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「ソラこそどんな魔法を使いたいんだよ」
「俺?俺はそうだなー火魔法もいいけど水魔法もカッコイイ。風魔法や土魔法は見たことないけど聞いただけでもかっこいいし、聖魔法や闇魔法なんて名前からしてかっこいいし……」
「なんだよそれ。結局全部使いたいんじゃないか」
ブツブツと喋る俺にリャドが笑う。しょうがないじゃないか。生まれてからのずっと待ってたんだ。なんなら前世から魔法を使いたいと思ってたのがあり、現実になるんだ。夢を見て何が悪い。
ガサガサっ
草が揺れる音に身体を強ばらせる。いくら村の近くだとはいえ森の中だ。野犬が出る可能性もある。そうならないよう父さん達が討伐しているのだが万が一ということもある。
じっと草むらの方を見ていると1匹のウサギがでてきた。野犬ではないことに安堵し身体の力が抜ける
「あーウサギじゃんか。珍しい。こんな所でどうしたんだ」
リャドが現れたウサギの元に駆け寄ろうとする。
(本当に珍しいな。警戒心の強いウサギはあまり村の方に来ることはないはずだ。しかもこんな昼間に。何故ここにいるんだろうか。もしかして……)
「ッ……!!リャド行くな!!」
「え?」
俺の言葉と同時に草むらから勢いよく白い物体が現れ、ウサギを咥えた。体長は俺たちよりも少し大きいくらいだろう。大きな目にとがった牙。オオカミだ。
ウサギはこのオオカミから逃げるために村の方まで来ていたんだ。オオカミが咥えている力を強くするとウサギの首すじから血が流れ暴れていたウサギが動かなくなった。
「リャド!!離れるんだ!!リャド!!」
「か、体が動かない…」
突然現れたことによる驚きか、目の前にいるのがオオカミという恐怖なのかリャドは座ったまま動けなくなっていた。
(どうしよう。父さんたちを呼びに行きたいけどここを離れられない。どうしたらいいんだ)
オオカミは俺とリャドの方をじっとみている。このままでは2人とも間違いなく食べられるだろう。なんとしてもリャドだけでも助けなければ。
幸いにも俺の手足は動く。この場から離れてオオカミを惹きつけることが出来たらリャドは助かるはず。でもオオカミが俺に追いついたら?
「ひぃぃぃ!!」
オオカミがゆっくりとリャドの方にむかっている。あれこれと悩む時間はない。俺は地面に転がってた石を掴むとオオカミの方に投げる。オオカミに当たったが大した攻撃にはならない。けれどターゲットはリャドから俺に変わったようだ。
それを確認すると俺は森の方へと走っていく。オオカミもついてきている
「リャド!!父さん達を呼んでくれ。俺なら大丈夫だ。なるべく急いでくれよ!」
「ソラ!!」
後ろの方でリャドの声がする。大丈夫だ。俺ならやれる。父さん達が来るまで時間を稼げるはずだ。
四足歩行の動物に二足歩行の人間がどこまで通用するか分からないがやるだけだ。
「たしかこの先に父さん達が設置した罠があったはず」
以前父さんの仕事に興味を持った時に教えて貰ったことがある。その場所にさえ行ければ大丈夫だろう。