聞こえてきた。

慌てて戸を開けて中を見たが、まったく変わった様子はない。

ところがその翌日、僕は見てしまった。

棚に置かれた怪獣の人形がいきなり棚から飛び降りて走り出し、部屋の反対側に行ったかと思うと、そこから引き返してまた棚の上に戻ったのだ。

それも結構なスピードで。

足音は前に聞いたかさかさかさという音だった。

息が止まるかと思ったくらいにびっくりしたが、僕は同時にあることを思い出した。

死んだ従兄弟は生まれつき足が悪くて、全力で走ったことが一度もない。

「一回でいいから、力の限り走ってみたいな」

従兄弟がそう言っていたのを聞いたことがある。

その後、僕の必死の訴えにより、人形は近くのお寺に納められることになった。

僕は思った。

お寺なら本堂も庭も広いので、思いっきり好きなだけ走ることができるな、と。


       終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)なんだろう、怖いって言うか「切ない」っていう感触が残るホラーですね。でも、フツーに話の内容を思い浮かべると、やっぱりちゃんと怖い話ですよね。読み手の距離によって受け止め方が変わるかも…
[良い点] かわいいです(T_T) カサカサ猛スピードで走り出し、元の棚の位置に戻るなんて。怖いというより、哀しくて切ないホラーだと思います。かわいそうで、しかし救いある物語ですね。 本来は感動スト…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ