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転生先ではゆっくりと生きたい  作者: ひつじ
旅立ち
56/78

5


「あのさ、2人は本当に、ついてきてくれるの?嫌じゃない?」


聞く声が震えてしまう。この聞き方はずるいと思う。こんな風に聞かれたら嫌とは言えないよな。


「嫌じゃない。俺たちは本心からソラについていくことを決めたんだ」

「そうですよ。それに私はソラさんに助けられた命です。ソラさんが嫌だと言ってもついていきますよ」

「2人とも…」


2人の答えを聞くと安堵する。でも嘘だったら?実はついて行きたくないけどそれを言い出せないだけだったら?人の思ってることは分からないんだからもしかしたら…


「コラ。考えすぎだ」


ライドの腕が伸びてきてデコピンをされる。力が強いから地味に痛い。これ絶対に赤くなってるやつだ。


「お前はいつもうだうだ考えすぎなんだよ。俺たちの言葉くらい聞いたままに捉えておけよ。それに嫌なら嫌って言うさ」


口角を上げて笑うライド。ネルもライドの言葉に頷いている。

そうだな。信じよう。疑ってばかりじゃ一歩もすすめないしな。


「うん。ごめん。もう聞かない」

「そうだな。まぁとりあえず飯でも食って午後から頑張るか」

「おー」





そこからは怒涛の1週間だった。ライドとネルはキースさんによる勉強会、俺はカイトさんによる実技訓練を行った。


ライド曰くキースさんの知識量は半端ないとの事だ。「キースさんの頭の中には本がそのまま入ってんだよ」とのことだ。今度キースさんと魔物について話すのも楽しそうだ。

初日は元気だったライドも日に日に元気が失われていった。

ネルは覚えが早いようで勉強会は難なく終わったらしい。けれどキースさんの知識量には若干引いていた。


俺はひたすらカイトさんと手合わせだ。体術、剣術、魔法とそれぞれ行いダメだったところを都度教えてもらう感じだ。毎日午後の全ての時間を手合わせに当てていたけど、カイトさんの仕事は大丈夫なんだろうか。


手合わせ中、魔法に関しては風と土魔法も使うことにした。土魔法はバレてるんだし練習できる時にしておかないと。


でもそのかいあってか、最終日には利き手で剣を持って手合わせをしてくれるぐらいには成長したと思っている。


「皆さん1週間お疲れ様でした。課題も終わりましたし、これで正式にBランクの冒険者です」


キースさんから書き換えられた冒険者証を貰う。名前の横には【B】と書かれている。

これでようやくBランクの冒険者なんだ。良かった。手放しで喜びたかったが、手合わせで疲れすぎて身体が動かない。最終日ということでカイトさんがいつも以上に激しかったのだ。


「ありがとうございます」

「いえ。いつ旅立つ予定なんだい?」

「遅くても3日後までには旅立ちます」

「寂しくなるね」

「またこの街に来た時は受付お願いしますね」

「いつでも歓迎するよ」


キースさんとカイトさんに別れを告げてギルドから出る。今日も酒盛りするんだろうな。ライドとネルは先程からお酒や味の濃い食べ物ばかりを買っている。二日酔いにならなければいいけど。






sideキース


「さて、暇になったな」


ソラくん達を見送ったあと先程まで使っていた部屋に戻る。使う前より美しくってのが俺のモットーだったりする。


しかし先程の2人がきちんと掃除をしてくれていたのかゴミひとつ落ちていない状態だった。


「よぉ、お疲れ様キース」

「お疲れ様です。カイトさん」

「お前にそう呼ばれるとなんだか気持ち悪いな」

「はぁ。分かりましたよ()()()()


ソラ君の試験を担当し、1週間手合わせをしていた男はこの街のギルド長だ。1年という異例の速さで昇級試験を受けるソラ君達が気になり、職権乱用し試験に割り込んできたのだ。


初めはソラ君も筆記試験の予定だったのだが、この男の「コイツ面白いから実技試験ね。俺が相手するから」と直前で変更したのだ。ほんと上司じゃなかったら殴っていたところだ。


「その見た目もどうにかしたらどうなんですか」

「あ、忘れてた」


ギルド長が“解除”と唱えるとライオンだった見た目が変わっていく。人間のような見た目になっているが、身体のあちこちに鱗が生えている。

「俺の事知ってたらと思って久々に変身してみたけど、案外バレないもんだな」

「そもそもソラ君達はギルド長の顔すら知らなかったと思いますけどね」

「えっ、ひどい」


人間のように見えるが、目の前にいる男は最強種族といわれているドラゴンだ。本名はカイル=ザード。なぜドラゴン族がギルド長をしているのかは知らない。本人曰く「楽しそうだから」だそうだ。彼がドラゴン族だということは一部の職員しか知らない。


「やっぱりギルドで働いてて楽しいのはソラみたいな原石を見つけた時なんだよな。あれはすごいもんもってるから磨けばもっと光るぞ」

「そうですか」

「まぁ俺としては輝くのを忘れた元原石に、もう一度輝いて欲しいと思ってるんだけどな」

「はいはい。そうですか」


ギルド長は俺の方を見ているが目を合わせないよう書類を整理する。今はギルド長の部屋で書類整理中心だ。この1週間ギルド長がまともに仕事をしていなかったせいで書類が溜まっているのだ。


「お前はもう戻らないのか」

「その予定はないですよ。目だってこのままでしょうから」

「目が治ればいいんだな?ならお前はいつか戻るよ」

「はい?」


それだけいうとギルド長はたくさんの書類を残したまま部屋を出ていった。今日締切の書類もあるというのに。


「まったく…いつか戻る、か……」


そんな夢をみるのはとうの昔にやめた。今の生活も充実している。このままでもいいんだ。

でもとりあえずはあのギルド長(バカ)を連れてこないと。


俺は大きなため息をつき部屋から出ていった。




閲覧ありがとうございます。

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