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第17深 続、人ってやつは。





 誰もいない居住区をあとにしたソラ達だったが、結局住人達を見つける事は出来なかった。


 というより足跡が目指す方角が明らかにニョルニであったため、『きっと避難したのだろう』と予想出来たのだが、それを確認するためには結局、ニョルニ入りするしかなく…。

 もしその予想が当たっているなら魔物達の異常行動についてもおそらくはその避難住民達から報告済みであるはずなのだが、それを確認するには結局のところ統治支局に出向くしかなく…。

 ともかく。結局の結局。ソラはあえてスルーしたはずの統治支局の玄関前まで来てしまっていた。双六で言う所の『振り出しに戻る』という、アレ。そして統治支局まで足を運んでみれば…



「報酬の改善を要求するーー!」

「「「報酬の改善を要求するーー!」」」


「転移規定を緩和しろーー!」

「「「転移規定を緩和しろーー!」」」


「待遇格差に物申ーーーす!」

「「「待遇格差に物申ーーーす!」」」


 その前には大勢の探索者達が集まっていて、いわゆるシュプレヒコールを繰り返していた。


「あー…。またか…。」


 使い古した布や端材で作られた旗や横断幕や看板を掲げ、統治支局に向け一丸となって訴えている。

 …超超巨大構造物である支局に対峙し抗議するその姿は、遥か上空から見おろさなくても『人がまるで蟻のようだ』と言いたくなる滑稽さがあった。つまりはただの無謀行為にしか見えない。


【ありゃぁ何の儀式だ?】


 その光景が内蔵ダンジョンの目には不思議に映ったのだろう。早速、ソラに問うて来た。


「あー、あれは全員、探索者で『組合』の連中だ。何やってるかっつーと…“ストライキ”ってやつだな。」


【すとらいき?】


「要は…ダンジョンの探索を放棄してんだ。『もっといい条件にしてくんないと仕事しないぞー』ってな。そうやって統治局に脅しをかけてんだよ。…まあ有望だったり凄腕だったりする連中は参加してない。やってんのは『本国栄転』を諦めた連中だけだ。」



 ──本国栄転とは。



 相当に高い水準だが、統治局が定めたそれに達した探索者は『エージェント』というエリート階級になる事が出来る。

 そしてエージェントとなって初めて、探索者は家族を連れて『本国』への『転移』が許される…そんな制度だ。

 探索者達は皆、その本国栄転を目指していて、そのための援助を家族達も惜しまない。


 そしてこの制度以外でこのエリア『11区』の外に出る術はない。



 それどころか、このエリア外の情報(、、、、、、、、、)すら得られない(、、、、、、、)ようになっている。



 表面上国民としていながら、統治局はエリア区民から脱却出来ない人々を明確過ぎて区分していた。

 その徹底振りは常軌を逸していて、『11区』とある以上、少なくともあと10ものエリアがあるはずがその存在は名言されていない。

 それどころか区民は所属するこの国家の名前さえ知らされていないのだ。その意図については不明。永くそうあり過ぎて区民も当たり前としている。母国を『国家』としか呼べないこの現状を。


 こうして聞けばエリア内は統治局を中央とした支配体制は徹底されている…ように見えるがしかし、本国栄転に関する規制以外はかなり緩い。

 指導はするが、その区内に限定されるがその統治はあくまで区民に委ねている。

 実際、統治『支局』自体も区分されているからだ。そのスタッフはトップである支局長を始め全て区民で構成されている。統治局本体はそのサポートに徹するのみだ。魔導具による通信以外、干渉と呼べる干渉は殆どしない。その干渉にしても支局による治世に対する評価をただ伝えてくるだけ。エージェントと呼ばれるエリート達も滅多にその姿を現さない。



 基本政策は『閉じ込める』


 ──ただこれだけだ。



 実際、組合組織を擁護する法律などないにも関わらず、こうした大規模な集会活動が放置されているのは、取り締まる法もまた、整備されてないからだった。

 法律で縛る事をしなくても魔物の調査、討伐、間引きはどうせしなくてはならない事。

 ダンジョン化し魔物の驚異に晒されるこの世界では自衛を怠る事は自分の首をしめるのと同じ行為だからして、区民に自治を任せる統治局側としては自衛を放棄して発生するリスクも当然として、区民側の責任として放置する。


【うーん?じゃあ結局意味ねーんじゃ…ん?じゃあなんでこんな事してんだこいつらは】


「言ってしまえばただ駄々を捏ねてるだけだな。捏ねる相手も同じ区民の支局員さん達だし。

 その支局員さん達だって、丸投げされたこのエリア内の調整をギリギリのラインで頑張ってる。実際自分達の給料を削る事までしてくれてるんだ。

 まあ、ダンジョンのお前には理解しにくい事だろうな。『元』が付くとはいえ、人間の俺でもそうなんだから」


【んー?社会性…だったか?勝手に役割やら責任を背負いこみたがるのも人間の習性だろ?そこらへんは…いや、そうだな…俺には関係ないこった。】


 デモ行為についてどうこうではない。自分たちの事ばかり優先していては探索者としての評判に関わる。それは今後の活動にも影響を及ぼすはず…内蔵ダンジョンが指摘しているのはそういう事であり、こうして疑問に思いながらも『関係ない』とするのも


(まあ、当然の反応だな)


 ソラも関係ないと思っている。彼自身、この活動に全く意味を見い出せないし、ゆえに興味も持てない。


「…まあ…国家上層部がこれに応えてくれる…もしくは自分達で責任を取れるって言うならやってもいいとは思うんだが…それもない。結局、真っ先に困るのはあの人達だ」


【ん?】


 ソラが見るのは無駄に騒ぐ探索者達の向こう側にいる…この様子を遠巻きに見ている一般の人々。きっとあの人々の中には、ソラが避難誘導しようと探していた住人達も混ざっている。その証拠に多くの人が背に大荷物を担いでいた。あれは明らかに避難民。それを見て一応、安堵したソラであったが『放置された魔物の脅威に晒されるのはかのような戦う力を持たぬ人々だ』と結局、心を重くした。

 それに、戦利品として探索者が持ち帰る素材などの物資はこのエリアの狭い経済を回すためには必須。探索者がストを起こせばそれも当然滞る。何がしかの生業に従事する人々にとってそれは無関係でいられない…というか、死活問題だ。


 しかし武のスキルに特化した探索者達にそれ以外の人々が強く出られるはずもないし、商売をしている人々とっては探索者達は上得意客であるし、そんな関係性がなくとも命賭けで守ってもらう以上、印象を悪くしたくないという心理がどうしても働く。

 だからああして複雑な心境を隠して見守る事しか出来ないでいる。


 つまり探索者達がこうしてつけ上がれるのは、世間に甘やかされているからだ。


「そもそも探索者はあの人達と比べてかなり実入りが良いはずなんだ。ていうか、これから金に困るのは明らかにあの人達の方だろう」


【はあ?益々もってよく分からねーな。貧乏人の方が大人しくして金持ってる奴らがゴネて…そういう事か?】


 探索者は命を張った仕事なだけに得られる報酬は彼ら一般の平均に比べれば相当に良い。

 完全なる歩合制なのでピンキリだが、底辺探索者と呼ばれるソラでもクエストを選ばなければ彼ら一般の人々より、かなり良い報酬を稼ぐことが可能だ。最弱であったソラが探索者を続けていられたのはその報酬の良さも理由にあった。


【フン…それでも『もっとくれ』ってか…】 


 ダンジョンですら呆れる…そんな非常識をあの組合員達が強行してしまうのは、何故か。



 それは、本国に転移出来るか出来ないか…これによってはっきりと分かれる『明暗』というストレスを、どうしても受け入れられない者が大勢いるからだ。



 スキルやクラスという生まれながらに定められた才能に当然として依存してきた彼らは、自分よりも才能に乏しい人間を平気で差別出来る。しかし自身が区別される側となるのは許せない。そのくせ意地を見せるという事もしない。



 そういう事だ。スキルやクラスに依存して生きるという事は。



 その力を絶対のものとして生きるなら、生まれた時点で決められる他者との埋まらない差…それすらも絶対のものとして受け止めなければならない。


 ソラは自覚していないが、彼はそんな生き方を全面否定し、生き抜いてきた。

 まあだからこそ、ある程度の耐性と達観を身に着ける事も出来た訳だが。

 しかし、生まれた時には約束されていたスキルやクラスという恩恵を当然としてきた彼ら組合員達に、そのような矛盾は自力で処理しきれるものではなかったのだろう。


 結果、本国栄転が叶わないならせめてこのエリアでもっといい生活をしたい…彼らはその程度の目標にはけ口を求め、その程度の意識でこのデモ活動を行っている。


「まあ何にせよ…ストなんて今の俺らに関係ないって事だ」


【ああそうだな。今はそれどこじゃねえ。】


 スキルやクラスがはらむ矛盾。その根の深さに比して『組合』が掲げる目標はあまり低く、ゆえに大義名分としてもあまりに弱い。ソラ達が構う価値を感じないのもしょうがない事。


 実際、()()()()()()()()()()()()のだから。


「そんなことより、ストが起こってるって事はやっぱり『ダンジョンや魔物に何か大きな動きがあった』って事だ。」 


【あん?…なんでそんな話に繋がるんだ?】 


 組合が決起するタイミング。それは、悪意を持って選ばれる。


「探索者がストライキを起こす時ってのは大抵、ダンジョン関係で厄介な動きがあった時…ってのが相場でな…」


 彼ら探索者達が交渉で優位に立つためには統治局を困らせる必要がある。そのためにはこのエリアに危機的状況が迫っている時にストライキを行うのが効果的。ソラはそれを言っているのだ。


【…なんだそりゃ。】


 そう、なんとも情けない話だ。しかし、ソラにはストライキに参加する者達を責める気もなかった。


 戦闘に耐えられるほどの強さを持たない…それでも探索者をする以外に道がない…そういった者も実際にいると知っているからだ。

 戦闘向きのスキルにも強弱がある。弱いスキルしか持たない彼らが『他の仕事を探せ』と言われたって、弱くとも戦闘に特化したスキル構成である以上、他の職に就こうにも就けない。命の危険に怯えながら探索者を続けるしかないのだ。


 魔炉がなく、魔力を持たず、スキルを得られず生きて来たソラはこうしたスキル社会がはらむ矛盾を、イヤと言うほど知らされてきた。


 まあ…だからこそ中立に徹するしかないのだが。


 実際にソラは何度となく組合から誘われてきたが、その全てを無視してきた。なので、


「「あいつ…」」


「「チッ…底辺のクセに…」」


 こうしてシュプレヒコールに混じる不満気な視線を一斉に、一身に浴びる事になる。


 しかし当のソラは今日も今日とて完全スルー。そうやって統治支局に入ってみれば………案の定というやつだった。






《クレクレ劇場。》



【ありゃぁ何の儀式だ?】


 その光景が内蔵ダンジョンの目には不思議に映ったのだろう。早速、ソラに問うて来た。


「あー、あれは作者で、『クレクレ劇場。の最中』だ。何やってるかっつーと…“下さい。欲しいです。切に。”ってやつだな。」


【クレクレ劇場?】


「要は…この作品の文節を利用してんだ。『他の何かを引用とか勝手にしたら色々ヤバイからー』ってな。そうやって自然に自己正当化しつつクレクレしてんだよ。…まあ『感想』だったり『ブクマ』だったり『評価ポイント』だったり『レビュー』くれたりする読者様は作品の良し悪ししか見てない。それでもやってんのは『ランキング入り』を諦めきれない作者の悪足掻きだ。」



 ──ランキング入りとは。



 相当に高い水準だが、多くの読者が認めるそれに達した作家は『ポイント』というモチベ爆増エネルギーをもらうことが出来る。

 それによりランキング入りして初めて、作者の作品は『多くの読者様が読む』機会が与えられる…そんな制度だ。

 なろう作家達は皆、その『ランキング入り』を目指していて、そのための労力を作家達も惜しまない。


 そしてこの制度以外でたくさんの人に読んでもらえる術はない。

 それどころか、周りの人になろう作家デビューをカミングアウトする事すら出来ないようになっている。


ソラ「は?いや違うから。これ個人的見解もいいとこだから。面白さに自信あんならむしろクチコミ狙うべきだから。」


 表面上一般読者のフリをしながら、実はなろうの底辺作家から脱却出来ない事実を人々にひた隠しにしていた作者は……えと…うん。とても小心者なのである。


ソラ「つか、無視か。」


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