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第11深 階層構築(※魔物付き)




 ソラが【構築】を意識した瞬間、


 それは起こった。



 ゴゴゴゴ…



 鼻先にあった壁が遠くへ。


「な、なんだ…っ!?」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 頭頂間近にあった壁が頭上高くへ。

 左右と背後の壁の圧迫も急に失せた。


「なんだ急に!…って、これ… 」



 ゴゴゴゴゴゴ…ゴゴンンン…ッッ。



 


 繊細な光を放つ深い蒼の石。それが波打つようにして増殖しては積み上がる。壁面はあれよあれよと拡大されていった。そうやって広くなった分、大量の空気が空間内に流れ込んでくる。その影響でソラの髪がブアと(さか)なびいた。


 身動き一つ出来ない…それほど狭かった空間がいきなり──いつの間にか、目の前には幻想的な雰囲気醸す大広間が展開されていた。


【ぃよしっ、構築されたな!俺の…記念すべき第1階層がっ!】


「うん。よくわかんねーが。なんつーか素直にスゲーな…コレは」


【ふ、そうだろう、そうだろう。】


 組み上げの妙。凹凸(おうとつ)により描かれるは幾何学模様。天井はドーム状で、そこも組み描かれた複雑な絵模様が浮かび上がっている。どうやらあの模様が光を放っているようだ。その光で照らされた床には天井にあるのと同じ形で紋様が浮かび上がって…ソラはこんなダンジョン壁を見た事がなかった。光の影響なのか室内の温度湿度が何気に心地よいのも、その感動に一役買っていたかもしれない。 


(…なんというか荘厳…って感じだな…)


 今は浮かれてしまい威厳なんて全く感じないこの『内蔵ダンジョン』なる者は…もしかしたら相当にランクの高いダンジョンだったのかもしれない。そう思わせるくらいには凄い造りだった。


《個体名ソラがダンジョン人間として初めて階層を構築しました。》


 冷静に告げる裏声アナウンスを他所にして、()()に先ず気付いたのは内蔵ダンジョンだった。


【…!?おい……ソラ!】

「 ん? 」


 色々と感動していたソラは気付くのに遅れる。広間の中央を見てみれば…何かがいた。


「あれは………ゴブリン?いや…」


 影が立体化したかのような。

 黒色のみの正体不明。

 見るからに無味無臭な見た目。 


「あの輪郭…下級ゴブリンか?」


【……?何なんだ?あの魔物…俺の制御下にないぞ…?】


「え?あれってお前の『眷族』的な魔物…じゃないのか?」


【いや『眷族』なんて『創造』も『合成』も『召喚』もした覚えはねえ。

 ねえけど…ここに在る以上はそのはず…なのになんでだ?なんで俺の制御を受け付けねぇっ!?】


 内蔵ダンジョンのこの動揺から察するに、どうやらこれは異常事態。


【つか制御不能って事は……まさか!…いきなりダンジョンボスを創造したってか!?1階層からいきなりボス部屋を構築しちまったのか!?】


「はあ?(…今なんつったコイツ?)ボス部屋……だと?」


 先述したがダンジョンボスとはどれも生み出したダンジョンですら制御不能とする強力な個体となる。わざわざ『ボス部屋』などという封印部屋が必要となるのはそのためだ。

 あのゴブリンらしき立体の影がこの空間の主である内蔵ダンジョンにも制御不能である以上、ボスである可能性は高く、そんな存在がいるこの1階層はボス部屋である可能性が高い。

 そう思えば内蔵ダンジョンがこうして困惑するのも無理からぬ話だった。そして最底辺弱者であったソラは勿論、ボス部屋なんて場所に辿り着けた事がない。狂戦士化して徘徊型となったダンジョンボスにいきなり殺される…という経験ならつい最近あったが(皮肉)。


【いやボスとは違うのか?……っていやいやいや、どっちにしろおかしいぞコレっ!どうなってんだ一体…っ?】


 そうこうとこちらが慌てふためいている間に、件の黒ゴブシルエットも気付いたようだ。



「ギ───ッ!」



 威嚇している。


【!──おいおいおいおいおい…まさか来るのかっ?……クソ!こうなったら……倒せ!ソラっ!どうやらアレは敵のようだっ!】


「…はぁ?いやいや…今の俺はレベルリセットされてるし隻腕だしでボスなんて代物とてもじゃないが───」


【何ゴチャゴチャ言ってるほら──


《第一の迷宮、『界層試練』攻略開始。》


 ───攻略だと?『界層試練』?何だそりゃあ!?ああもう!とにかく!来るぞっ!倒せソラ!ほらぁっ!】


「いやなんなんだこの急な展開──」


 何にせよあの影ゴブリンはこちらを完全に敵だと認識しているようだ。


「ゲッッキーーーーーイ!!」


 問答無用とかかってくる。しかしゴブリン特有の生臭さはない。ソラもこの、非現実な敵性存在の急接近に反応が遅れてしまう。


「ああもうくそっ!やるしかないかっ!」


 構築直後に突如の戦闘。

 意味不明な展開だ。 


 ソラは訳が分からないまま、腰から短剣を抜き放つのであった。


.

.

.

.

.

.

.


「なんか…随分あっけなかったな…」


 いきなり襲ってきた影ゴブリンはボスかもしれない…という触れ込みで意味深な見た目だったが結局、通常の下級ゴブリンと変わらぬ戦闘力だった。


 つまりは弱かった。

 なので難なく倒せたのだが…。


(体臭に…血の臭いもなし…触れてみれば体温もなし……こいつは……生き物だったのか…?)


 ここは内蔵ダンジョンの体内であると同時に自分の中である事も意味するがしかし、精神世界などではなく、紛れもないダンジョンであり、一つの『実在する世界』なのだと内蔵ダンジョンから聞いていたのだが。


(いまいちピンとこねーな…)


 まあ…何にせよ不思議な感覚である事には変わりない。だがソラがダンジョン人間としての自覚を持つのはまだまだ先となりそうだ。


《第一の迷宮、1階層を突破しました──量力と魂力の最大値がそれぞれ200上昇します──次の階層が構築可能です。構築しますか?》



========ステータス==========



 種族名 ダンジョン人間(界命体)

 個体名 ソラ / 内蔵ダンジョン

 界 位 1

 段 界 基礎段界


魂 力  328/528→728  

領 力  900/1500→1700


物理性能 306

力 D 守 ? 速 D 技 D


領力性能 351

力 H 守 B 速 G 技 E


《ダンジョンスキル》


【内蔵Lvー】


【吸収Lv8】


【依魂Lv1】


【操力Lv2】


【構築Lv1】



《界命戦術》


『陥穽』



===========================




「ふむ。こうやってダンジョンらしく階層と一緒に力を増やすのは…お前がさっき言ってた通り定石っぽいが…なあ内蔵ダンジョン。今の敵は何だったんだ?」


【…………。】


 内蔵ダンジョンは答えない。

 だがその沈黙でソラは察した。


「…そうか。…つまり次の階層でもまた敵に遭遇するかもしれない…そういう事なんだな。」


 伊達に永年、最底辺弱者をやってない。どんな状況でもそれなりの勘を働かさなくてはこの世界、力無い者は簡単に死ねる。


 ソラは内蔵ダンジョンとのここまでのやり取りで『今の戦闘はダンジョン的見地から見ても異常事態だったのだろう』と察した。


 つまり今の敵襲は内蔵ダンジョンの意図するところではなかったという事も。それを理解出来たはいいが…


「さて、このまま階層を構築していいものか…」


 界位を上げるために消費した領力は400。1階層の構築で消費した領力は100。残りの領力は500。

 次の構築も100の消費で済むなら領力の残量はまだ余裕がある。


 だが…階層を構築するとまた敵が襲って来るかもしれな…いや、襲って来るのだろう。しかも出どころ不明の敵が。

 今回は簡単に倒せる敵で良かったが、次もそうだとは限らない。ソラの懸念はもっともなものだった。


【いや、まだ分かってねえ事があまりに多い。それに強化も中途半端なままだ。ここで引き下がった所で前と変わらねえ。つまりは…行くしかねーだろ。次の階層に。】


 確かに。今の所、戦闘力が向上した実感は殆どない。それに…


「そうだな。ゆっくりできる時間ももう残されてない…」


 ソラの人生は昔からそうだった。



 ──突き進む──これしかない。 



 きっと、ずっと、これからも、これだけは変わらない。


(昨日のスプリガン…今日のオーガ…)


 ()()()()()()()は着実に進行している。だから。


「こうも差し迫ってる以上、すぐにでも『鬼城砦(オーガフォート)』を本格攻略しなきゃならなくなったし…だから」


 今回のダイブでそれなりの手応えを得られなければきっとこの先、詰んでしまう…それが目に見えているソラは決断するしかなかった。


「次の階層へ進む。【構築】だ」


 意識した途端、領力が消費されるのを感じた。地面に(あらわ)れるは魔法陣。


 これはダンジョンに付き物の『ゲート』と呼ばれるものだ。 

 ものによっては宙に浮かぶ黒い渦であったり地に生えた巨大結晶であったりとその形態は様々だが…これを踏む、またはくぐれば次のステージ(階層)に行ける。



 ソラはそのゲートを踏みしめた。



 次の階層では何が待ち受けるのか…それは分からない。それでも踏み出すその足に迷いはなかった。



 ──迷ってなどいられなかった。




《クレクレ劇場。》


 これはなろうに付き物の『ポイント』と呼ばれるものだ。 

 ものによっては『ブクマ』であったり『評価ポイント』であったりとその形態は二通りあり、下の広告のさらに下に☆とかあってこれをタップすれば作者は次のステージ(ランキング)に行ける。



 あなたはそのボタンを押してみ──え?ダメ?



 次のお話では何が待ち受けるのか…それは分からない。それでもタップするその指に迷いはなかった。



 ──押さずにはいられなかっ…──ってダメかー。



作者「あれー?」

ソラ「たはー、」

ラーム「…っもう!」

内蔵【…下手かよ作者!】

??「あと感想とかレビューとか勝手にランキングとかもくれたらトゥクンとくるみゃー。」

作者「む!また出たなクレクレの精めっ!………………ありがとうっ」



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