表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/32

第9深 ソラのステータス。



 ドル…ダンッ!



()…ってえなっ!」



 ソラは何処かに吐き出されていた。

 壁に打ち付けられた背中が痛む。

 背に手を回そうとするが出来ない。

 それは、単純に狭いからだ。

 目と鼻の先に壁がある。

 左を見ても壁。

 右を見ても壁。

 頭上も同じく。

 指先以外に身動き一つとれない。


 なんなら、壁を構成する石の無機質な匂いまで嗅げてしまう…そんな超手狭な空間にソラはいた。


「あいも変わらずか。まるで棺桶だなここは。こんな手狭なダンジョン聞いた事もないぞ」


 それを言うソラの声はひどくこもって聞こえる。何度も言うが狭いからだ。この棺桶サイズのダンジョン(?)に来るのは実はこれで二度目となるのだがこんな狭い環境に慣れるはずもない。よってツッコまずにはいられない。


【うるせいっ!せっかく俺の腹の中に招待してやったっつーのに、開口一番それかっ!】


 ソラのツッコミにすかさずツッコミ返すのはあの謎の声。


「あん?なんだあ?『内蔵ダンジョン』くん。正しくは『俺の中に住むお前の腹の中』なんだからな。だから結局ここは俺の───」


 どうやら…ソラの中に存在するこの謎の声は『内蔵ダンジョン』と呼ばれているらしい。


【だあああもう!うるせえ!ホント一生の不覚だったぜお前みたいなもんの中に閉じ込められちまうとはなぁっ!俺もヤキが回ったもんだっ!フンっ!】 


 このようにして、ソラと内蔵ダンジョンは互いに不満タラタラの体を装っているが。



 …実はそうでもない。



 ダンジョンという生命体…いや、『界命体』とは。


 ダンジョンコア時の生態として、他ダンジョンの影響下にないならどんな空間にも寄生し、根付く事が出来る。

 そしてその空間を軸として生きる事を決めた時、晴れてダンジョンと成り得る。

 そこからは他者を素材として吸収し、養分とし、それを元に領力を生成し、ダンジョンの構築、維持、循環をする。

 しかしこの『内蔵ダンジョン(仮)』がダンジョンコアだった時、それをしようにも世界は既に全ての空間がダンジョン化してしまっていた。だから寄生すべき空間にありつけず、よってダンジョンに成れないまま、数百年もの間放浪するしかなかった。

 聞くところによるとソラと出会ったあの時は放浪途中で訪れた『迷いの森』と意気投合し、その好意によって保護されていた状態であったらしい。


(ダンジョン同士の友情とか…なんだかな…)


 …とか思わなくもないがともかく。あてどなくの数百年だ。それはどれ程辛く、長い旅路であった事だろう。


 一方の『底辺探索者』であったソラ。


 彼は魔炉を持たずに生まれた。魂の片隅に在るべき魔炉を持たずに。そのせいで魂に空白が生じた。それを原因として発現したのが、あの忌まわしき体質もしくは持病良くてスキルもどきの…【空白】であった。

 このように『魔炉がない』という他の誰にも理解できない最弱を背負わされた彼はその孤独と真正面から向き合い、戦い、生き続けなければならなかった。

 そんな底辺弱者としての生によってか、人として元々規格外の領域にあったらしいソラの魂はさらに鍛え上げられていったらしい。

 本人にその自覚はなかったようだがともかく。こうして魔力──ダンジョン共が吐き出す魔素由来の力──を介さず、純粋な魂の力のみで【空白】というスキルもどきは生み出された訳だ。


 それは…ダンジョン的見地から見れば『極上の空間』。


 このさすらいのダンジョンコアにしてみれば『約束の地』にも見えた事だろう。 



 かくして奇跡的マッチングが成立。



 ソラはその魂の空白を魔炉の代わりとしてダンジョンコアで埋め合わせ、

 内蔵ダンジョンは絶好の寄生先としてソラを宿主と定め、その魂に根を張った。


 『ダンジョン』と『人間』との魂レベルでの同化がここに実現したのだ。故に『ダンジョン人間』。…因みにソラはこのネーミングをとても不満に思っている。



【…チッ、まあいい。】


(頭ン中で舌打ちすんなよ)


【狂戦士化したオーガ共の死体をあんだけ【吸収】してまわったからな。『領力』も満タンまで貯まった。これなら『界位』を上げられるだろう。そうなりゃダンジョンとして使える『権能』も増えるはずだ。手にした権能によってはこの棺桶状態から抜け出せるかもしれねえぞ。】


「お。そうなのか?じゃあさっそく界位とやらを…と、その前にステータスを確認してもいいか?」


【なんだょ出鼻をくじきやがって…チッ…オラさっさと確認しろ】


「(また舌打ち…っ)おう悪いな。」


 普通の人間ならこんな不遜な者と魂を同じくするなど発狂ものであるに違いない。だが規格外の魂を持つソラの忍耐力は人外級だ。なんだかんだとこの一人と一つの存在は、互いとの折り合いを付けつつあった。


 ともあれ、強化の計画を立てる前にステータスを確認する事は必須の行為だ。ソラは早速ステータスを……確認する前に。人間だった頃の自分を思い出す…




========ステータス==========


 種族名 人類 

 個体名 ソラ

 レベル 15

 クラス ー  


生命力 183/183 

魔 力 0/0


物理性能 306

力 G 守 G 速 H 技 C


魔力性能 0

力 ー 守 SS 速 ー 技 ー


《スキル》


【空白Lv11】


===========================


 これが、ソラが人間だった頃のステータスだ。 


 『生命力』というのは見たまま。これがなくなると命を失う。…と言ってもこれは肉体を前提としたエネルギーでしかない。いくらあろうが肉体が即死級の傷を負えば簡単にゼロになる代物だ。正直これが多いと死ににくくなるかは微妙な所。なので一般的にはスタミナ的に優れているかどうか…それを見極める基準とされる事が多い。


 『魔力』というのも見たままだ。これが無くなると魔法など魔力消費を基本とするスキルは打ち止めとなる。


 『物理性能』と『魔力性能』とあるが、その横にある数値が肉体と魔力の基本的な総合値となる。それら数値の下に有るアルファベットは『強化ランク』と呼ばれるもので、

 

 『力』…力の強さや出力の高さ。

 『守』…守りの堅さや抵抗力の高さ。

 『速』…動きの速さや発動の速さ。

 『技』…技量の高さ。


 と、このように分類されている。物理と魔力両性能においてそれぞれの分野が

 

『スキルやクラスによっていかに強化されているか』


 それがアルファベット表記により一目で分かるようになっている。

(※稀にだが本人の努力によっても微上昇する事もある)

 一番上がS(稀にSSやSSSもある)。その次にA、B、C、D、E……と続くのだが…


(俺の物理性能ときたら…)


 強化ランクに“G”が2つもあった。これは逆に珍しい…というか論外。なんせ生産職の子供ですら最低でも“F”はあるものなのだから。


 さらには“H”なんてものもあった。これを知った連中は『なんだそれ。実在するのかそんなの。マイナスなんじゃね?』と散々馬鹿にしてきたものだ。


 『技』だけは凄かった。Cランクにまで自力で上げていた。これは物理性能値の伸びがあまりに悪く、それを補完するためにやむなく…もしくは『馬鹿にされた分ムキになって何にでも挑戦してきたからだ』…などとソラは軽く考えているが、実際はスキルやクラスが関与せず、自力でCランクまで技量を上げるなど人間の業を超えている。


 実は魔力やスキル無し…つまり素の、人間本来の状態で強さを競うならばソラは達人を超えた領域にあった。


 それでもスキルを持つ者達には純粋な戦闘力では敵わないというのが現実だ。この技量の強化ランクは残念ながら、『スキルというものが如何に強力なものであるか』、『その強力さが如何なる格差を生み出すか』、その証左にしかならなかった。


(そして魔力性能に至っては…)


 『守』だけ見たなら魔法使い系最高峰クラス、いやそれ以上。これはもしかしたらソラの魂の強さと関係していたのかもしれない。しかし、それは何の効果ももたらさなかった。


 そもそもとして『魔炉』を持たない時点で詰んでいたのだ。魔力を生成できないソラの魔力性能値はゼロ。ゼロという数字にはどんな掛け算も通用しない。ゼロはゼロだ。だからどんなに強化ランクが上がろうが関係ないようだった。


(レベルが上がるたびに痛感させられたもんだ…自分の弱さを)


 こんな弱者オブ弱者だった自分が、ダンジョン人間へと進化を果たした事でそのステータスがどう改善されたのか…と言っても実はステータスを見るのはこれが初めてではない…だが『それでも』だ。


 ソラの口は乾いている。少し緊張しているのだ。それでも、彼はこの言葉を口にする。それはもう、期待を込めて。



 「ステータス、オープン。」



========ステータス==========



 種族名 ダンジョン人間(界命体)

 個体名 ソラ / 内蔵ダンジョン

 界 位 0

 段 界 基礎段界


魂 力  328/328  

領 力  1000/1000


物理性能 306

力 D 守 ? 速 D 技 C


領力性能 351

力 H 守 B 速 G 技 E


《ダンジョンスキル》


【内蔵Lvー】


【吸収Lv8】


【操力Lv1】


【依魂Lv1】



《界命戦術》


陥穽(かんせい)



===========================




《クレクレ劇場。》


 そもそもとして『ヒット作』を持たない時点で詰んでいたのだろうか。ポイント実績のない作者の知名度はゼロ。ゼロという数字にはどんな掛け算も通用しない。ゼロはゼロだ。だからどんなに面白いと思う話を上げようが…いや、それは関係ないのかもしれない。


(執筆するたびに痛感させられたもんだ…自分の才能のなさを)


 こんな底辺オブ底辺な自分が、なろう投稿に踏み切ったところでそのステータスがどう改善されるものか…と言っても実際にステータス(小説情報)を見るのはとても怖くてあまりしてない…だが『それでも』だ。


 作者の口は乾いている。少し緊張しているのだ。それでも、彼はこの言葉を口にする。それはもう、期待を込めて。



作者「えっと。『ブクマ』、『感想』、『評価pt★』、あと『レビュー』。おまちしてまステータスおーぷん!」



========ステータス==========



 種族名 なろう作家(底辺)

 個体名 ヤマタ カコク / 匿名希望

 界 位 0

 段 界 投稿始め


魂 力  5/328  

執筆力  5/1000


物理およびメンタル性能 10

力 過労  守 まあまあ豆腐 速 老朽 技 生来の不器用


執筆性能 未知数

力 強引 守 厚顔 速 遅筆 技 今後に期待


《なろうスキル》


【炎上Lv見逃して】


【開き直りLv見守って】


【語彙操作Lv聞かないで】


【読者依存Lv9108526393125695】



《悔迷戦術》


『クレクレ♡』



===========================


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ