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第12深 対集団戦闘(※ハンデ付き)




「ゲヒヒッ!」

「ギヒイッ!」

「アギャギャ!」

「ギャッヒャー!」



 囃し立てる。

 血が匂うような残虐性が。

 人外特有の無邪気な殺気が。

 

 


「ああもうクソぅっ!ワラワラとっ!」




 それも、たくさん。



 ソラは今、追われている所だ。

 そう、新たに構築した階層でも魔物が現れた。予想通りの展開とはいえ、これは…


「数っ!多すぎだろーがクソっ!…でもゴブリンで良かった…」


 …もうそう思う事にしたのだった。


 1階層と同じ、2階層の敵も『シャドーゴブリン』だったのだが、その数が多すぎた。……いや、数多のオーガを屠りまくった張本人が何を言うかと言われそうだが。


 あの時と今では、状況が全く違う。


 どうやらここでは、()()()()()()()()()()()()が受けられないらしい。そのサポートとは『界命戦術(ダンジョンアーツ)』の事だ。あの技なしではダンジョン人間の戦闘力は大幅に減少する。


 ソラ個人の物理攻撃のみで対処しなければならず、しかもソラは昨日隻腕になったばかりで今の身体に慣れていない。というか隻腕なのだからそもそもとして手数が足りていない。本音を言えばオーガどころか、ゴブリン相手でも“群れ”と戦うのは避けたい所だ。


【運が良かった…か。…まあ確かにな。そう思うしかなねーか。俺の助けもなしにあの1階層でこんな群れと遭遇してたら…ブルル…多分死んでたぞ俺達は…】


「おう、マジで危なかった」


 対集団戦。それだけでも厄介なのにあんな開けた場所で戦うなど…もしそうなっていたら完全に包囲されていたはずだ。それはソラとしてもゾッとする悪展開だった。


「…だけど。まだだ。」


【ああ。そうだな。ここが踏ん張りどこ──】


 この2階層はいかにもな迷宮仕様。回廊型と呼ばれるタイプの階層だ。この狭い回廊ならば襲われる方向は前後に限定される。まだ戦いようもある。


「そうだ…悪運だけは強いんだ、俺はっ!」


【いや運頼りっ?しかも悪運!?それって結局運が悪──いや、もういい…】


 あいも変わらず(いびつ)なプラス思考を働かせ、この危機的状況をなんとか好材料で彩ろうとするソラ。それを見ていると


【(もしかしたらソラ(こいつ)って…相当(たち)が悪いんじゃねえか?)】


 そう危惧せずにはいられない内蔵ダンジョンなのであった──


【──ていうか。なんで階層を構築した側の俺らが襲われてんだ!?どんな仕様だよクソがっ!】


「いやお前にわからんことを俺に言われてもな──…って、うわっ!」


【?どうし……チィィッ!またか!】


 敵集団に追い立てられ角を曲がると…まただ。現れた。次の敵集団が。


「ああクソ!また挟まれちまった!」

【く、なんとかしろ!それしか言えねぇ!スマンッ!】


 この2階層に来てからというもの、このようにして挟み撃たれるのは何度目か、とっくの昔に数えるのはやめたが…とにかく無数に湧いてくる。しかしソラはこの状況に慣れてしまったのか。


「だああ!もうっ!ちくしょうっ!」


 …それとも自暴自棄というやつか。もはや考えるより先。


 勝手に身体が動いている。

 突っ込んでいく。

 反射的な突撃。いわゆる特攻。

 死中に活を求めるという蛮行。

 心身丸ごとスピードに乗せる。

 戦闘に瞬時、のめり込む。


 …からの、第一撃。


「おぉおラあっ!!」


 全身を投じた短剣横薙ぎっ。


 ザ「ギョ…ッ!」コンッ!


 ゴブリンの首が宙を舞う。

 それをしたソラに血は飛沫かない。

 嫌な臭いもへばり付かず。

 相変わらずゴブリンと戦っているという実感は湧かないがしかし、


 危機は危機。

 撃破は撃破だ。


 しかし


 何度も言うが今、ソラは隻腕。

 ゆえに手数も足りていない。

 よってこのまま終わるは勿体無い。

 のめり込んだついでにぶん殴る。

 短剣のナックルガードを有効利用。

 すぐ後ろにいたもう一体、

 その顔面ど真ん中、


 打ち抜いて、おくっ!


 ド「ギュべ…ッ!」ゴォッ!



 ──ミチ──体内で音が鳴る──これは筋──



 前傾し過ぎた。相当無理な態勢だ。転ぶ前に急制動しなくてはと、拳を引っ込る。上体を引き付ける。無理矢理に…っ。


 ──ゴリッ!──体内──これは腰椎──


 その結果生まれた反動。上半身に溜まったそれを下半身に乗せる。放つ。刺すような、前蹴りっ!


 ──ビギィッ──これは腱──足腰全般の──


 首なしゴブリンは蹴り飛ばされ猛速で飛んでいった。前方に迫る敵へ。血煙込みの目眩ましとして。これで少しでいいから時間を稼ぐ。

 その間に横から襲い来る短槍。短剣で受け止める。そのまま絡め取っては宙へ弾いた。


 …我ながら上手くいった。


 …と。蹴り飛ばした死体はどうなったのか?残念。虚しくも空振った模様。敵は地を這いかわした模様。そんな厄介者はここで、頚椎!踏み砕いて、おくっ!


 ゴ「アギゅッ!」リゅッ!


 踏み抜いた反動まで利用する。そして後方へ飛ぶ。これにて一旦退避。


 ──と思った所で。


 ここまでしつこく追って来た後方集団…ご到着にてご対面…いやご背面。

 さあ背後にも敵、宙に浮いた短槍、手に持つ短剣。それぞれ一瞥。瞬後、短剣は投擲っ!


 ──ミシッ、ビリッ!──これは背筋──肩も──


 ザガ「ギャッ」ンッ!


 背後に迫っていた一体。その眼窩に命中した。それは脳に到達、後頭も貫通。大袈裟な威力。…だったがしかしコスパ振るわず。

 

 撃破したのは一体のみだ。メイン武器を手放した見返りがこれでは淋し過ぎる。

 ならばと空いた手を他へ伸ばす。先程の短槍…掴み取ったっ。その過程で生じた身の捻り。それをまた無理矢理──


 ──ゴリリ、ゴギュッ──膝──腰椎──

 

 伝播させる。全身へと。

 ただの捻りを螺旋へ増幅。

 それを、駆るっ!


 ──ゴリュリッ!──腰──背──首──


 大気を焦がす大回転。

 後方の敵へそのまま肉迫。

 すくい上げるようにして、


 まとめて、

   横 殴るっ!!


ガカ「「「「アギ! ギャ! ゴヒッ! ギィ!」」」ガカンッ!


 ──全っ──ビシメキビリッバツンッ!──身っ!──


 纏まって打たれ、宙に浮く複数の敵。それらが地に落ちる瞬前、短槍構え、切っ先下へ、地に向け、


 放て。縫い、刺せっ!


 ズ「ギャひゃッ」シュッ!


 相手は複数だ。

 そしてしつこいようだが手数が足りぬ。

 よってここでも足も使う。

 踏み、砕くっ!


 ボ「ゴぎャッ!」ギャッ!


 踏んだ反動で短槍引き抜く。

 そしてまた、縫い刺す!


 ブ「グギィッ」ズッ!


 そしてまた踏み砕くッ!


 ゴ「ゲヒュ…ッ」キュッ!


 拳で打ち倒していた個体もこの際ついでだ!屠っておくっ!


 ド「ゲギャァッ」ギャッ!


 



 ──そして。





「ゲ、ゲキィーーー!」





 ───覚悟を決める。





 ズブ「ぐうぅぅッ!」ブブ…ッ──皮──肉──内臓…ッ──




【…!ソラっ!】




 来ると分かっていながら回避が間に合わない……そんな時もある。

 ノコ状に刃こぼれした粗末な剣が、ソラの皮膚を肉を突き破り内臓に到達した。


「ギギイイィッ!」

「グあがあぁッ!」

【くぅぅ…大丈夫かよお前っ!】


 そして鉄酸っぱい血反吐が口内へ逆流してくる…これは…刺さった剣がねじられた?シャドーゴブリンも必死だ。内蔵ダンジョンはドン引きだ。心配するより見るからに痛そうなそれに釘付けのようだ。


 そう。これは致命の傷。通常ならば。

 そう。なのにソラはこの攻撃をしょうがないとして『受け止めた』。


 刺したシャドーゴブリンはといえば…その顔はまっ黒だ。表情がつかめない。


「ギ、ギ…い…っ?」


 だが声は教えてくれた。震えている。きっと心もそうなのだろう。つまりは怯えている。


「お前だけだ…残ってんのは…」


 この多勢に無勢。界命戦術は封じられ、慣れぬ隻腕状態。それに従い手数も減少。 


 これほどハンデを背負っているのだ。いつか対処が遅れる。直撃を食らう。そしてそれはおそらく避けられない未来。



 …ソラは想定していた。



 ならば。どうせ避けられないのならと攻守のバランスなんてあえて無視した。無理矢理攻撃のみに特化し続け敵殲滅を無理に急いだ。その無理が祟って直撃の可能性はこれまた増大するのもわかっていた。その危険をなるべく後回しにせんと足掻いて藻掻くジレンマ。それに耐え、敵を屠る事のみに集中し続け…かくして。


 そのかいは、あった。


 攻撃を受けた際に必ず起こる硬直。その隙を突き追撃する者はもはや、ここにはいない。


 それを確認したソラは渾身の力を込め腹筋を締める。刺さる剣を固定する。これも痛いが我慢する。眼の前にいるのは最後の一体。


「 ラァっ!」


 バキィッッ!


 その頭頂に槍の柄を叩きつけ。


「ギャぇ……っ!」


 最後のゴブリンが沈む。その頭は陥没していた。押し出された眼球と共に折れた槍も地に落ちる。ぽとりガランと音を鳴らした。


(…今ので…)


 やっとの完全制圧。その証拠に、 


《全ての敵を撃破、この2階層を攻略しました──量力と魂力の最大値がそれぞれ200上昇します──》


【──あ、あー…その…少し休め。ソラ】


 例の口調激変裏声アナウンスを混じえながら内蔵ダンジョンが(ねぎら)ってきた。


「……… っふー─…… 」


 ここでやっと、残心を解く。しかし…さすがの内蔵ダンジョンもこのソラの凄絶を目の当たりにしてかなり引き気味であるようだ。


(まあ…こんな反応になるよな…)


 ソラにとってはこのようにして他者からまるで、異物を見るかのように畏れられる事はよくある事だった。なので慣れている。

 だが刃物に刺され発生する苦痛だど話は違う。慣れるものではない。


(…はずなのに…)


 さっきの苦痛は……思いのほか軽かった。何故かはわからない。確かに痛かったが一瞬だった。

 それに、痛みによる硬直を恐れ勝負を急いだはずが…


(硬直…しなかったな……)


 これは、この種族に生まれ変わった事が原因なのだろう。しかし、


(……ダンジョン人間か…俺って本当に人でなくなっちまったんだな…)


 こんな実感…どう噛みしめていいのか分からない。


《【依魂】のスキルレベルが2に上がりました。》


《【操力】のスキルレベルが3に上がりました。》


 だからその代わりとして噛み締める。この、【依魂】と【操力】というダンジョンスキル…その恐るべき性能を。 



========ステータス==========



 種族名 ダンジョン人間(界命体)

 個体名 ソラ / 内蔵ダンジョン

 界 位 1

 段 界 基礎段界


魂 力  328/728→928  

領 力  900/1700→1900


物理性能 306

力 D 守 ? 速 D 技 D


領力性能 351

力 H 守 B 速 G 技 E


《ダンジョンスキル》


【内蔵Lvー】


【吸収Lv8】


【依魂Lv1→2】


【操力Lv2→3】


【構築Lv1】



《界命戦術》


『陥穽』



===========================

 



《クレクレ劇場。》



 …これは自暴自棄というやつか。もはや考えるより先。


 勝手に指が動いてしまう。

 突っ込んでいく。

 反射的な懇願。いわゆるクレクレ。

 死中に活を求めるという蛮行。

 心身丸ごと、後書きに乗せる。

 欲求に正直。のめり込む。


 そんな作者へ、ソラからはカウンター。


ソラ「少しは自重しろおぉおラあっ!!」


 作者、全身を投じたが空振りっ。

 そして被弾!


 ザ「感想…ぐは、」バッ!


 ド「ブクマっはべ…ッ!」ゴォッ!


 ゴ「評価ポイ…んなふッ!」リゅッ!


 ザガ「レビュ…ギャんッ」ンッ!


 しかも連続で食らった。


ソラ「お前だけだ…こんなのやってんのは…」


内蔵【──あ、あー…その…少し休め。ソラ】




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